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明けましておめでとうございました

2012.02/13 *Mon*
何今更ですが。

年賀絵の方はいつもお世話になっております、ENo.1351 サクラ・エゾヤマさんにお願いしました。
本当にありがとうございます。
mixiのマイミクさん宛の年賀状も、こちらの仕様でお出ししました。
好評でよかったです。

こちらがフルサイズ。

雪うさぎと深雪

雪うさぎも深雪もかわいく描いていただいて、ほっこりします。
ありがたや。

マフラーはENo.601 魔術商会のナナさんからXmasのプレゼントで頂いたものです。

アイコンもかわいらしかったです。
ありがとうございました。
| 深雪 |

セツカさんの中の人のお誕生日記念。

2012.02/11 *Sat*
 節分の日がENo.1352 レイヤ・センドウさんの中の人のお誕生日でしたので、記念にSS書いてみました。
 お誕生日おめでとうございます!
 
 裏表12日目日記のセツカさん視点バージョンです。
 公開していい許可を頂きましたので、お披露目させていただきますね。
 挿絵はパーティメンバーのENo.1351 サクラ・エゾヤマさんに、こっそりお願いしていました。
 
 お願いしてから、2時間ぐらいで挿絵をいただいて鼻水でた。
 



 それではどうぞ、おたのしみ下さい。
| ノウァ |

表裏日記12日目

2012.02/11 *Sat*
 とある魔女の記憶。

 ―それは、果たされなかった約束。
 
 日本という世界から来た、赤髪の青年セツカ。
 鏡の世界から呼び出された、オリフィのただの分身でしかない私に何故か優しくしてれる変な奴。
 お調子者な部分はあるけど、頼れるトコロもあって、色々あって少しは打ち解けた気がする冬のある日。

 お菓子作りの試食会という事で、私はオリフィの付き添いで、バレットさんやヒスカのいるテントにやってきた。
 テントにいたエキュパーシュさんやヒスカ達と一緒に、焚火を囲いながらオリフィの作ったプリンをみんなで食べる事になった。
 アランさんやバレットさんは、打ち合わせがあるそうで丁度出掛けていたらしく、ユキネさんは少し前に眠ってしまったそうでテントからは出てこなかった。
 私とオリフィがプリンを配っている間に、蓮さんがみんなに紅茶の準備をしてくれて、その手際の良さに感心してしまった。
 オリフィが、エクやヒスカの傍で楽しそうに世間話をしているので、輪に入っても良かったのだが、セツカの隣が空いていたので気付かれないように横に座って、どんな反応をするのか窺ってみる。
 素知らぬふりで隣でプリンを食べていると、ようやくセツカが私に気づいて嬉しそうに笑った。

「……何。人の食べてる処、ジロジロ見ないでくれる?恥ずかしいんだけど。」
「いや、フィーってもっと上品に食べるんだと思ってたから、意外でさ。凄く美味しそうに食べてて、
庶民的だなって。」

食べるところを見られると照れるんだけど。

 セツカの様子を気にし過ぎて、食べるのが疎かになったなどとは言えない。死んでも言えない。

「見られていると思ってなかったから、油断しただけよ。庶民的で結構。初めて作った割にはよく出来てるんじゃないかしら。私の腕にはまだまだ敵わないけど。」

 そう言って、残りのプリンだけ上品に食べ終えた私は、空の容器を足元に置くと、口元を何事もなかったようにハンカチで拭った。

「あのさ、フィーの手作りのお菓子を食った事がないから、なんとも言えないんだけど。」

 セツカに指摘されて気づいた事だが、確かにこちらの世界に来て、私は誰かにお菓子を作った記憶がない。
 ついでに言うと、勝手にお菓子作りが上手だと思っているだけで、実際には下手くそな可能性すらあり得る。
 何故なら、鏡の世界に居た時の記憶はとても曖昧で、私の本体であるオリフィの記憶とすら合っていなかった。
 不完全な術式お陰で、こうしてオリフィと異なる自我を持つことができるのが不幸なのか、幸福なのか今でも解からない。

