2017-05

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日記78日目

 燦々と輝く太陽、透き通るような青い海。
 爽やかな潮風が吹き抜ける白い浜辺。
 カタストロフを思わせる津波に流されて、私達はエルタの大陸のどこかに辿り着いた。
 奇しくも去年の夏と同じように、潮に流されて逸れないようにテーセウスと手を繋いで泳いだ時は、運命のような確かな偶然に心がときめいてしまった。
 テーセウスに泳ぎを教わっていなかったら、浮き輪があったとはいえパニックになっていただろう。
 泳げるようになっていて良かったと、安堵の胸をなで下ろす。
 
 突如偽島の探索が終ってしまったので、思いがけず私達は海でバカンスを楽しむ事となった。
 世界を体現するとされる伝説の樹、イグドラシルの崩壊と偽島の沈没。
 つい先日まで偽葉達と死闘を繰り広げた日々が、まるで幻のようにさえ思えてくる。
 落ち着いたところで改めて気づいた事だが、そういえばオリフお姉様の姿が見当たらなかった。
 陸が見えた頃までは一緒だったのだが、潮に流されて逸れてしまったのかもしれない。
 一抹の不安は過るが、運動神経の良いオリフお姉様ならきっと無事だろうと心に言い聞かせることにした。
 キルノさんも行方不明だが、死神だから死んだりはしないだろう。塩で溶けない限り。
 意外だったのはノウァさんが、実は泳げないことだった。

「……浮き輪がなければ危なかったわ。」

 浜辺に着いた時、慄然としながら呟いたノウァさんの言葉を聞き違いかと疑ったほどだ。

「オリフィエルも初めは泳げませんでしたが、すぐに泳げるようになりました。ノウァもコツさえ摘めばすぐに泳げるようになりますよ。」
 
 それでは私ができることは、ノウァさんにもできると言っているようで少し不満だったが、部下思いのテーセウスの励まし方なのだろうと納得することにした。
 
 私は去年の失敗を糧に、潮の流れと足元に気をつけながら初泳ぎを楽しんだ。
 テーセウスは人前で肌を晒すのは好きではないようで、ビーチパラソル木陰でビーチチェアーに腰掛けながら何か作業をしていたり、私にレンズの付いた機械を向けたりしてニコニコしていた。
 初泳ぎを十分に楽しんだ私は、体力を残しておくために早めに陸へ上がることにした。
 一人で泳ぐのもそれなりには楽しかったが、やっぱりテーセウスと一緒に泳ぎたい。
 去年の夏のように、人気の少ない夜に海へ行こうと誘えば付き合ってくれるだろう。
 
 濡れた身体が心地良い潮風に吹かれて乾いていくのを待っていると、レンズの付いた機械を向けながらテーセウスが私に呼びかけた。
 
「オリフィエル、此方を向いて下さい。」

「何をされているんですか?」

 レーレさんが同じような機械を私に向けてニヨニヨしていたことを思い出しながら、私はテーセウスの所へと歩み寄った。
 
「実は、偽島の経過報告を兼ねてカボたん様にメールを送ろうかと思いまして。」

「メール……!」
 
 思わず私は目を輝かせて、テーセウスが私に向けているレンズの方を覗き込んだ。
 メールとは確か「けいたい」や「ぱそこん」というもので送る手紙のことを指す言葉だ。
 私も彼とお別れした時に言いそびれたお話があったので、こちらの経過を伝えたくて居ても立ってもいられなくなった。
 
「テス。差し支えなければ、私もお手紙を出しても良いですか?」

 テーセウスはレンズの付いた機械をしまうと「ぱそこん」を開いて、ボタンのようなものを、カタカタと指で素早く押していった。

「はい、喜んで。オリフィエルの言葉をメールに打ち込みますので、オリフィは伝えたい事をわたくしに話してください。」

 私は大きく深呼吸をしてはやる心を落ち着けると、一字一句を疎かにしないように伝えたい事を頭の中で纏めてから、ゆっくりとテーセウスに話しかけた。 


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 こんにちは、お久しぶりです。カボタンさん。
 私は今、テーセウスと一緒に海に来ています。
 カボたんさんは、お変わりなくお過ごしでいらっしゃいますか?
 カボたんさんと一緒に向日葵畑やネモフィラの丘をお散歩した楽しい思い出は、今でも私の宝物です。
 あれからもう、1年も経つのですね。
 毎日を全力で駆け抜けてきた筈なのに、振り返ってみるとあっという間に感じてしまいます。

