FC2ブログ

2018-12

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

日記15日目

○月△日 アルフラウの館 〜旅立ち前夜〜

 日も暮れかけた頃、貴族風の男装をした黒髪の女性は薄暗くなった部屋にランタンの火を灯した。
 ランタンの炎を調節したあと黒髪の女性は、机の上に拡げられた地図をしげしげと眺めている、同じくドレス姿の黒髪の少女に声を掛けた。

「行き先は地図を見れば分かるようにマーキングしてあるから、その通りに進めば迷子部に行けるよ。心配すんなって、オリフィ。」
 
 オリフィと呼ばれた少女、オリフィエルは黒髪の女性の方を不安そうな視線で見上げた。

「あ、はい。多分、迷わないと思いますけど……行き先が迷子の部って、信用して大丈夫なのでしょうか?」

 黒髪の女性、オリフラムはオリフィエルの肩を軽く叩くと、目元は笑わずに口元だけやや笑みを見せて言った。

「細かい事は気にしたら負けだよ。だいたい、あの島の事を調べたいって言いだしたのは誰だったっけ?」

「……私です。」

 オリフィエルの住んでいた世界『ヘルヘイム』は偽島にあるという制御装置の暴走の干渉を受け崩壊したのではないかという推測。
 確証はまったく無い。だが、偽島と呼ばれる場所が消失した時期を同じくしてオリフィエルの住んでいた世界も消えたのである。
 偽島とは、元々その制御装置によって創られた偽りの島。
『ヘルヘイム』も、何者かによって創られた偽りの世界だったのかもしれない。オリフィエルはこの世界に来てから、そう考えるようになった。
 現に彼女の住んでいた世界は、今彼女がいるニフルハイムとまったく同じ場所だった。
 違うところと言えば、そこに住んでいたのがオリフィエルとその両親だけだった事。
 オリフィエルにとってそれが当り前の日常であったが『ヘルヘイム』が崩壊してしまった今、その日常に帰る事は出来なくなってしまっていた。
 

 ならば……自分の世界がどうして崩壊したのか。その真実だけでも知っておきたい。
 オリフィエルは再び姿を現したと噂される偽島への探索を、女伯爵のアルフラウに申し出た。

 アルフラウはオリフィエルの願いを快く受け入れ、オリフラムに旅立ちの手筈を整えるように伝えた。
 オリフラムはオリフィエルに偽島へ向かうための地図と、恐らく今回も集っている迷子部への紹介状を持たせた後、冒険に必要な道具を一通り揃えてオリフィエルに預けた。

 「うん、宜しい。」
 
 オリフラムは頷いた後、オリフィエルの対面の椅子に腰かけるとテーブルに肘をついた。

「さて、旅立つ前に聞かせてもらおうか。オリフィが何処から来たのか。」

 オリフィエルはオリフラムの言葉に頷くと、深呼吸をひとつしたあと静かに口を開いた。

「私が住んでいた場所はヘルヘイムと呼ばれる場所でした。その名前を教えて貰ったのはお父様からです。そこはこの世界と同じような所で、ただ違う事と言えば……一緒に住んでいたのは私とお父様とお母様の三人だけで、他には誰も見かけた事がありません。」

