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2018-09

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日記28日目

かがみよ かがみ わたしはだあれ?


「リーゼお姉様……ど、どうして、此処に。」

 アンネローゼは声を震わせながら、唖然とした表情でアンネリーゼのほうを見た。

「どうして?って……ヴォルフラムが此処で待ち合わせをしましょう、って言うから。」

 口元に指を当てながら考え込んでいたアンネリーゼは、何か思いついたのかアンネローゼに笑顔を向けた。

「あ、分かった。ローゼもヴォルフラムにお呼ばれしたのね?」

 アンネローゼが言葉を返す前に、ヴォルフラムはアンネリーゼの元に駆け寄ると、冷たい視線でアンネローゼを睨みつけた。

「テーセウスが言うように、念のためにアンネリーゼに舞踏会で声を掛けておいて正解だったよ。昨日、郊外で会ったのはお前だったんだな……この贋物め。」

「ち、違う!私は贋物なんかじゃない!今まであなたと一緒だったのは私なのよ!ヴォルフラム、お願い!信じて!」

 アンネローゼはヴォルフラムの裾を引こうと手を伸ばした。
 が、ヴォルフラムはその手を撥ね退けるように振り払った。

「……いこう、アンネリーゼ。あまりモタモタしていると、誰かに気付かれる。」

 アンネリーゼは急かすヴォルフラムに手を引かれると、アンネローゼの方を心配そうに振り返りながら彼のあとを追った。

「大丈夫、ローゼ……今日のあなた、少し変よ?」

「どうして!?何故なの!?訳が分からない!」
 
 アンネローゼは、絶叫しながらアンネローゼの手を引くヴォルフラムを追い掛けた。
 アンネローゼの叫び声が遠くにも聞こえたのか、T字路の向こう側からもう一人誰かが近づいてくる足音が壁に反響した。
 
 足音はあっという間に大きくなり、金属の鎧のこすれ合う音が間近に聞こえてくるのを感じたヴォルフラムは通路の方を振り返った。
 絶叫しながら近づいてくるアンネローゼも気にはなったが、それよりもT字路より現れた巨大な男の姿にヴォルフラムは硬直した。

「フレースヴェルグ……だと?」

 ポールアックスを携えた甲冑の伯爵は、その鎧の重さを意に介する事もなく猛然とヴォルフラムの方へと駆け寄っていった。


「……やってくれたな。ヴォルフラム……そして、アンネリーゼ。」

 怒気を孕んだ低く響く声。
 フレースヴェルグの凍るような蒼い目がヴォルフラムとアンネリーゼを睨んだ。

「あ、え?……どうして怒っているの、フレイス?私は、ヴォルフラムにちょっと用事で呼ばれただけなのよ?」

 状況が把握できないアンネリーゼは、ヴォルフラムとフレースヴェルグの顔を交互に見ながら怪訝な顔をした。

「アンネリーゼ!何を言っているんだ!早く鏡の方へ!兄さんに捕まったら、何もかも終わってしまう!」

 戸惑うアンネリーゼの手を強く引きながら、ヴォルフラムは倉庫の扉を開け中へと駆け込んだ。
 倉庫の中には移送鏡が無造作に置かれていて、鏡の傍にはアンネリーゼの愛娘であるアルフラウと、見知らぬ幼女が立っていた。

「アルフラウ様……どうして此処に?」

 アンネリーゼが心配そうにアルフラウに尋ねると、アルフラウは紅い瞳を輝かせながら満面の笑みで答えた。


「私ね、リーゼお母様のお出かけのお手伝いをしに来たの。」
 
「テーセウスからの伝言ですの。準備は整ったのだわ、ヴォルフラム。さぁ、早く鏡の中へ入るのだわ。」

 翡翠色の目をした少女の言葉にヴォルフラムは頷くと、アンネリーゼを抱える様に抱き寄せようと手を引くが、その手をいつの間にか追いついたアンネローゼが掴んで遮った。

「邪魔をするな偽物!」

 ヴォルフラムの罵声に対して、さっきの動揺が嘘のようにアンネローゼは口元をつり上げて彼を見返した。

「うふふ、本当にあなたが愛していたのはアンネリーゼ?ヴォルフラム……もう一度チャンスをあげるわ。考え直しなさい。」

 ヴォルフラムの目の前で、突然アンネリーゼに抱きついたアンネローゼは、彼女ともつれ合いながら床に倒れ込んだ。
 慌てて、ヴォルフラムは倒れ込んだアンネリーゼに手を差し伸べたが、其処に倒れていた二人はまったく同じ衣装でまったく同じ姿のアンネリーゼとなっていた。

「……く、っ。よくもこんな気違えた事を。」

 ヴォルフラムが、アンネリーゼ達を覆う影気付いて上を見上げた時、フレースヴェルグの振り下ろしたポールアックスが彼の眼前に迫っていた。

「ヴォルフラム!あぶないのだわ!」

 翡翠色の目をした幼女に突き飛ばされたヴォルフラムは、ポールアックスの切っ先を逃れた。
 が、身代わりとなった幼女は、物凄い勢いですっ飛んでいった。

「この一発は、貸しにしておくのだわー!」

 絶叫しながら倉庫に置かれた装飾品や美術品の中へ飛び込んだ幼女は、陶器の割れる音と共に瓦礫の中へと消えていった。

「……ちぃ。」

 フレースヴェルグが舌打ちして瓦礫の方を見た瞬間。
 一瞬の隙を見逃さずにヴォルフラムは、アンネリーゼ二人の手を掴むと鏡の中に飛び込んだ。

「本物かどうかは後で確かめる!二人とも来るんだ!」

 思い通りの展開に、アンネリーゼの姿になったアンネローゼは思わず笑みを漏らした。
 落ち着いて過去にあったヴォルフラムとの出来事を話せば、自分がアンネリーゼであると偽る事ができる。
 リーゼお姉様が一緒になってしまった事は予想外だが、別にこちらの世界がどうなろうとも私の知った事ではない。