 私はつい先日までテーセウスと共に、島の制御装置であるイグドラシルの樹から現れた偽葉と呼ばれる敵と戦っていました。
 偽島の正体は、財宝を目的に訪れた探索者達を島に閉じ込める永劫回帰の舞台装置でした。
 偽葉というのは、島に閉じ込められた人達の記憶の残滓を具現化したものです。
 偽葉に挑むための支援として、榊さんという人から大量のマナを浴びて飛躍的に身体能力が上がったりしましたが、今は元通りです。身体の方にも異常はありません。
 偽葉を散らしてイグドラシルを切り倒した後、偽島は海に沈んでしまいましたが、カボたんさんとお別れする時には探索の目的を果たしていたので、私には未練はありません。
 島の財宝を目指して探索していた人達には、気の毒な話だと思いますが。
 私とテーセウスは、海でバカンスをもう少し楽しんだ後、偽島でお世話になった人達に挨拶をしてから屋敷に帰る予定です。

 レレさんはお元気ですか?元気じゃないレレさんなんて想像できませんが、離れてしまうと余計な心配もしていまいます。
 美味しい料理と菓子を用意してお待ちしていますので、いつでも屋敷にいらっしゃってください。とレレさんにお会いしたらお伝え下さい。
 あ、寛大さんとは連絡がとれますでしょうか?
ご用事の方が忙しかったようで、島を離れる時にご挨拶もできなかった事が心残りです。
 もし、ご連絡がとれましたら、お話できて楽しかったです。ご用事の方が、一段落つきましたらお手紙下さい。必ずお返事しますとお伝え下さい。
 カボタンさんにお願いばかりしてすみません。
 テーセウスに「けいたい」や「めーる」の使い方を教わって、早く自分で連絡がとれるように頑張ります。

追伸。
 
 フィーの事について、カボたんさんとお話が途中になってしまっていましたね。
 あれから私なりに考えを纏めたことを、お話ししたいと思います。
 あの日の出来事を悔いて、もう一度やり直したいと願う事は、今いる私とそれ支えてくれる人たちの想いを蔑ろにしてしまう逃げでしかありません。
 自分の愚かな選択から目を逸らすことなく真摯に受け止め、私の一生をかけても彼女への償いを続けるつもりです。
 フィーは閉ざされた世界で育ち、幼少の頃から両親から疎まれている事を薄々感じ取っていました。
 何処へも逃れることができないフィーは、夢の中での私との語らいを唯一の生き甲斐に、誰かに愛されたいというささやかな願いをうちに秘めたまま逝きました。
 フィーの亡き今、彼女に直接償うことは叶いませんが、彼女が望んでいた幸せな家庭を私が実現しようと思います。
 私とフィーが選ぶことができなかった選択を、未来の子供たちに託すことが私の償いに対する答です。
 とは言っても、一人では実現することはできませんので、テーセウスに協力を仰ぎますね。
 フィーのように一人っ子だと寂しい思いをしてしまうので、子供は最低でも二人は欲しいです。
 あ、フィーと私が一緒に過ごした夢の世界を実現するなら、双子の女の子が嬉しいですね。
 何の確信もありませんが、双子の娘を愛でるテーセウスと私の幸福な未来を実現できそうな予感がします。
 
 あ、すみません。いつの間にか惚気話になってしまいましたね……やだ、もぅ。
 カボたんさんの近況もぜひ聞かせてくださいね。お手紙待ってます。
 
 それでは、お元気で。
 またお逢いできる日を楽しみにしていますね。

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 私の言葉を打ち終えたテーセウスは「ぱそこん」を閉じると、私の方を見上げて僅かに口元を緩めた。
 
「あはー、カボたんさんと先に約束しまってごめんなさい。テス……私の夢のために協力お願いしますね。」

 
 私は悪戯っ子のように肩を竦めて、はにかむように微笑んだ。
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日記77日目

「……さて、答え合わせをしましょうか」

 ニフルハイムの屋敷にあるアルフラウの書斎。薄暗い部屋の壁には二人の影が、ランタンの灯りに照らされてゆらゆらと揺れていた。
 影の主の一人はアルフラウ女伯爵。
 白子の肌に宝石のような目を持つ少女は、テーブルに置かれた紅茶を一口すすると、もうひとつの影の主の方を見つめた。
 
