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2018-11

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日記41日目

「……どういう事なの。」

 それは、いつも通りの朝の筈だったが、そうではなかった。
 目が覚めてふと鏡を見ると、そこに映ったのは私とは違う人だった。
 いや、正確に言えばまったく違う訳ではなく、髪の色や目の色が私と異なる私と同じ容姿をした人物がそこには映っていた。
 私はその人を知っていた。バレットさん達と一緒に行動している私の姿に似た少女―

「私がオリフィアさん……って、そんな馬鹿な。」

 もしかしたら、まだ寝ぼけているのかもしれない。
 念のために頬を抓ってみると、鏡に映ったオリフィアさんも頬を抓った。
 少し曖昧だが、自分が痛みを感じたので、残念ながら夢ではないらしい。
 とりあえず、鏡の子のフィーを呼びだしてみようと目の前の鏡に手をかざしてみたが、鏡には何の反応もなかった。

「……どういう事なの。」

 私が鏡を操る力を失ったのか、本当にオリフィアさんになってしまったのか状況が把握できない。
 今日に限ってキルノさんは見当たらないし、オリフお姉様は藤花さんのテントへ遊びに行くとの書き置きがテーブルにあり、既に居なかった。
 オリフィアさんの所へ行ったら何か分かるかもしれないと考えたが、雪火さんに会った時にどう状況を説明していいのか分からない。
 テーセウスの所へ行ったとしても、この姿を他の人に見られたらオリフィアさんに変な噂が立ってしまう。
 先ずはオリフお姉様に相談してみよう。いつもの魔女服に外見を隠すため外套を纏った私は、藤花さんのテントに行ってみる事にした。
 外はいつも通りの暑さだったが、外套を脱ぐと人目に姿を見られてしまうので、全身が汗に濡れる感覚に気だるさを感じながらも、藤花さんのテントを目指して歩いた。
 
「こんにちは、藤花さん。あのオリフお姉様……オリフさん、其方にいらっしゃいますか?」

 テントのシート越しに中へ声を掛けると、返事と共に藤花さんがやってきた。

「はい、どなたですかって……おりふぃ?どうしてそんな格好してるの?」

「あの、私の姿を見て分からないかと思いますが……って、え。何で分かるんですか?」

 外套のフードを取って呆然とする私に、藤花さんも不思議そうな表情で首を傾げた。

「何で、って……そんな質問をする意味が分からないよ?オリフさんならもう帰っちゃったけど、すれ違わなかった?」

「え、だって私の姿がオリフィアさんになっていて、分からないと思ってましたから……オリフお姉様とはすれ違いませんでした。行き違い……かな。」

 私が俯いていると、藤花さんは私の肩を軽く揺すって心配そうな目で見詰めた。

「オリフィアさんは私も知っているけど、おりふぃはおりふぃでしょ?だいたい、姿も何も変わってないわよ?いったい、どうしちゃったの?」

「あ、え……変わってない、ですか?おかしいな……鏡を見た時にオリフィアさんになっていたから……」

 暑さを我慢していたせいか、頭がボーっとして今の状況の整理がうまくつかない。
 でも、自分の姿が変わってないという事には安堵して、私の緊張の糸が一瞬切れた。

「―▽○×……×▽□◎!?」
 
 藤花さんが何か言ってるように聞こえたが、目を開けているのに周りが次第に暗くなり、それは殆ど聞き取れなかった。
 身体の感覚も、糸の切れた人形のように自由が効かなくなり、あっという間に私の意識は完全に途切れてしまった。

 
 ―暗闇の中でおぼろげな声を聞いた。
 何時だったか、それとも夢の中なのか、どこかで聞いた事のある二人の声。

「ええ……壊れてしまっているの。身体は治すことはできるけど、心を直す事は私にも出来ないから。」

「それでも、命を諦めていないのなら可能性はあります。残った記憶の欠片を集めましょう。」

「分かりました、白羽の奇蹟を信じましょう。期待してますよ、ヲルン・シフェル。」

「信じるのはこの子が生きたいという気持です。再び心が宿るのを信じましょう。」

 蜃気楼のように映る二人の影は、私に慈しみの目を向けていたように感じる。
 何かが私の額にそっと触れるような指の感覚。
 まだ意識がはっきりしないが、私の傍に誰かがいるらしい。

