2017-05

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

裏日記18日目

 ニフルハイムの街は貧困の差が激しく、豪華な建造物の立ち並ぶ中央からすこし離れると、鬱蒼とした貧民街が広がっている。
 貧民街での犯罪や暴力など日常茶飯事で、衛兵などが取り締まりに来ることも殆ど無い。
 故に、道端の影で血塗れの男が倒れていても、誰も気に留めることもない。
 気に留めるものが居るとすれば、追い剥ぎぐらいなもので、血塗れで倒れている男の前で立ち止まった女もそういった類の者だと、気配に気づいた男は思った。

「ねぇ、聞いてる?さっきの連中は、とりあえず帰ったみたいよ。連れの女の人は、手遅れだったみたいだけど。」

 血塗れで倒れてる男を心配する様子もなく、女は見下ろしながら淡々と話し掛けた。

「……お前は誰だ。俺を助けたとでも言いたいのか。生憎、礼をするにも身体も動かん。死期が少し伸びただけの事だ、余計なことをしたもんだな。」

 血塗れで倒れている男は、少しだけ顔を上げると息絶え絶えの声で答えた。

「そうね。放っておいても死にそうよね。何か、思い残したことでもある?遺言ぐらい聞いてあげるわよ。」

「裏切り者のジェラルド……ジェラルド・ランツフォートに呪いを。」

 男の言葉に首を傾げた女は、スカートを抑えながらしゃがみこむと、倒れている男の顔を両手で持ち上げた。

「嫌よ。なんで、私が頼まれなきゃいけないの。自分でやりなさいよ。」

「……なら聞くな。俺が死んでも奴に復讐できるなら、とっくにしてるさ。」

 身も蓋もない女の言葉に、自嘲しながら男は呟いた。

「あら、それぐらいの覚悟はあるのね。なら、私と契約してみない?あなたの復讐叶えてあげるわ。」

「……お前は何者なんだ?」

「私?私はノウァ。ただの悪魔よ。」
スポンサーサイト

裏日記17日目

 今は昔の物語。
 
 ある処に予言者の老婆と、その弟子の少女が街から少し離れた森の小屋に住んでいました。
 預言者は、自分の住む王国の崩壊や復権を正確に予言しました。 
予言者の予知は必ず当たると噂が広がり、権力者や商人達がその恩恵に肖ろうと予言者の元を訪ねました。
 予言者は予知の中身を不可解な詩にして書き記すため、その詩の意味を理解できるのは依頼者に予言通りの結果が起こった後でした。
 幸福の予言は良しとしても、不幸の予言を避けられない事に心を痛めた弟子は、師匠に尋ねました。

「どうして師匠は未来を知っているのに、複雑な詩にして伝えるのですか?分かりやすく伝えてあげれば、依頼者さんの不幸を避ける事ができるのに。」

 老婆の師匠は弟子に答えました。

「私の助言で、依頼人の未来が変わってしまったら、私の予知が外れていまうからよ。」

 師匠の言葉に弟子は驚きました。
 依頼者に予言した事故や不幸も、彼女の予知が外れないために、複雑な詩にしているだけだという事を。

「それでは師匠を頼ってきた人達を、誰も救う事ができないじゃないですか。師匠の予言で誰かを助けてあげたいとは思わないのですか?」

 師匠は首を横に振り答えました。

「それは予言者の仕事ではないから。」

 それから暫くして、予言者の住む森の近くで大きな事件がありました。
 王国に手紙で送られた予言者の詩は、この事件の事で沢山の人が死ぬ事を伝えていましたが、その手紙が届いたのは、事件が終わった後でした。

 あまりの不条理に、怒りを覚えた弟子は師匠を責めました。

「師匠は自分の事ばかり考えて、また助けられる人を見殺しにしたんですね。もう、師匠にはついていけません。」

 小屋を出ていこうとする弟子に、師匠は言いました。

「そこまであなたが言うなら、直接教えてあげましょう。あなたはもうすぐ木の下敷きになって死にます。」

 師匠の予言は必ず当たる事を知っている弟子は、恐怖に怯えました。
 師匠に助けを請おうと弟子が駆け寄ると、師匠は弟子を思い切り突き飛ばしました。
 突き飛ばされた衝撃で弟子は転んでしまい、打ち所が悪かったのか意識を失ってしまいました。
 弟子が意識を取り戻した時には、近くにあった大木が折れていて小屋を押し潰してしまっていました。
 弟子には大きな怪我はありませんでしたが、師匠は木の下敷きになって既に事切れていました。
 初めて外れた予言が、師匠の最後の予言になってしまいましたとさ。

Read More »