「答え合わせ……ですか?私がアルフラウ様に謎かけをした記憶はないのですが。」

 もう一つの影の主、青髪で青目の女性はヲルン・シフェル。
 オリフィエルの壊れかけていた心を治した「白羽根」と呼ばれる治癒師。
 ヲルンは目の前にある紅茶に手をつけた後、アルフラウの方に首をかしげながら微笑んだ。 

「そうね。たしかに謎かけをされた覚えはないわ。わたくしの記憶は一日しか持たなかったもの。でも、今はあなたに質問する事ができるのよ。」

 アルフラウの言葉を肯定するように、静かにヲルンは頷いた。

「オリフィエルさんが呪いを解かれたと聞いております。アルフラウ様の記憶が正常に戻られたことは喜ばしいですが、お身体の方をこれからは心配しなくてはなりませんね。」

「ありがとう。でも、私の身体の事はひとまず置いておきましょう。私が尋ねたいのは自分の身体の事ではなく、オリフィについての事よ。」

 アルフラウは椅子に身体を預けるような姿勢になると、付箋のたくさん挟まれた日記を手にとってページをめくり始めた。

「鏡に囚えられてしまったオリフィの精神を救うために、あなたは身体に残った心の欠片を使ったのね。」

 アルフラウの問いにヲルンは小さく頷いた。

「はい。そうしなければ彼女の身体は命の危機がありましたし、心の欠片となった記憶も、鏡に囚われた彼女の精神が解放されれば一つになる筈でした。」

「……鏡に囚われた精神を解放するために、オリフィの心の欠片が鏡の悪魔に接触することは予測できていたのかしら?」

「それは、はいであり、いいえですね。オリフィエルさんの心の欠片……オリフィアさん(偽)と仮に名付けますね。彼女は確証はないにせよ、移送鏡からオリフィエルさんの精神を解放する方法を知っていたように思えます。ただ……」

 ヲルンは考えこむように額に手を当てて目を瞑ると、一つため息をついた。

「鏡の世界を操る力を悪魔に求めるなんて、思ってもみませんでした。」

「ふふ、ニフルハイム家が代々悪魔と関わりを持っているなんて、あなたは知らなかった事ですものね。オリフィの行動は、私にとってはそれほど不思議なことではなかったわ。」

 アルフラウは日記に何かを書き加えた後、別の付箋のページを開いてヲルンに言った。

「もう一つ質問しましょう。あなたがオリフィア(偽)と名付けたオリフィは、鏡に囚われた精神を開放したのに融合しなかった。これは予測できた事なのかしら?」

「いいえ。」

 ヲルンは項垂れて首を横に振った。

「オリフィア(偽)さんは、確かにオリフィエルさんの身体に繋がりを持つために記憶を閉じ込めてオリフィエルさんになりましたが、それは鏡の中の精神が解放された時に融合して記憶が繋がるので問題はなかったはずです。」

「でも、実際はフィーとオリフィという別々の自我が生まれてしまった。これも予測できなかった事なのね。」

「はい、すみません……ちょっと、そこで吊ってきます。」

 ヨロヨロと立ち上がりどこかへ行こうとするヲルンの袖を掴んで、アルフラウは微笑んだ。

「わたくしはあなたに責任を問うつもりで質問しているわけではないわ。フィーとオリフィがどうして別々になってしまったのか、原因を一緒に考えたいだけなの。」

 アルフラウにヲルンは力なく微笑み返すと、静かに元の席に戻った。

「私は……偽島という場所に行ったことはないのですが、あの島は淀んだマナが満ちていると聞いています。オリフィエルさんの精神を解放するまでの間、島に滞在していたオリフィア(偽)さんはその淀んだマナの影響で心の欠片から違うものに変化したと考えられます。」

「エキュオスのようにマナの影響で一つの自我を持った。という事かしら?」

「はい。オリフィア(偽)さんが自分の記憶を封印したことで、身体と心の繋がりが強くなって、鏡の世界に囚われた心を開放しなくてもオリフィエルさんとして生きて行けるようになってしまった。」