 ヴォルフラム後に続いた二人のアンネリーゼは、そのまま鏡の中に溶け込むかのように消えると思われたが、何かの衝撃と共に片方のアンネリーゼは鏡より弾き出された。

「え、どうして……」 

 尻もちをつき呆然とする残された方のアンネリーゼに、鏡の向こうから男の囁く声が聞こえてきた。



良かったですね。あなたの望む通り、あなたはアンネリーゼとなりました。


「な、何を言っているの……私は……」

 アンネローゼの言葉を待たずに鏡の声は淡々と話し続けた。



申し訳ございませんが、この鏡は二人用なのです。



「なにそれ、嫌……彼の居ない世界なんて考えられない……」

 彼女の消え入りそうな声に、鏡の向こうの声は優しく静かに囁いた。


大丈夫ですよ……ヴォルフラム・ニフルハイムの名はこの世界から抹消されました。



「なにそれ……嫌!そんなの嫌ぁあああああああ!」


 アンネローゼは泡沫のように消えてゆくヴォルヴラムの記憶に縋るように頭抱えて泣き叫んだ。

 
 泣き叫ぶうちに、失われたものが何だったのか。

 彼女はすでに、それが分からなくなってしまっていた。

 ―翌日。

「……アンネリーゼが失踪した。事が公になる前に、お前がフレースヴェルグの元に行け。」

 フロスト・ロードの最高指導者、プルクシュタールの命により、アンネローゼはアンネリーゼとしてニフルハイム領の伯爵夫人となった。
 フレースヴェルグ伯爵は、何年か寄り添ってきた筈のアンネリーゼ夫人の面影を知る様子もなく、入れ替わったアンネローゼをアンネリーゼと疑う事は無かった。
 アンネローゼもフロスト・ロードとして暮らすより、伯爵領での優雅な暮らしに満足し、理由は分からないが何処かへ失踪してしまった姉に心から感謝した。

 だが、長女のアルフラウには幾ら偽っても、アンネローゼおば様としか呼ばれなかった。

「アルフラウ様、私はアンネリーゼ。あなたのお母様なのよ?」

 アルフラウは彼女の言葉に笑顔で首を横に振り、必ずこう言った。

「いいえ。あなたの名前はアンネローゼ。でも、今は私のお母様なのよね。知っているわ。」

 アンネローゼはアルフラウの心を見透かしたような目を恐れ、次第に彼女を避けるようになっていった。


 

 ―数か月過ぎた頃。
 
 アンネローゼは子供を授かり、フレースヴェルグは後継ぎが生まれる事を喜んだ。
 
 生まれてきた子供の顔を目にした時、アンネローゼの背筋が凍るのを感じた。
 その子の片目はアンネローゼと同じ赤であったが、もう一つの目の色はニフルハイム家では見た事のない色……紫だった。

「アンネリーゼ様、お気を確かに……確かに変わった目の色ですけど、神様が悪戯なさったのかもしれませんわ。」

 動揺するアンネローゼを宥めるかのように、オッドアイの赤ん坊を抱いていた侍女は言った。

「え、ええ……そうね。大丈夫……ただ、フレイスが誤解をしなければ良いのだけど。」

 赤ん坊を侍女から受け取ると、アンネローゼはその紫の目に何か懐かしい誰かの面影が重なるのを感じた。

「この目の色……何か懐かしい。誰だったかしら。」

 消えかかった記憶の糸をアンネローゼが紡いでいくと、名も知らない成年の顔が不意に思い浮かんだ。
 
「名前がもう少しで出てきそうなんだけど……」

 何度も思い出そうとするが、大事な所でその名は浮かんでは消えるので、アンネローゼは思いだすを事を諦めた。

「そうだ、この子に名前をつけてあげましょう。この子の名は、そうね……オリフラムなんてどうかしら。」

「良いお名前ですね。フレースヴェルグ様もきっとお気に召されると思います。」

 侍女の言葉に頷き、アンネローゼは泣きじゃくるオリフラムを優しく撫でた。

「そう、あなたの名はオリフラム……愛しき人、ヴォルフラムの……」

「アンネリーゼ様?今、何と仰ったのです?」

 侍女が怪訝な顔で彼女のほうを見ると、アンネローゼの表情は血の気が抜けたように真っ青になった。

「え、なにこれ……酷い夢ね。本当に悪夢だわ。」

 アンネローゼは自虐的に笑うとオリフラムに向かって、近くにあったフォークを手に取り突き立てようとした。
 侍女達が狂ったように暴れるアンネローゼを抑え込み、フレースヴェルグが連絡を受け彼女の部屋に到着した頃。

 髪の毛を振り乱して錯乱したアンネローゼの、美しかった容貌は見る影もなく、その姿はまるで老婆のようであった。
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