「……テス。」

 無意識にテーセウスの愛称を呟いた私が目を開けると、なぜか蓮さんが私のおでこに触れて苦笑いをしていた。

「良かった……意識が戻ったみたいだね。でも、まだ動かない方がいいよ?熱が抜けるまで安静にしていないと。」

「あ、え……レン、さん?あの……私、どうしちゃったんですか?」

 周りを見回すと、私は布団を敷いて寝かされているらしく、近くでは藤花さんが水枕をせっせと作っているのが見えた。

「あはは、テーセウスさんじゃなくてゴメン。藤花に聞いたけど、この暑い中で厚着をしてやって来たんだってね。おりふぃの身体の熱が抜けなくなって、危ない所だったんだよ。」
 
 蓮さんの方の見詰めた私の傍に、氷枕を作り終えた藤花さんがやってきて、私の頭を少し上げるとタオルを巻いた水枕を敷いてくれた。
 冷たい感覚がとても気持ち良くて、思わず吐息が漏れた。

「びっくりしちゃったよ。おりふぃが急に倒れて、身体に触ったら熱いんだもの。急いで蓮を呼んで診てもらったんだよ。あ、寝間着への着替えは私がやったから安心してね。オリフィの服は洗濯して、今乾かしてる所。」

「そうだったんですか……確かに、意識が飛んじゃったかもしれません。」

 額に手を当てて、あの時の状況を思い出そうとしたが、意識が急に途切れてしまっていたので思い出す事は出来なかった。

「おりふぃは寒い地方からやって来たんだから、この暑さにまだ身体も慣れていないんだよ。体調が悪いのも重なったようだけど、塩分と水分は十分に摂って気分が悪くなったらすぐ涼しい所で休むようにね。」

 蓮さんは、冷たい水で絞ったタオルを私の額に乗っけると、優しく微笑んだ。

「あ、はい。すみません。レンさんとトウカさんにご迷惑をかけてしまって。」

 意識ははっきりしてきたが、まだ思う様に身体が動かせないので、私は軽く頭を下げるだけで二人に礼をした。

「こういう時に頼ってもらうのは嬉しいことだよ。おりふぃを診る事も出来たし、医者の本分を果たせたって感じかな。」

 蓮さんの毅然とした態度に、色々診られた事を恥ずかしく思う自分に恥ずかしくなって、私は少しだけ布団をあげて表情を隠した。

「大丈夫だよっ。おりふぃはかわいい妹分なんだから。でも、無茶はしないでね。オリフさんには私が連絡しておくから、今日はゆっくり休みなさい。」
 
 藤花さんに頭を撫でられ、私は静かにまた目を閉じた。

「あ、はい。ありがとうございます……お言葉に甘えて少し休みますね。」
 
 結局朝の出来事は何だったのだろう。
 そんな疑問を抱きつつも、二人の笑顔に見守られながら、私はまた深い眠りに落ちていった。



「ちょっとした悪戯だったのに……あの子帰って来ないわね。」
 
 リリから買った真実を写さない鏡に映る、どう見ても犬のような姿の自分を鏡の子、フィーは興味深そうに覗きこみながらそう呟いた。
 そもそも、本来自分が出ている時に鏡の姿に映らない筈のおりふぃが、鏡に映る事に疑問を持てばちょっとした悪戯で済んだ筈なのに、おりふぃは真に受けてしまったようだ。

「少しは疑えばいいのに……仕方ない、私がおりふぃの代わりに出掛けるとしましょうか。」

 フィーは溜息をつきながら支度を整えると、パーティの居る合流場所を目指してテントを立った。

「……これは自業自得ってやつなのかしら。」

 フィーの呟きは風の中にかき消えて、誰の耳にも届く事はなかった。
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