「つまり、偽島という特殊な環境が、オリフィの妄想すら飲み込んですべて在ることにしてしまった。」

 アルフラウの言葉にヲルンは静かに頷いた。

「私の尽くした手が、結果的にフィーさん……オリフィエルさんの命を奪うことになってしまって、申し訳ありません。」

 深く頭を下げるヲルンに、アルフラウは席を立ってそばに寄ると、静かに肩に手を置いた。

「あなたの責任が全ての原因ではないわ。これは、ニフルハイム家が背負ってきた私も抗うことのできなかった呪いなの……あの子は命を犠牲にして呪いを断ち切った。」

「あの子の分まで、私達が幸せになるわ。ヲルン、あなたは為すべき事を果たしただけ……とても感謝しているわ、ありがとう。」

 言霊師と呼ばれる術士は、言霊を操るため嘘を付くことができない。
 アルフラウの言葉は偽りのないものであったが、その言葉にこめられた彼女想いにヲルンは頭を上げることができなかった。 

日記73日目

キルノ「……悪魔いのと魔女いのが居ないんだが。」

ノワ「テーセウスさんとオリフィエル様でしたら、オリフィエル様の肖像画を描かれるとかで、近くの小高い丘まで遊びに出かけられましたわ。」

キルノ「……目の前に居るアイツらはどうすんだ?」

ノワ「それは、私達が相手するに決まってるでしょう。キルノさんも手伝ってくださいね。」

キルノ「俺は手伝わねーって言っただろ!何で頭数に入ってんだよ!」

ノワ「イケメンな殿方がお相手ですから、キルノさんが参戦しないと、吊り合わないでしょう。」

キルノ「ほう、そういう事なら仕方がないな。俺様の美しさが人間など足元に及ばない事を魅せつけてやるとしよう。」



ノワ「……ほんと、扱いやすいわね。」


キルノ「しかし、屋外でヌードデッサンか。魔女いのもあんなんで結構大胆なんだな。」

ノワ「……肖像画って言ってんだろ。お前はモデルになるたびに脱ぐんか。」

日記71日目

―マナの濃度が強まっている。

大量のマナを浴びたせいか、気持ちが高ぶって落ち着かない。
今までにない力が溢れるのを感じると同時に、自分が自分の身体ではないような錯覚が私を不安にさせる。

テスが傍のいるのに、弱音なんて吐きたくない。

でも……

このままマナを浴び続けたら、私はどうなってしまうんだろう。
隠されし力に覚醒した私を、テスは今まで通り愛してくれるだろうか。

そんな脳内設定を思いついた厨二病を先ず治すべき。
昨日あれだけ怒って大丈夫だったんだから、この先もきっと大丈夫。

少しぐらいか弱い部分があったほうが、カワイイのだろうか。
そんなくだらないことを考えつくぐらい、私は結構余裕です。
偽葉戦頑張ります (`・ω・´)


「……結局、首輪身につけてるのね。あれだけ嫌だって言ってた癖に。よっぽどあの人の事が好きなのね。ほんと、素直じゃないわ。」
byノウァ

日記70日目



「ふぃふぃ、ちょっとの間だけお供してくれるんですって?レーレ超嬉しい!!有難う!」

 テーセウスのいる処へと向かった私は、先に彼と一緒に合流していたレーレさんと会った。
 レーレさんには一つだけ貸しを作ってしまい、それを未だ返していないことを私はずっと気に掛けていた。
 レーレさんがこの島を去る前に、一言謝っておきたかった私にとって、この合流はまたとない機会となる筈だった。

