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2018-12

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日記26日目

気まぐれに撒かれた種は

ながき歳月を経て、やっと芽吹いたようです

それは巡り巡る悲劇

終わらない負の連鎖

誰も知ることなく消えるはずだった世界は

消えることで その姿をあらわしました

終わりにある世界の果てで

始まりの生命が生まれました

気まぐれに撒かれた種は

ようやく蕾をつけたようです


奈落に咲く花の色は何色だろうか

血のような情熱の赤?

悪魔のような冷たき青?

神秘的な鈍き光の銀?

魅惑的な輝きの金?

まっさらな無垢なる白?

すべてを塗りつぶす黒?


その花が枯れるまで愛でようか

その花が散る前に摘んでしまおうか



―それとも



焦る事はない


その蕾はこれから咲くのだから



 
 ニフルハイムの街からさらに北、フロスト・ロードと呼ばれる魔導師たちの住む氷蒼の塔。
 その氷蒼の塔の冷たい冷気と石壁に囲まれた一室で佇む、立派な白髭をたくわえた老人が一人静かに誰かを待っていた。
 老人の名はプルクシュタール。フロスト・ロードの長にして、最強の魔導師である。
 
 暫くすると、部屋の一角にある魔法陣が淡い光を発し、一人の女性の影を映しだす。
 フロスト・ロードの一人アンネローゼは、魔法陣から一歩踏み出すと、静かに椅子に腰かける老人に深々と頭を垂れた。

「報告いたします……ヴォルフラム・ニフルハイムはアンネリーゼ様との出奔を企てているようです。」

「ふむ……それは真か。かねがね噂には聞いておったが、事実だとすれば厄介な事になったな。」

「左様でございますね。」

「しかし……事前に止めるのが最善ではあるが、証拠も無しにフレースヴェルグ様の従弟に手を出す訳にもいかん。」

 プルクシュタールの言葉に、アンネローゼはただ黙って頭を垂れたまま、次の言葉を待った。

「計画の現場を押さえるのが一番ではあるが、万が一にでも動転したヴォルフラムが、アンネリーゼ様を傷付ける事になってしまっては一大事だ。」

「左様でございますね。」

「……何かいい案はないか、アンネローゼ。」

 初老の魔導師の言葉に、アンネローゼは姿勢を正すと静かに言った。

「私に良い考えがございます……アンネリーゼ様の身代わりになって、私がヴォルフラムと接触しましょう。」

「……ほう?」

 プルクシュタールは片眉を上げると、アンネローゼの方をじっと見据えた。

「フレースヴェルグ伯やアンネリーゼ様に危害が無きよう、ヴォルフラム・ニフルハイムは私が責任を以て始末いたします。」

「なるほど……確かにお前が替え玉となれば、アンネリーゼ様の身には危害は及ばんな。」

 プルクシュタールは、髭をしごきながらアンネローゼを舐めるような視線で見詰めた。

「よし、ではお前の護衛にフロスト・ロードを何人か付けよう。」

 プルクシュタールの言葉に、アンネローゼは首を横に振った。

「いえ。どうせ私は、アンネリーゼ様の御為にある命。いつ散ろうとも惜しくはありません。裏では高位の悪魔が手を引いているとの噂もあるので、下手にヴォルフラムを刺激するのも危険でしょう。」

「しかし、それではなおさらお前だけに任す訳には……」

 プルクシュタールの言葉を制すように、金髪の魔女は歩み寄ると、紅の瞳でじっと老人の目を見詰めた。

「……私を信じて、ここはお任せ願えますか?」

 アンネローゼの言葉にプルクシュタールは暫く黙っていたが、やがて頷くと彼女に低い声で囁いた。

「何か考えがあるようじゃの。まぁ、良かろう。ただし、失敗は許されぬぞ。分かっておるな。」

「……はい。」

 アンネローゼがアンネリーゼ様と偽って、ヴォルフラムと接触していた事についてプルクシュタールは触れなかったが、恐らく彼の耳には噂話ぐらいは届いているだろう。
 だが、ヴォルフラムを自らの手で始末すると公言すれば、フロスト・ロードの体裁を傷つけずにアンネローゼもヴォルフラムも始末できる。
 さすが、プルクシュタール様は賢い選択をなされる。
 アンネローゼは、心の中で自虐的に嘲笑った

 フロスト・ロードの長であるプルクシュタールにまで嘘をつく事になるとは、あの舞踏会での出来事の時には思いもよらなかっただろう。
 積み重なった嘘の連鎖は、もう引き返せない場所まで来てしまっていた。
 ならば、往き着くところまで嘘をつき続けるしかないだろう。
 そう……自分自身を偽れるほどの嘘をつけば、なにも苦しくはない。
 あとは、彼とこの世界から消えればいいだけの話。
 アンネローゼの心はヴォルフラムと共に出奔する、ここでは無いどこかの世界への希望に満ち溢れていた。



「ここではない世界へ逃げる……ヴォルフラムと?」

 
 ―数日前
 ニフルハイムの街の郊外。
 いつもの通りアンネリーゼを装ってヴォルフラムと待ち合わせたアンネローゼは、彼が不思議な計画を口にする事について首を傾げた。

「ああ、その世界はたとえフロスト・ロードといえど、追う事の出来ない世界なんだ。そこなら二人だけで暮らす事ができる。」

「ヴォルフラム……そんな、お伽噺を誰が信じるというの?フロスト・ロードから逃げられる場所なんて、この世界の何処にもないのよ?」

 アンネローゼの言葉にヴォルフラムは頷き、静かに彼女を見詰めた。

「ああ、だから……“二人だけが住む事のできる世界”を創り出すんだ。それには膨大な魔力とちょっとした準備が必要だけど。」

 ヴォルフラムの真剣な眼差しに、アンネローゼは思わず息を飲んだ。

「ただの絵空事ではない……みたいね。分かったわ。もし、貴方と二人だけで住める世界があるのならば、私は喜んで貴方と共に行きましょう。」

「あは……信じてくれてよかった。大丈夫、私の祖母の友人が手を貸してくれるんだ。心配しないで、きっと上手くいく。」

 ヴォルフラムが向けた視線の先をアンネローゼが追うと、翡翠色の目をした長髪の男が微笑みながら、やや大袈裟に頭を垂れた。

「え、あなたのお婆さん……オリフィエル様の友人?それにしては彼、若すぎる気がするのだけど……」

 何か言い終える前に、アンネローゼの言葉は止まり、驚くようにヴォルフラムの方に向き直った。

「ヴォルフラム!あなた、まさか悪……」

 アンネローゼが叫ぼうとする口元に、ヴォルフラムは苦笑しながら指先を当てた。

「大丈夫、心配しないで……別に寿命を捧げたりはしていないから。確かに私の大事なものは捧げたけれど、それはこの世界から去ればすべて必要ないものだから。」

「……あなたを信じていいのね。ヴォルフラム。」

 アンネローゼの言葉に、ヴォルフラムは黙って頷いた。

「時と場所が決まったら、また連絡するから……それまでの我慢だよ。必ず君を、この世界の束縛から解放してみせる。」

 ヴォルフラムの言葉に、アンネローゼも静かに頷いて微笑んだ。
翡翠色の目をした男の目を憚らず、二人はじっと見つめ合うと熱き抱擁を交わした。

 嘘をつき続けているアンネローゼが、ヴォルフラムには真実を求める。
 鏡の悪魔はそんな滑稽なやり取りが愉快でならなかったが、表情は穏やかな微笑みを絶やさずに二人を見守っていた。
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