「あら、そうだったかしら?それなら……確かお菓子をプレゼントする日が近かったわね。その時に、セツカが絶賛するようなお菓子を作れば良いのでしょう?」
「え、本当に?フィーが作ってくれるものだったら、なんだって嬉しいよ。ありがとう、楽しみにしてる。」
 
 セツカに楽しみにされてしまったので、今更やっぱり自信がないからやめますと言えなくなった。
 今日から帰ってお菓子作りの特訓をしようと、心の中で私は誓った。

「えこ贔屓なしで、オリフィの作ったお菓子より美味しいって言わせたいだけよ……楽しみにしてもらうのは、悪くはないわ。期待して、待ってて。」
 
 
 でも、その日は結局やって来なかった。
 私は果たせなかった約束を果たす為に、ノウァに交渉を持ちかける事にした。

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 とある悪魔の日常。


「……という事で、セツカにチョコを渡したいから、一日身体を貸して欲しいんだけど?」

「はぁ?どうして私が、あなたの為に身体貸さなきゃいけないのよ。しかも何よ、一日って。チョコ渡すなら直ぐ済むじゃない。」

 フィーとの交信は声に出さずとも頭の中でイメージするだけで、いつでも会話をすることができる。
 但し、会話している間に気が逸れるため、他の人との会話や作業をしている時には思わぬミスを招く事になる。
 私は就寝前にミーティングと言う形でフィーと会話をすることにしていた。

 協力はするとは確かに言ったが、身体を貸すなんてフィーに言った覚えはない。

「それは……買ったものや、誰かが作ったものじゃなくて、私が作らなければ意味がないの。セツカにそう約束したから。」

「馬鹿馬鹿しい。たかだかチョコ一個で何ムキになってるの。どうせセツカさんだって、忘れてるわよ。あ、痛っ。」

 セルフォリーフ側で寝ている私に、深雪が寝ぼけて蹴りを入れてきた。
 仕方なく、意識をセルフォリーフの私に集中させる。
 私は、FPを抱えたままの深雪を押し退けた後、布団をかけ直して真っ直ぐ寝せた。
 歯ぎしりの癖はなんとか治らないものだろうかと、ギリギリと歯の軋む音を立てて眠る深雪を見て不安に思った。
 深雪が起きてこない事を確認した私は、意識の方をアンジニティの私に戻す。

「いいじゃない。どうせノウァは暇なんでしょ。お菓子配る相手も居ないんだから、ケチケチしないでよ。」

「―よし、分かったわ。今からセツカさんのペンダント壊しに行ってくる。」

「あ、ちょっと!?ごめん、流石に言い過ぎたわ!?海より深く反省するから、考えなおして!?」

 布団から半身起こした私に、慌ててフィーが宥めにかかる。

「恋する乙女は不可解すぎて、解せないわ。世界が違うだけで、こうも変われるものなのね。」

「……セツカが信じてくれるか分からないけど、自分の今の状態やノウァの事も説明してみるわ。それなら、悪い条件ではないでしょう?」 

「そう?それでも私に、あまりメリットがないわね。もう少し条件を付けましょうか。アレの中に入って戦闘手伝って。」

 私はちょっと離れた水槽で、目を開けたまま寝ている魚人を指さした。

「え、ちょ……やだ。」

「ちょっと、拒否権発動してる場合じゃないでしょ、あんた。どうせ新しい身体を見つけたとしても、馴染ませるのに感覚の訓練が要るでしょう。予め準備しておいたほうが、都合がいいの。どうせ、こっちの世界で何していてもセツカさんには見えないんだし、いいじゃない。」

「……そんな姿をセツカに見られたら、本気で成仏したくなるわ。」

「ふっ、フィーの覚悟なんて、その程度の事なのね。体面ばかりに気にしてるぐらいなら、そのままペンダントの中に一生引き篭もってるといいわ。」
「……分かった、条件を飲むわ。でも、新しいペットが手に入ったら、少しはマシな方に乗り換えていいかしら。流石にあの中にずっと居るのは心が折れるわ。」
 