「あ、レレさん。お逢いできて良かったです。あの、昔約束したあの事ですけど……」

「お礼しなくちゃね…はい、コレ!!」

 
 私が話しかける途中でレーレさんに手渡されたものは、鎖の付いた首輪だった。

「え……なにこれ。」

「だーからー、私からの餞別だってばよ!結婚祝いの第二弾、ウェディングリング首輪よ☆」

 鎖のリードのついた首輪を、テーセウスと私に手渡したレーレさんはとても上機嫌だった。


「あの、ちょっと……訳がわからないんですけど。」

 いまいち納得のできない私は、レーレさんに預けられた首輪を返そうとした。

「あら、知らないの?私とテステスは主人と犬の契を交わした仲なのよ!つまり、ふぃふぃはテステスのつがいなんだから首輪をつけける義務があるわ!」

「犬って、ちょっと!どういう事ですか!レレさんはテスに何したんですか!」

 私がレーレさんに問い詰めようとすると、テーセウスが私の肩をそっと掴んで押さえた。

「レーレ様からお金をお借りしたことがありまして、文字通り犬となって『わん』と鳴いたりいたしましたが……いやはや、オリフィには知られたくなかった。お恥ずかしい。」

 テーセウスが肩をすくめて頭を下げるのを見て、私はいかんともしがたい気持ちになった。

「それ、レレさんが強要したんですね……ちょっと、レレさんとあっちの草むらで話し合ってきます。」

 私がテーセウスの手を払いのけてレーレさんに詰め寄ろうとすると、立ち塞がるように彼が私の肩をしっかりと両手で掴んだ。

「待ちなさい、オリフィ。あの時……わたくしが曖昧な対応をしてしまったせいで、レーレ様の機嫌を損ねてしまいました。これはその報いです。」

「……テス?」

「レーレ様………わたくしも一男性とし、契約悪魔としてのプライドもあります。 男に二言はありません。」

 テーセウスはレーレさんの方を向き、決意に満ちた目で首輪を彼女の前に突き出した。

「喜んでつけさせていただきます。」

 そう言って潔く首輪をつけるテスの表情は、無駄に漢らしかった。

「てすぅぅううう!?」

 目の前で起こっている意味不明な現象に、私はこれは夢なのではないかと錯覚した。

「さすがテステス!男の中の男、話がわかるわ!あとは聞きわけのないふぃふぃの番ね?」

 目が見えない筈なのに状況の把握が的確なレーレさんに、私はすこしばかりの殺意を覚えた。

「つけるわけないでしょう!夫婦揃って何でこんな羞恥プレイしなきゃいけないんですか!?もうやだ、屋敷に帰るッ!」

 私が首輪をトルネード投法で投げ捨てようとすると、その手をレーレさんが押さえた。

「おっと、まちなふぃふぃ。私からのプレゼントを投げ捨てるなんてあんまりじゃない……物を粗末にすんな。」

「うっ。だ、だってこんな物貰っても正直いらな……」

「へぇー。私達の前で交した誓いをもう破るつもり?」

 したり顔で私に詰め寄るレーレさんに、私は思わずたじろいた。

「な、何の事ですか。レレさんの前で何か誓った覚えなんてなんて……あ。」

「へっへっへっ、忘れたとは言わせないぜ、オリフィエルさんよぉ。テステスとアルフラウお姉さまの前で誓の儀式をしたんじゃなかったっけ?」 

「ち、誓いましたけど……それとこれは話がちが……」

「確か『テーセウス、これまで貴方は私が挫けそうな時、優しい言葉と励ましで勇気づけてくれました。これから生涯、私の夫として貴方を尊敬し、信じて共に生きていこうと思います、キリッ』っていってましたよねー、オリフィエルさん?」

 中途半端に似てる私の物真似をして、レーレさんは私の肩に手を掛けた。

「……う。」
 
「テステスが首輪を付けたんだから、当然ふぃふぃもつけなきゃおかしいわよね?星霊さまはちゃんと見てますよ?つけなくていいんですか、ふぃふぃさん?」

 同意を求めるレーレさんの表情を見て、私は心の奥からどす黒いものこみ上げてくるのを感じた。

「ッ……だめ。マナの影響で気が昂ってるだけ……心を鎮めないと。」

 額に手を当て意識を集中する私に、レーレさんはプッと吹き出した。

「何、いきなり厨二病?ふぃふぃったら、そんなキャラだったの?面白ーい。」
 
 その一言で私の“何か”が吹っ切れた。
 
 
 私が黙って首輪を身につけると、レーレさんはその音を聞き届けて満足そうに微笑んだ。


「あら、もしかして、ふぃふぃ怒ってる?怒ってるの?」


「……はい。」
 
 頷く私に、レーレさんは一仕事やり遂げたような表情で囁いた。

「なんだ、ちゃんと怒れるじゃない。」 

 何処かで誰かが「プッ」と笑った気がしたが、私はそれを気にしてる余裕すらなかった。
 
「……私、レレさんに謝ろうと思ってたことがあったんですが。」

「あら何?何なのかしら?」

「……今それどころじゃなくて、忘れてしまいました。」

「あら、そう?残念だわ。」

 レーレさんは気にする様子もなく、笑顔でそう答えた。


 

 

 ―オリフィエルには聞こえないように、テーセウスはレーレの耳元で囁いた。

「感謝しています……オリフィの泣き顔はわたくしもあまり見たくはありませんので。」

「あら、いい話みたいになっちゃってるけどいいのテステスさん?本当のお楽しみはこれからよ。」

「ええ、そうですね。わたくしも楽しみです。」

 オリフィエルに気付かれないよう目配せするレーレに、テーセウスはウインクをして微笑みを返した。

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Author:佐藤深雪
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