裏日記14日目

 人ならざるものになった以上、もう人に戻ることはできない。
 人間にも未練はないし、過去の自分にも執着などない。
 あるのは、過去の記憶と捨てきれない人としての心。

 自らに関わるもの不幸を糧にする事が、なぜこんなにも自然にできないのだろうか。
 眷属としての中途半端な自分に苛立ちすら覚える。

 これではまるで、籠を出たら餌すら取れない小鳥のようだ。
 白きの庭とは、私にとっての安息の鳥籠だったのか。

 白き魔女よりも弱い自分だけは認めたくない。
 心も身体も人間に負ける悪魔なんて無様すぎる。

セツカさんの中の人のお誕生日記念。

 節分の日がENo.1352 レイヤ・センドウさんの中の人のお誕生日でしたので、記念にSS書いてみました。
 お誕生日おめでとうございます!
 
 裏表12日目日記のセツカさん視点バージョンです。
 公開していい許可を頂きましたので、お披露目させていただきますね。
 挿絵はパーティメンバーのENo.1351 サクラ・エゾヤマさんに、こっそりお願いしていました。
 
 お願いしてから、2時間ぐらいで挿絵をいただいて鼻水でた。
 



 それではどうぞ、おたのしみ下さい。

Read More »

裏日記11日目

 偽葉の戦いの後。

 偽島が沈み流れ着いた海岸で、暫くバカンスを過ごしたテーセウス夫妻と共に私は住処である白きの庭へと戻り、比較的平穏な日常を過ごしていた。
 従者としての仕事は、双子の悪魔のドルチェ様とアマービレ様の遊び相手や、屋敷の掃除や食事の用意などで、それらの仕事は強制的なものではなかった。
 屋敷での時間を持て余さないよう、自主的に私が行なっていた仕事であり、趣味に使うことのできる時間は幾らでもテーセウスさんが与えてくれた。
 屋敷に置いてあるピアノを調律していただいてからは、一人で弾き語りをするのが私の楽しみの一つになり、観客が居なくとも心が満たされる至福の時間となった。

 いつもの様に演奏を終えて鍵盤蓋をそっと閉じると、部屋の隅から控えめな拍手の音が聞こえてきた。
ドルチェ様やアマービレ様にしては、上品な反応だと思い拍手の主へと視線を向けると、左右に異なる眼の色をもつ藍髪のオリフィエルが、微笑を浮かべながら部屋の隅の方にちょこんと立っていた。
 ニフルハイム家の正装である魔女服を、アストゥリアス家に嫁いだ後で着ている必要はないのだが、白の魔女服はオリフィのお気に入りのようで、普段着として探索が終わってからも身につけている。

「あ、すみません。通りかかったら、素敵な演奏と歌声が聞こえてきたもので……お邪魔でしたか?」

 私の返事が無いので気分を損ねたと思ったのか、オリフィは慌てて拍手をやめて、軽く頭を下げた。

「いえ、今演奏を終えた所です。お気になさらず。お褒めいただき、ありがとうございます。」

 私はピアノの椅子から立ち上がると、オリフィに深くお辞儀を返した。
 オリフィは私の反応に表情を明るくすると、トコトコと傍まで駆け寄ってきた。

「あ、同じお屋敷にいるのに、ちゃんとお礼を言ってなかったですよね。偽葉の時はありがとうございました。ノウァさんが居なかったら、一人では危なかったと思います。」
「テーセウスさんの奥様をお守りするのは、従者として当然の使命です。褒めていただくのは光栄ですが、あまり気になさらないで下さい。」

 微笑みを浮かべて言葉を返すと、オリフィは思いつめた表情で私の方をじっと見詰め始めた。

「オリフィ様……どうかいたしましたか?」
「あ、はい。ノウァさんが、私の親しい友人に面影が似ているもので……あの、宜しければ、隠れてる目の方を見せていただいても良いですか?」

 オリフィが言う親しい友人とは生前の私、フィーの事を指しているのだろう。
 意識してフィーやオリフィとは異なる髪型にセットをしていたのだが、流石にそれだけではオリフィに勘繰られても仕方が無い。
 寧ろ、今まで気が付かなかったのか、それとも思っていても私に言えなかったのか興味深くはある。

「……はい、どうぞ。」

 前髪を掻き上げると、覗き込むようにオリフィは私の方へ顔を近づけた。

「……やっぱり、フィーな訳ないよね。」

 オリフィが聞こえないぐらいに小さく呟いた声を、聞き漏らさないように耳を澄ます。
 私の眼の色が両方同じなことを確かめると、オリフィは少しだけ寂しい表情をして俯いたが、直ぐに向き直って笑顔を浮かべた。