「それは運次第だけど、構わないわよ。それじゃ、契約成立ね。期限は一日だけ。セルフリーフの私の意識を落としておくから、自由に使っていいわ。その代わり、時間になったら起きるから、やるべき事は時間内にやっておく事。」

「了解したわ。ありがとう、ノウァ。これで……セツカとの約束をひとつ果たすことができる。」

「……そういう感情は、私にはあまり『美味しくない』のよね。共感したくないから、もう寝るわ。おやすみなさい。」

 フィーにそう言うと、私は意識を深い底へと沈めて眠りについた。



| 深雪 |

裏日記11日目

2012.02/11 *Sat*
 偽葉の戦いの後。

 偽島が沈み流れ着いた海岸で、暫くバカンスを過ごしたテーセウス夫妻と共に私は住処である白きの庭へと戻り、比較的平穏な日常を過ごしていた。
 従者としての仕事は、双子の悪魔のドルチェ様とアマービレ様の遊び相手や、屋敷の掃除や食事の用意などで、それらの仕事は強制的なものではなかった。
 屋敷での時間を持て余さないよう、自主的に私が行なっていた仕事であり、趣味に使うことのできる時間は幾らでもテーセウスさんが与えてくれた。
 屋敷に置いてあるピアノを調律していただいてからは、一人で弾き語りをするのが私の楽しみの一つになり、観客が居なくとも心が満たされる至福の時間となった。

 いつもの様に演奏を終えて鍵盤蓋をそっと閉じると、部屋の隅から控えめな拍手の音が聞こえてきた。
ドルチェ様やアマービレ様にしては、上品な反応だと思い拍手の主へと視線を向けると、左右に異なる眼の色をもつ藍髪のオリフィエルが、微笑を浮かべながら部屋の隅の方にちょこんと立っていた。
 ニフルハイム家の正装である魔女服を、アストゥリアス家に嫁いだ後で着ている必要はないのだが、白の魔女服はオリフィのお気に入りのようで、普段着として探索が終わってからも身につけている。

「あ、すみません。通りかかったら、素敵な演奏と歌声が聞こえてきたもので……お邪魔でしたか?」

 私の返事が無いので気分を損ねたと思ったのか、オリフィは慌てて拍手をやめて、軽く頭を下げた。

「いえ、今演奏を終えた所です。お気になさらず。お褒めいただき、ありがとうございます。」

 私はピアノの椅子から立ち上がると、オリフィに深くお辞儀を返した。
 オリフィは私の反応に表情を明るくすると、トコトコと傍まで駆け寄ってきた。

「あ、同じお屋敷にいるのに、ちゃんとお礼を言ってなかったですよね。偽葉の時はありがとうございました。ノウァさんが居なかったら、一人では危なかったと思います。」
「テーセウスさんの奥様をお守りするのは、従者として当然の使命です。褒めていただくのは光栄ですが、あまり気になさらないで下さい。」

 微笑みを浮かべて言葉を返すと、オリフィは思いつめた表情で私の方をじっと見詰め始めた。

「オリフィ様……どうかいたしましたか?」
「あ、はい。ノウァさんが、私の親しい友人に面影が似ているもので……あの、宜しければ、隠れてる目の方を見せていただいても良いですか?」

 オリフィが言う親しい友人とは生前の私、フィーの事を指しているのだろう。
 意識してフィーやオリフィとは異なる髪型にセットをしていたのだが、流石にそれだけではオリフィに勘繰られても仕方が無い。
 寧ろ、今まで気が付かなかったのか、それとも思っていても私に言えなかったのか興味深くはある。

「……はい、どうぞ。」

 前髪を掻き上げると、覗き込むようにオリフィは私の方へ顔を近づけた。

「……やっぱり、フィーな訳ないよね。」

 オリフィが聞こえないぐらいに小さく呟いた声を、聞き漏らさないように耳を澄ます。
 私の眼の色が両方同じなことを確かめると、オリフィは少しだけ寂しい表情をして俯いたが、直ぐに向き直って笑顔を浮かべた。