「はぁ?なんだか胡散臭い場所だなぁ。で、君のお父さんとお母さんは誰なのさ。その辺が気になるんだよね。やっぱり。」

 オリフラムはテーブルに肘をついた手を口元で組みながら、観察するようにオリフィエルを見詰めた。

「私のお父さまは、ヴォルフラム・ニフルハイムといいます。ニフルハイム家の貴族だったとお父様から聞いています。」

「……ヴォルフラム?親戚でも聞いた事が無いな。家系図の方にも多分載って無いと思うよ。ま、いいや。後で調べるとして、母親の方は?」

「お母様の名はアンネリーゼ・ニフルハイムです。ニフルハイム家に嫁いできたと、お母様からは聞いています。」

「は?ちょっと待った。アンネリーゼ・ニフルハイムって、私や姉さんの母親の名前なんだけど。それはおかしいんじゃないか?」
 
 オリフラムは組んでいた手を解き、テーブル越しにオリフィエルの方へ身を乗り出した。

「本当です……お母様の名前を間違える筈、ないです。私はお母様の事を、リーゼお母様って呼んでいました。」

「でも、それって全部消えちゃったんだよね、世界ごと。」

 オリフラムの言葉にオリフィエルの肩が少し震えた。

「贋者だったんじゃないの?お母様はもうこの世に居ないけど、本物が二人いる訳がない。」

 オリフラムが自信満々にそう言うと、オリフィエルは怒る事も無く静かに答えた。

「……どうして贋者だって言えるんですか?私はそこで生まれたし、今もここに居るじゃないですか。」

「そりゃ、オリフィが嘘を言ってるかもしれない。誰もそんな世界の事を知らないんだからさ。」

 何も答えずにただ見詰めるオリフィエルに、オリフラムは溜息をつきながら言った。

「だいたいさ、君の事だって信じてないよ。本当にニフルハイムの血を引いてるのかだって……ね。」

 オリフィエルはその言葉に少し眉をひそめたが、オリフラムの方を見詰め返すと、声は荒げずに少し低い声で淡々と話し始めた。

「世界もお父様もお母様も私も贋物で、何がいけないんですか?私は何の贋者なんですか?オリフお姉様の言う贋物は私にとって全部本当だったんですよ。」

「あ、うん……少し、言いすぎたかもしれない。だけど、オリフィが言っていた事が真実なら、お母様が二人いる事になるよね?それってどういう事なのか分かる?」

 オリフィエルは首を横に振り、黙ったままオリフラムの次の言葉を待った。

「並列世界……パラレルって知ってる?同じ世界がいくつも存在するって事。つまりさ、オリフィの言ってる事が正しいとすれば、オリフィはパラレルの世界から来た住民って訳。」

「それは……どういう事なんですか?」

「ん。結局ね……君はこの世界には居るはずの無い子、って事になるね。うん。」
 
 オリフラムの言葉に、オリフィエルは返す言葉も無く立ち竦んだ。

「正直、オリフィが来てからさ……姉さんの私に対する態度もおかしくなったし、家臣達も混乱してるし。私も素直に認められないんだよね、急に妹が現れたって……さ。」

オリフラムは苦笑いしながら、黙っているオリフィエルの肩を軽く掴んだ。

「でも、オリフィが偽島に行きたいって言った時、嬉しかったよ。ちゃんと、自分の事を分かってるんだなって思ったもの。」

「……違います。」

オリフィエルの答えにオリフラムは首を傾げた。

「は?何が違うの。居辛くなってそう言いだしたんだろ?」

「……違います。」

「私は、どうしてこんな事になったのか真実を知りたいだけです。」

「……ふーん。そういう事にしておこうか。それじゃ、真実を知ったらニフルハイムに帰ってくるんだ?」

「はい……帰ってきます。」

俯きながら答えるオリフィエルに、オリフラムは首を竦めて席を立った。

「……オリフィが帰ってくる頃には、私もオリフィの事をもう少し理解するよ。ちょっと苛めてみたかっただけさ、かわいいから。」

「さ、明日は早いんだから、今日はぐっする寝るといいよ。」

 そう言い残すと、オリフラムは扉を開けて部屋を去った。
 
 静寂の中。
 部屋に残されたオリフィエルは、俯いたままテーブルに身を伏せて消え入りそうな声で呟いた。


「―誰か、助けてください。」





■月×日 〜現在〜
 
 この島に来て、初めて友達になった女の子。
エキュ……エキュパーシュが突然居なくなってしまいました。
もっといっぱい話したい事があったのに。
 もつといっぱい聞いて欲しい事があったのに。
 
私に話しかけてきてくれた語り手の人も、最近は姿を見せてくれません。

 ほんの少しだけ出会った友達たちも、今は何処にもいません。

 みんな居なくなってしまうんですか。

 みんな消えてしまうんですか。

 この島の思い出も偽物なんですか。

 いつか全部消えてしまうんですか。



 ノートに書かれた文字は黒く塗りつぶされ、ほとんど見えない。
スポンサーサイト

● COMMENT ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://mementomorinomaigo.blog81.fc2.com/tb.php/135-845b9574
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

日記16日目  «  | BLOG TOP |  » 日記13日目

リンク

プロフィール

佐藤深雪

Author:佐藤深雪
いつから改装中だと錯覚していた?

なん だと…

アイコンは魔術商会さん(E№41)からいただきました。とても感謝なのです。

ノウァ
ファーヴニール
深雪

とことこ

最近の記事

カテゴリ

辺境地域(キャラのホーム世界設定) (4)
辺境黒歴史(ホーム世界の歴史) (3)
偽島2期日記 (25)
Fallen Island (2)
いただき物 (2)
オリフ (32)
ネヴァ (8)
カーズ (25)
偽島1期(TiA) (20)
カーズの日記 (1)
ティアの交換日記 (1)
おりふぃ (14)
偽島3、4期日記 (46)
六命表日記 (14)
六命裏日記 (9)
精霊日記 (19)

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。