「あ、ごめんなさい。さっきもお話ししたと思いますが、私の親しい友人……フィーにノウァさんがとても良く似ていたので。いくら似ていても、フィー本人な訳は無いですよね。私ったら、やだ、もぅ。」

 大体予想が合ってる訳だが、勝手に自分で答えから遠ざかってくれるオリフィの性格には感謝したい気持ちになった。
 仮に私がフィーだったと気づいたら、オリフィはどんな反応をするのだろうか。
 少しだけカマをかけてみたくなった私は、少し踏み込んだ質問をしてみることにした。

「オリフィ様。フィーさんというお名前の方と、何かあったのでしょうか?なんだか、執拗に気になさっているようですので。」

「あ、え……はい。ノウァさんは、こちらに来てから間も無いですけど、テスから聞いてご存知かも知れませんね。私はフィーと争うことになってしまって、彼女を傷つけてしまいました。その事で、彼女とお話がしたくて。」

「いえ、テーセウスさんからは何も伺っておりません……傷つけたとは?フィーさんに、怪我をさせてしまったのなら、直接謝りに行かれては良いのでは?」

 オリフィは、一瞬肩を震わせると、とても辛そうな表情で私から目を逸した。

「……フィーは死にました。私の所為で。」
「そうですか。オリフィ様は、私がフィーさんの生まれ変わりだと思っていらっしゃるのでしょうか?」
「あ、いえ……はい。テスがノウァさんを連れてきた時にもしかしたら、って思っていました。それでも、私に教えてくれない事は何か理由があるのかなって。」

 テーセウスさんには聞けない事を、直接私に聞きに来る事のほうが度胸がいるのはないのだろうかと、ふと思った。

「なるほど。仮に私がフィーの生まれ変わりだったとして、オリフィ様は何を私にお話する心算だったのですか?」

「えっ、それは……あの時の事を、もう一度話し合いたくて。」

 小犬のように怯えた目で、私を見るオリフィに罪悪感が芽生えつつも、オリフィの本心を確かめるために質問を続けた。

「……オリフィ様は、自分のした事をフィーさんに謝りたいと思っておられるのでしょうか?」

「えっ……あ、その……。」

 言葉を探すのに動揺するオリフィに、胸がときめいた気がしたが、冷静を装って私は淡々と言葉を綴った。

「仮にフィーさんに謝ることができたとして、オリフィ様がその方にしてしまった事は赦して貰えるような事なのですか?」
「……いいえ。」
「……質問を変えてみましょうか。仮に私がフィーさんの生まれ変わりだとして、オリフィ様の事を「赦す」と言えば、オリフィ様の気が済むのでしょうか?」

 オリフィは、目を潤ませながらも俯くのを我慢すると、きつく口を結んだまま私の方を見詰め返した。

「あ、いえ……ごめんなさい。私は自分の意思でフィーを殺めました。それは、誰が赦してくれても、赦されることではありません。この罪は一生背負って生きていきます。」

「……私がオリフィ様を赦すと言うだけで、オリフィ様の心が晴れるのでしたら何時でも仰って下さい。お力添えは致しますので。」

 頭を撫でるのは馴れ馴れしいので、オリフィの肩を少しだけさすって笑顔を作ってみせた。
 フィー……オリフィエル・ニフルハイムの死は避けることの出来なかった結末。
 彼女はオリフィエルの死を認識して、悪魔との契約によって齎される不幸から逃れなければならない。
 それが、私が新たな名前をテーセウスさんから頂いた意味。
 同時に、フィーであった過去と決別するためにも必要な儀式。
 オリフィエル・ニフルハイムの死をなかった事にしてはいけないのだ。

「はい、お気遣いありがとうございます……ノウァさんは優しいですね。私、ノウァさんとは良いお友達になれる気がします。」

 微笑みながらオリフィが返した言葉に、私と彼女はもう二度と昔のように心を通わす事ができないと悟り、少しだけ寂しくなった。

NEW ENTRY «  | BLOG TOP |  » OLD ENTRY

リンク

プロフィール

佐藤深雪

Author:佐藤深雪
いつから改装中だと錯覚していた?

なん だと…

アイコンは魔術商会さん(E№41)からいただきました。とても感謝なのです。

ノウァ
ファーヴニール
深雪

とことこ

最近の記事

カテゴリ

辺境地域(キャラのホーム世界設定) (4)
辺境黒歴史(ホーム世界の歴史) (3)
偽島2期日記 (25)
Fallen Island (2)
いただき物 (2)
オリフ (32)
ネヴァ (8)
カーズ (25)
偽島1期(TiA) (20)
カーズの日記 (1)
ティアの交換日記 (1)
おりふぃ (14)
偽島3、4期日記 (46)
六命表日記 (14)
六命裏日記 (9)
精霊日記 (19)

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。