「あ、ごめんなさい。さっきもお話ししたと思いますが、私の親しい友人……フィーにノウァさんがとても良く似ていたので。いくら似ていても、フィー本人な訳は無いですよね。私ったら、やだ、もぅ。」

 大体予想が合ってる訳だが、勝手に自分で答えから遠ざかってくれるオリフィの性格には感謝したい気持ちになった。
 仮に私がフィーだったと気づいたら、オリフィはどんな反応をするのだろうか。
 少しだけカマをかけてみたくなった私は、少し踏み込んだ質問をしてみることにした。

「オリフィ様。フィーさんというお名前の方と、何かあったのでしょうか?なんだか、執拗に気になさっているようですので。」

「あ、え……はい。ノウァさんは、こちらに来てから間も無いですけど、テスから聞いてご存知かも知れませんね。私はフィーと争うことになってしまって、彼女を傷つけてしまいました。その事で、彼女とお話がしたくて。」

「いえ、テーセウスさんからは何も伺っておりません……傷つけたとは?フィーさんに、怪我をさせてしまったのなら、直接謝りに行かれては良いのでは?」

 オリフィは、一瞬肩を震わせると、とても辛そうな表情で私から目を逸した。

「……フィーは死にました。私の所為で。」
「そうですか。オリフィ様は、私がフィーさんの生まれ変わりだと思っていらっしゃるのでしょうか?」
「あ、いえ……はい。テスがノウァさんを連れてきた時にもしかしたら、って思っていました。それでも、私に教えてくれない事は何か理由があるのかなって。」

 テーセウスさんには聞けない事を、直接私に聞きに来る事のほうが度胸がいるのはないのだろうかと、ふと思った。

「なるほど。仮に私がフィーの生まれ変わりだったとして、オリフィ様は何を私にお話する心算だったのですか?」

「えっ、それは……あの時の事を、もう一度話し合いたくて。」

 小犬のように怯えた目で、私を見るオリフィに罪悪感が芽生えつつも、オリフィの本心を確かめるために質問を続けた。

「……オリフィ様は、自分のした事をフィーさんに謝りたいと思っておられるのでしょうか?」

「えっ……あ、その……。」

 言葉を探すのに動揺するオリフィに、胸がときめいた気がしたが、冷静を装って私は淡々と言葉を綴った。

「仮にフィーさんに謝ることができたとして、オリフィ様がその方にしてしまった事は赦して貰えるような事なのですか?」
「……いいえ。」
「……質問を変えてみましょうか。仮に私がフィーさんの生まれ変わりだとして、オリフィ様の事を「赦す」と言えば、オリフィ様の気が済むのでしょうか?」

 オリフィは、目を潤ませながらも俯くのを我慢すると、きつく口を結んだまま私の方を見詰め返した。

「あ、いえ……ごめんなさい。私は自分の意思でフィーを殺めました。それは、誰が赦してくれても、赦されることではありません。この罪は一生背負って生きていきます。」

「……私がオリフィ様を赦すと言うだけで、オリフィ様の心が晴れるのでしたら何時でも仰って下さい。お力添えは致しますので。」

 頭を撫でるのは馴れ馴れしいので、オリフィの肩を少しだけさすって笑顔を作ってみせた。
 フィー……オリフィエル・ニフルハイムの死は避けることの出来なかった結末。
 彼女はオリフィエルの死を認識して、悪魔との契約によって齎される不幸から逃れなければならない。
 それが、私が新たな名前をテーセウスさんから頂いた意味。
 同時に、フィーであった過去と決別するためにも必要な儀式。
 オリフィエル・ニフルハイムの死をなかった事にしてはいけないのだ。

「はい、お気遣いありがとうございます……ノウァさんは優しいですね。私、ノウァさんとは良いお友達になれる気がします。」

 微笑みながらオリフィが返した言葉に、私と彼女はもう二度と昔のように心を通わす事ができないと悟り、少しだけ寂しくなった。
| ノウァ |

表日記11日目

2012.02/11 *Sat*
「もう、ノウァはどっかいけよー!朝からうぜー!」
「そんなに私が嫌なら、元の世界に帰ればいいじゃない。手段は私が用意してあげるから、帰るタイミングは自分で決めなさい。」
「んじゃ、今帰る。」
「決断、早っ!?」

