2018-07

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

日記22日目

 昼間だというのに、日差しを一切遮るようにカーテンに閉ざされた書斎。
 静寂の支配するこの部屋で、白い髪の幼い少女はひとり大きな本を読んでいた。
 室内の灯りは机に置かれたランタンによってまかなわれ、白いドレスを着た彼女は床に広げた本を物憂げな様子で眺めている。
 少女の瞳は宝石のように紅く、その肌は石膏のように真っ白で、そのまま動かなければ、まるで人形が置いてあるかのようにも見えた。
 彼女の名はアルフラウ・ニフルハイム。
 北限の勇、フレースヴェルグ伯爵の長女として生まれてきた彼女は、日差しのある場所で過す事の出来ない白子(アルビノ)と呼ばれる体質のため、殆どの時間を本に囲まれた書斎の中で過ごした。
 ニフルハイム領の魔導師団であるフロストロードはアルフラウの育成、指導をフレースヴェルグに任されていたため、彼女の生みの親であるアンネリーゼといえども、彼らの許可なくアルフラウに面会する事はできなかった。

「部屋の外は厳重な結界ですのね。これでは、謁見するのにも一苦労なのだわ。」

 誰も居ない筈のこの部屋で声がしたので、アルフラウは読んでいた本から目を離すと声の主のほうへと振り向いた。
 部屋の扉が開いた気配が無いにも拘らず、そこには翡翠色の目をした幼い少女が立っていた。
 突然の来客にキョトンとしているアルフラウに、少女は微笑みながら近寄ると、スカートの裾を軽く摘んでお辞儀をした。

「こんにちは!初めましてなの、あたくしドラクロワと申しますのだわ。」

 アルフラウはドラクロワと名乗る少女をじっと見つめると、やがて少し微笑んで口を開いた。

「初めまして、私はアルフラウ。貴女は何処からやって来たの?」

 アルフラウが首を傾げると、ドラクロワは誇らしげに小さな胸を張った。

「それは秘密ですの。手品はタネと仕掛けが分からない方が楽しいですのよ。」

「そうなの?それで、ドラクロワは私に何かご用?」

 アルフラウは読んでいた大きな本を閉じると、その上によじ登りちょこんと腰かけた。

「あ、そうなの、あたくしアルフラウにお願いがあって参ったんですの!」

 ドラクロワは軽やかにステップを踏みながら、アルフラウの傍まで駈け寄っていった。

「お願い?私に?」

 アルフラウはドラクロワの言葉に、不思議そうな表情で首を傾げた。

「そう、お願いですのよ。アンネリーゼのお手伝いを、アルフラウにお願いしたいのだわ。」

「お母様のお手伝い?それはどんな事なの?ドロクロワはお母様のお友達なの?」

「あたくしはアンネリーゼのお友達では無いけれども、あたくしはアンネリーゼのお友達のお友達ですのよ。お友達のお友達は、みな友達なのだわ。」

 ドラクロワは笑顔で答えると、アルフラウの座っている本の端にちょこんと飛び乗った。

「ふぅん、私にはお友達がいないから知らなかった。」

 アルフラウは奇妙な来客に興味を持ったのか、ドラクロワに近付いて彼女の頬っぺたを軽くつついた。

「あら、アルフラウにはお友達がいませんの?それなら、あたくしがお友達になってあげるのだわ!」

 頬をつつかれるのを気にする様子も無く、ドラクロワはアルフラウの手を握って微笑んだ。
 突然手を握られたので少し驚いたアルフラウだったが、彼女の笑顔につられて少しだけ微笑んだ。

