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2018-12

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日記12日目

 ニフルハイムの地下の一室。

 石壁に囲まれた薄暗いこの部屋に装飾の施された、くすんだ鏡は佇んでいた。
 魔力を失った鏡は辺りはおろか、目の前に居る私でさえ映し出す事はない。
 鏡がもう一度、両親と暮らした向こう側の世界を映し出す淡い願いを抱き、鏡を袖で拭ったが鏡が光を取り戻す事はやはりなかった。

 アルフラウ様の話では、私は鏡の傍に意識を失って倒れていたらしい。
 どうやって私はこの世界にやって来たのだろう。
 おぼろげな記憶を辿るように、私は眉間に指をあてながら考え込んだ。

 分からない。

何か靄がかかるように記憶が曖昧で思い出せない。 大事な何かを忘れてしまってる気がする。

 いや、忘れてしまった訳ではない。
 靄のような記憶は消えかけてはいるが、もう少し記憶に意識を向ければおぼろげな何かを思い出せそうだった。
 私は記憶の糸を慎重に少しずつ辿る事に意識を集中し、目をつむった。


 ―それは突然の出来事だった。
 大きな地響きと共にガラスのように空が割れた。
 空の景色を映し出したままの割れたカケラは、雨のように私たちの住み処に降り注いだ。
 煉瓦で造られた屋根は、空のカケラとぶつかる度にぐもった悲鳴を上げながら砕け散った。

 私とアンネリーゼお母様は、キッチンの大きなテーブルの下に隠れて寄り添っていたが、ヴォルフラムお父様がやって来て「此処に居ても危険だから、外に逃げよう」と私たちに叫んだ。
 お母様と私は、お父様が進む方へと必死についていった。

 外には砕けた空のカケラが一面に広がっていて、空だった場所には何も見えない暗闇があった。
 暗闇がどんどん広がっていくたびに、すべてが無くなってしまうような恐怖に駆られ、私は歩く事ができなくなった。
 お父様は私を背負って、暗闇から逃れるために走った。
 お母様も私に頑張るように声をかけながらついて来てくれた。

 暫くすると、お父様は森の中にある小さな小屋に駆け込んだ。
 そこで私を降ろすと「知り合いに助けを求めてくる。」と言い小屋から駈け出していった。

 残された私とお母様は、お父様の帰りを待っていたが、暫くして落ち着きを取り戻し、動けるようになった私は、小屋をぐるりと見回した。

 小屋の壁には綺麗な鏡が立て掛けてあり、その場にそぐわないような豪華で繊細な装飾が施されていた。

 私がなにげなく鏡を覗き込もうとすると、お母様は「それに触れてはダメっ!」と叫んで私の手を引いた。

 
 ―ような気がした。
 鏡に映ったお母様の手は“そこ”に見えたのに“そこ”には私は映っていなかった。

 鏡に映ったお母様が、手を伸ばして泣き叫ぶような姿を私は見た。
 見たはずなのに、鏡に私の姿はやはり“そこ”に無かった。

 そのあと。

 赤い何かが鏡に―
 
 崩れるように倒れ―
 
 赤く―
 
 そのあと。 
 
 滲みわたった― 
 
 そのあと。

 赤い―

 そのあと。

 そのあと。  

 ―わからない。 

 記憶から、赤い絵の具のついたパズルのピースのような絵が、次々と現れては消えていく。
 それはよく見ると、人の姿だったように思えた。
 赤い絵の具のついたパズルのピースが組み合わさる毎に、私の心臓は耳元にあるかのようにドクン、ドクンと音を立て始める。
 
 そして私の意識は“そこ”から“ここ”に帰って来てしまった。
 
 その後、ガラスの欠片のようなキラキラしたものが、目の前をチカチカと舞い散るのがみえると、立っていた筈の足元がぐにゃりと曲がった。

 鏡に寄りかかるように手を伸ばした筈だが、私のまえはいつの間にか真っ暗になっていた。
 
 

 ―気がつけば私は自分の部屋のベッドに横になっていた。
 何処までが夢で、何処までが現実だったのだろうか。
 誰かに聞けば、私が何をしていたのか知る事ができるかもしれない。
 私は半身を起こすと、意識のはっきりしないぼやけた視界で窓の外の景色を見た。
 外の景色は淀んだ雲に覆われ、灰色の絵の具を塗ったようにでたらめな模様に見えた。
 
 「これも夢だったらいいのに。」

 私はそう呟くと、布団を被って暗闇にまた意識を落とした。
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