 口喧嘩の発端はとても些細なことで、深雪が朝食の半熟卵を縫いぐるみのFPの上に落とした事だった。
 食べる時ぐらいはFPを手放しなさいと深雪を叱ると、深雪が「そんな事言ってフォルテを取る気だからヤダ。」と言ってきた。
 私は、FPがぞんざいに扱われてることが我慢出来ないだけだと言うと、深雪はフォルテを大事にしてるもんと言いはるので、してねーだろと今までの深雪のFPに対する杜撰な管理を次々と指摘した。
 
 結果このザマである。

「い、いいわ。そんなに早く帰りたいなら今直ぐ準備してあげる。さっさと支度を整えて外に出なさい!」
 
 黙々と朝食を食べるニールをすり抜けて、私は自分の部屋へと向かった。
 部屋にある薔薇の刻印のついた姿見に被せた布を取り、鏡面を柔らかい布で磨く。
 異送鏡と呼ばれるこの鏡は、鏡に飛び込んだ者を望む世界に連れてゆくことができる。
 鏡の力を発揮するには大量のマナが必要とされるのだが、偽島で起こった偽葉戦の影響で数回分の転送を可能な魔力が異送鏡に蓄積されている。
 マナを惜しんでもいられないので、最終手段としては異送鏡を使って深雪を元の世界に帰そうとは思っていたが、こんな形で使うとは思ってもみなかった。

 私は鏡を静かに抱え込むと、宿の外に出て深雪を待った。
 FPを抱えたまま深雪が宿を出てくるのを確認すると、私は深雪を手招きして鏡を指さした。

「いい、深雪。よく聞いて。この鏡は異送鏡と言って、鏡の前で行きたい場所を念じて飛び込めば、その世界に行くことができる鏡なの。深雪は元きた世界の一番詳しい場所を思い出しなさい。そうして……」
「んじゃね、ばいばい。」
 
 私が言い終わらないうちに、深雪は鏡に向かって走り始めた。

「って、ちょっと待って!FPは置いていきなさいよ!?あげるなんて言ってないでしょ!ちょっと待てって!止まって!?深雪ーっ!?」

 私が深雪を引きとめようとする手をすり抜けて、深雪は鏡の中に飛び込んでゆく。
 深雪が鏡の中に溶け込んだかと思うと、次の瞬間。
 鏡を突き抜けて、深雪が駆け抜けた勢いのまま出てきた。

 ポカーンとした表情でFPを抱えながら私も見る深雪。

「何、ノウァ涙目になってんの?元の世界に帰れねーじゃん。嘘つき。」
「な、泣いてなんかないわよ!?そっれ、深雪が何も考えないで飛び込むからでしょ!もう一度、ちゃんと行き先を念じて飛び込みなさい。あとFP返せ。」
「やだ。」

 深雪は即答して、もう一度鏡に飛び込んだが、やはり結果は同じで鏡の向こうにすり抜けるだけだった。

「ちょっと、FPをそこに置いて入ってみなさい。FPの雑念が邪魔してるかも知れないから。」
「酷い言われようである。」

 深雪に抱えられたFPはボソリと呟いた。

「もういい、寒いから戻るー。なんだよー、ノウァのアホ。」
「おかしいわね。飛べないのはまだしも、鏡をすり抜けるなんて。」

 鏡に異常が生じたのか触れてはみるが、これといって傷がついた様子もなく、偽物にすり替った訳でもなさそうだった。
 試しにいつもの様に鏡の中に入ると、自分用の部屋が何も変わらない状態で用意されていた。

「……解せないわ。」

 もしかして、深雪は何者でもない特別な存在ではないかと考えたが、脳内にはお爺ちゃんが孫に飴をあげてるビジョンが浮かんだので、私はそれを振り払った。
 深雪が宿に戻った後も、私は鏡をじっと眺めながら首を傾げるしかなかった。
| 深雪 |

Copyright © みぶろ。 All Rights Reserved.
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