2018-07

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

日記21日目

前回までのあらすじ
 
身体の弱いフレースヴェルグ伯爵の妻アンネリーゼの身代わりとなって王国の舞踏会に招かれたアンネローゼは、ニフルハイム家の従弟で音楽家のヴォルフラムと出会い恋に落ちる。
 ニフルハイムに戻ってからも、アンネローゼはアンネリーゼと偽ってヴォルフラムとの関係を続けていたが、結果として本物のアンネリーゼとヴォルフラムが親しく接するようになり嫉妬を覚える。
 アンネローゼは宮廷内では、他人として接するようにとヴォルフラムを窘めるようになった。
 
 アンネリーゼに想いを募らせるヴォルフラムは、祖母が持っていた異世界に旅立つ事ができる移送鏡の事を思い出し、移送鏡の探索に旅立つ。
 祖母の屋敷で鏡は見つからず、失意のうちに帰路につくヴォルフラムだったが、偶然立ち寄った店で移送鏡を発見する。
 店の主はテーセウスと名乗り、ヴォルフラムの為に祖母からその鏡を預かっていたと伝えた。
 ヴォルフラムは歓喜し、テーセウスに今までの経緯と移送鏡を使った駆落ちの計画について語るが、テーセウスは移送鏡の能力が一人用である事を無情にも告げる。 ←いまここ。



「一人用だなんて聞いていないぞ!あ、いや……すまない。君にそれを言っても仕方のない事だよな。しかし、これは困った事になった。」

 頭を抱えテーブルに突っ伏する私。

「……ヴォルフラム様はこの鏡で、もう一人連れて行く事ができれば良いのですね?具体的に申し上げれば、アンネリーゼ様を。」

 テーセウスは突っ伏している私に静かに語りかける。
 私は少し身を起こすと、テーセウスの方に向き直った。

「ああ、それが出来るのなら苦労しないんだが……何か良い案が君にはあるのかい?教えてくれテーセウス。私にできる事なら全力を以て協力しよう。」

「そうですね、一時的にでも膨大な魔力……マナを確保できれば、移送鏡でもう一人ぐらいは送る事が出来るかもしれません。宛ては無くも無いのですが。」

テーセウスは紅茶を一口すすった後、勿体ぶるかのように私を見詰めると押し黙った。

「……宛てはあるという事か?それなら、そのマナを発生させる物を持ってくればいいのかい?それは何処にあるんだ?今すぐ探してこよう。」

「いえ。それは物ではありません。その方を連れ出す事は至難の技でしょう。むしろ、その方の近くに鏡を持ちこむ方が建設的だと思います。」

「……まさかそれは、フロストロードの事ではないよね?しかし、フロストロード以外にそれ程の魔力を持つ者がいるとは初耳だな。その人は一体誰なんだ?」

 私の問いにテーセウスはまた紅茶を一口すすると、静かに答えた。

「アルフラウ・ニフルハイムお嬢様です。アンネリーゼ様の望みであれば、きっと協力してくれる事でしょう。」

「アルフラウ様だって!?あんなに幼い子にそんな力があるというのか!?いや、それより……それは結果的に、アルフラウ様を騙す事になるんじゃないのかい?」

「はい、結果的にはそうなりますね。」

 テーセウスは悪びれる様子も無く頷いた。

「しかし、ヴォルフラム様がこの世界を去った後の事を憂う必要は無いでしょう。貴方達はこの世界から逃れるために鏡を使うのですから。」

「あぁ……そうだね。私はまだ覚悟が足りないようだ。彼女を手に入れる為に全てを敵に回してもいいという覚悟が足りなかった。アルフラウ様の力を借りよう。」

 テーセウスは私の言葉に満足そうに頷くと、テーブルの上に指を組み私の方を見詰めた。

「アルフラウ様の説得と鏡の調整は私が責任を持って行いましょう。ただ……」

「ただ、なんだい?」

「私もさすがに無償で協力と言う訳には……ヴォルフラム様には相応の報酬を支払って頂きたいのですが。」

「相応の報酬……か。分かった。いくら支払えばいいんだい?君の望む額を言ってくれて構わない。期待に応えられるだけの額は揃えよう。」

 私がそう言うと、テーセウスは首を振り静かに言った。

「私が欲しい物は、路銀のような石ころではありません。貴方にとってアンネリーゼ様と同等に価値を持つもので無ければ意味は無いのです。」

 予想外の言葉に息を飲んだ私に、テーセウスは構わず言葉を続けた。

「そう……貴方の命に等しいほどの価値が無ければ意味が無い。」

 テーセウスの碧の瞳に見つめられ、心を覗かれているような気持ちになった私は背筋に寒気が走った。

「テーセウス。君はもしかして……人ではないのか?」

「さて?ヴォルフラム様のご想像にお任せします。」

 テーセウスは紅茶を飲み終えた後、私に嫌味な程に優しく微笑んだ。

「いや、君が喩え悪魔だったとしても構わない。私が今必要としているのは君の力なのだから。」

 私はテーセウスにそう言うと、鞄の中にある譜面を取り出しテーブルの上に並べた。

「これは……譜面ですね。これがどうかしましたか?」

 テーセウスは不思議そうに譜面を覗き込んで、首を傾げた。

「あはは、ただの譜面では無いさ。これはね、呪歌や聖歌と呼ばれるものだよ。演奏する事で聞くものに魔法の効果を与えるんだ。」

「なるほど……それは面白い物ですね。しかし、対価としては少し物足りないように思えるのですが。」

 テーセウスの言葉に頷いた私は、鞄の中にある黒い封書に仕舞ってある譜面を彼の前に広げた。

「これは私が公表した事のない譜面だが、人の心を支配したり寿命を奪ったりする効果を持つ呪歌だ。これを含めて、君に私の歌をすべて捧げよう。」

「ふむ、あなたのすべての歌を……ですか。承りました。」

テーセウスは立ちあがると、仰々しく頭を垂れてお辞儀をした。

「それでは、ヴォルフラム様とアンネリーゼ様の“二人だけ”が住める世界へ、私が責任をもってご案内致しましょう。」

「……ああ、よろしく頼むよ。頼りにしているよ、テーセウス。」

私はテーセウスに手をかざすと彼も頷き、手を差し出して握手を交わした。
スポンサーサイト

● COMMENT ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://mementomorinomaigo.blog81.fc2.com/tb.php/137-9d64e05e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

日記22日目 «  | BLOG TOP |  » 日記20日目

リンク

プロフィール

佐藤深雪

Author:佐藤深雪
いつから改装中だと錯覚していた?

なん だと…

アイコンは魔術商会さん(E№41)からいただきました。とても感謝なのです。

ノウァ
ファーヴニール
深雪

とことこ

最近の記事

カテゴリ

辺境地域(キャラのホーム世界設定) (4)
辺境黒歴史(ホーム世界の歴史) (3)
偽島2期日記 (25)
Fallen Island (2)
いただき物 (2)
オリフ (32)
ネヴァ (8)
カーズ (25)
偽島1期(TiA) (20)
カーズの日記 (1)
ティアの交換日記 (1)
おりふぃ (14)
偽島3、4期日記 (46)
六命表日記 (14)
六命裏日記 (9)
精霊日記 (19)

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。