「あなたは私が恐くないの?」

「どうして?アルフラウは可愛いですのよ?」
 
 ドラクロワの即答に、アルフラウはクスリと笑って彼女の髪を撫でた。

「あなた変な子ね。面白いから私の友達にしてあげる。それで、お母様のお手伝いって何かしら?」

「お褒めに与り恐悦至極なのだわ。お手伝いの話なのだけれど、アンネリーゼのお友達の人が一緒に遊びたいのに、性悪な魔法使いに邪魔されて困っているのよ。」

「ぷっ、性悪っ。プルクシュタールの事ね。私もプルクシュタールが勝手に部屋から出てはいけないと言うから、お母様の所へも行けないのよ。」

 アルフラウはクスクスと笑った後、少し咳き込んで胸を抑えた。

「ドロクロワ、あまり笑わせないで……息ができなくなっちゃう。」

「え、どこが笑う所だったんですの!アルフラウ、しっかりするのだわ!?」

 咳き込むアルフラウに、ドラクロワは慌ててアルフラウの背中を擦った。

「あ、うん。今日は調子が良いから大丈夫。お母様とお友達が一緒に遊べるようにお手伝いすればいいのね?」

「そうなんですの!そこで、あたくし、みんなに見つからないように、こっそり外に出られる鏡を用意しましたのよ!でも、その鏡はマナが沢山ないと使えないんですの!」

「マナかぁ。私がお手伝いすれば、お外に遊びに行けるのね。うん。お母様が喜んでくれるなら、手伝ってあげるよ。」

 アルフラウはドラクロワの髪をわしわしと撫でながら、笑顔で頷いた。

「ありがとうですの!私のお友達もとても喜ぶのだわ!アルフラウには鏡の近くに来て欲しいですの。その日が来たら、あたくしがアルフラウを案内するのだわ!」

 ドラクロワは本からぴょんと飛び下りると、アルフラウにお辞儀をした。

「うん、分かった。あのね、ドロクロワに私もお願いがあるの。」

「なんですの?アルフラウのお願いなら何でも聞いてあげちゃうのだわ!」

 アルフラウは笑顔で頷くと、座っていた本からゆっくりと降りて立ちあがった。

「あのね、私ね。妹か弟が欲しいの。だって、ドラクロワみたいにいつも話してくれる相手が居ないから。」


『……それは私に頼まれても無理だよ。』

 ドラクロワは素に返って言いそうになった言葉を飲み込むと、笑顔でその場を取り繕った。
 所詮、相手は子供。
 どう答えた所でドラクロワにはリクスは無いが、アルフラウの望む答えを口にした方が交渉はスムーズに進むだろう。

「分かりましたわ!アルフラウのお願いとあれば、受けない訳にはいかないのだわ!」

「うん、約束だよ。」

 アルフラウの言葉と共に、途轍もなく強力な魔力がドラクロワの身に降りかかるのを感じ、ドラクロワの身体は思わず強張った。

「こ、これは若しかして“ギアス”ですの?」

 恐る恐る尋ねるドラクロワに、アルフラウは変わらぬ笑顔でコクリと頷いた。

「うん、“約束”だよ。」

「わ、分かりましたのだわ。期待に添えるように善処しますのだわ……はっ!誰か来るのだわ!それでは、アルフラウ、御機嫌よう!」

 ドラクロワは踵を返して近くにあった鏡に向かって飛びこむと、鏡に溶けるように姿を消した。
 彼女と入れ替わるように扉がノックされ、フロストロードの一人がアルフラウの傍まで慌てて駈け寄った。

「ア、アルフラウ様!?今、魔法を使いませんでしたか!?急激にマナが発生した様なのですが!?」

 フロストロードの問いに、アルフラウはただ黙って笑顔を返した。






「―という事ですので約束の期日までの間、頑張ってアンネリーゼ様と子作りに励んでください。」

 ニフルハイムの屋敷から帰ったテーセウスは、おおよその経緯をヴォルフラムに報告した後、真面目な表情で彼に言った。

「え……君は何を言っているんだテーセウス。」

 あまりの唐突な話に、唖然とするヴォルフラム。

「私も子供との口約束で命の危険に晒されるとは思ってもみませんでした。嘘は良くありませんね。ふふふふふふ。」

「目が笑ってないよテーセウス……ああ、すまない。あの子が言霊師っていう特殊な魔法使いだと言う事を君は知っているのかと思っていたよ。まぁ、私のできる事ではあるし……努力はするよ。」

「はい、これから積極的に子作りに励んでください。頼みましたよヴォルフラム。」

「いや、必死なのは分かるが、何度も言わないでくれないか。分かったから、さ。」

 ヴォルフラムはテーセウスの顔を見るのも恥ずかしくなって、思わず目を逸らすしかなかった。
スポンサーサイト

● COMMENT ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://mementomorinomaigo.blog81.fc2.com/tb.php/141-16f0ff5f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

日記23日目 «  | BLOG TOP |  » 日記21日目

リンク

プロフィール

佐藤深雪

Author:佐藤深雪
いつから改装中だと錯覚していた?

なん だと…

アイコンは魔術商会さん(E№41)からいただきました。とても感謝なのです。

ノウァ
ファーヴニール
深雪

とことこ

最近の記事

カテゴリ

辺境地域(キャラのホーム世界設定) (4)
辺境黒歴史(ホーム世界の歴史) (3)
偽島2期日記 (25)
Fallen Island (2)
いただき物 (2)
オリフ (32)
ネヴァ (8)
カーズ (25)
偽島1期(TiA) (20)
カーズの日記 (1)
ティアの交換日記 (1)
おりふぃ (14)
偽島3、4期日記 (46)
六命表日記 (14)
六命裏日記 (9)
精霊日記 (19)

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。