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2018-09

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日記43日目

 今日はヒスカの15歳の誕生日。
 あらかじめ誕生パーティの招待状を受け取っていた私は、一緒に呼ばれる事になっているフィーとオリフお姉様の協力を得て、お菓子とデザートを用意した。
 ヒスカ用のプレゼントも夜なべして、ヒスカに喜んでもらえそうなものをフィーと相談しながらお揃いで作った。
 親友であるヒスカの誕生日を、みんなでお祝いできる事が楽しみだったが、私にはもう1つのイベントが待っていた。
 それは、私の彼氏であるテーセウスを、友達に正式に紹介する事。
 みんなにお付き合いしている事を隠していた訳ではないが、公には悪魔と魔女の関係。
 表沙汰にしてしまうと、テーセウスがこの島で暮らすのに居心地が悪くなってしまうのではないかという懸念が、みんなに彼を紹介しそびれていた原因だった。
 そんな私の想いは杞憂だったようで、テーセウスを思いきって誕生パーティにお誘いしたところ、彼は快く承諾してくれた。
 胸の閊えがおりたようで、私もヒスカの誕生パーティが待ち遠しい日々を過ごした。
 
 会場はヒスカの為に、紫と赤のオッドアイを持つセラフィードさんと、その旦那さんのジーナさんが用意してくれた。
 誕生パーティは、スーツ姿のバレットさんが、可愛いドレスを着たヒスカの横に立ち司会をつとめた。
 開始と同時に盛大な紙吹雪が舞ったと思ったら、シャルロッテちゃんの相方、縫い包みのリーゼロッテちゃんから吐き出されたものだと知って、二重の意味で驚いた。
会場の料理は蓮さんや、アランさん、あまり料理には慣れていない筈の雪火さんも裏方に回って準備をしてくれていた。
 ヒスカの呼んだ知り合いは私が大体見知った顔だったが、紫の緩やかな巻き毛に同じ色の目をしたイソトマさんや、セラフィードさん等、初めてお会いする人も多く、人混みに慣れない私には少々居心地が良くなかった。
 ただ、テーセウスが傍にいてくれたおかげで、緊張感はだいぶ和らぎ、いつしか彼女達とも軽く挨拶を交わす程度にまで落ち着きを取り戻していた。
 
 和やかな会食の中、主賓のヒスカには様々なプレゼントが贈られ、中には変わったものや不思議なものあったが、驚いたのはエクが贈った「バレットさんを自由にできる券」だった。
 その券が本当に効力を発揮するのかは、今後のバレットさんとヒスカの関係次第だろう。
 後日、ちゃんと有効にその券が使えたのか、ヒスカに聞いてみようと思った。
 私とフィーも、夜なべして作った白と茶色のクマの縫い包みをヒスカにプレゼントした。
 レーレさんもエクから招待を受けていたようで、エクと自らを模したクマの抱き枕をプレゼントしたのを見た時、あまりの大胆な自己アピールに度肝を抜かれた。
 テーセウスは、ウォーリーボックスという願いを叶える人形の入った箱を、ヒスカにプレゼントしていた。
 ウォーリーボックスは私も初めて見るものだったが、綺麗な箱に入った三体の人形が、何となく私とヒスカとエクを彷彿させて微笑ましく思った。
 プレゼントの贈呈が終わった後は、美味しい料理や飲み物を囲みながら皆で歓談した。
 テーセウスはテーブルに出されたお菓子を気に入ってくれたようで、クッキーやスコーンを喜んで食べてくれた。

「このお菓子はとても美味しいですね。日頃口にしているオリフィエルの手作りのものと同じ味がします。」
と彼が言うので、私は頬を赤らめるのを手で隠しながらテーセウスに説明をした。

「あ、はい。ありがとうございます。このお菓子は私とフィーで作りました。そのように褒められますと、なんだか自慢をして頂いているようで恥ずかしいですね……あはー。」
 
 私の様子を見ていたフィーは、やや呆れるような目線をテーセウスと私に向けながら、手に持ったワイングラスを煽って空にした。

「いっその事……毒リンゴパイでも作ればよかったかしら。」
「あ、ちょ、なんて事言うの!?冗談でも、そんな事は言わないで!」

 私の抗議にフィーは、ヤレヤレといった表情で首を横に振った。

「そういう名前のお菓子よ。本当の毒なんて仕込んだら大変な事になるでしょう?まぁ、少なくとも私は、貴方とテーセウスさんの毒に中てられた気がするけど。」

 そんなやり取りをしていると、いつの間にかヒスカやエクや蓮さん達が私の所へと集まって来た。

「おりふぃ!来てくれてありがとう!あ、隣にいる人がもしかして……おりふぃの彼氏さん!?」
 
 ヒスカが目を輝かせながら、私とテーセウスを交互に熱心に見詰めるので、私は恥ずかしくなって、はにかみながら頷いた。

「あ、うん。紹介するね。私の隣に居る人がテーセウスさん……テスです。今、私はテスと真剣にお付き合いさせていいただいています。以後、良しなにお願いします。」

 私がみんなにお辞儀をすると、テーセウスも私に合わせて頭を下げた。

「申し遅れました。わたくし、この近くで贋作の芸術品を商売にしているものでございます。以後よしなに。」

 それから、ヒスカに質問攻めにあったり、どさくさに紛れてレーレさんに抱擁されたりしたが、パーティは和やかな雰囲気のまま恙無く終了した。
 パーティが終わり、バレットさん達と会場の片付けを手伝っていると、フィーが私に近寄ってきて耳元に囁いてきた。

「おりふぃ。片付けが済んだら、ちょっと付き合って欲しいの……二人だけで話したい事があるから。」

 フィートとはいつも一緒なのに、わざわざ二人だけで話したいという事に、何か疑問を感じたが、私は頷いて片付けを続けた。

「あ、うん。分かった……片付けが終わったら、一緒に帰るね。出口で待ち合わせでいいかな?」
「ええ、いいわ。私も向こうの片付けを済ましてくる。それじゃ……待ってるわ。」
 
 会場の片付けもあらかた終わり、会場の出口へ向かうと、黒魔女姿のフィーが壁を背にして寄りかかりながら私を待っていた。

「待たせてごめんね。それじゃ、帰ろうか……お話したい事って、何かな?」
「ええ、大丈夫よ。ちょっと、他の人に聞かれると困るから……もう少し歩いてから、話しましょうか。」

 フィーはそう言うと、私の手を取って歩き始めた。  歩きながら暫くは、フィーと今日の誕生パーティの感想を話し合っていたが、帰り道の森の中でフィーは突然話を切って立ち止まり、私の方をじっと見詰めた。

「そろそろ、いいかしら……って、私もこの口調に慣れてしまって困るわね。まぁいいわ……おりふぃ。お父様とお母様の所在が分かったわ。」

 思い掛けない言葉に、私は一瞬きょとんとしてしまったが、私は興奮を抑えきれずにフィーに尋ねた。

「え?お父様とお母様は無事だったの?あれからどうなってしまったのか不安だったから……詳しく教えて、ふぃー。」
 
 フィーは私の言葉に頷くと、やや勿体ぶった表情でゆっくりと話しはじめた。

「ええ、無事よ……一応、はね。お父様とお母様達に会って、お話をしてきたわ。私をおりふぃだと思って、凄く喜んでた。」
「よかった……でも、一応って?フィーは私が元気だって、お父様とお母様に伝えてくれた?お父様達はどこに居るの?ああ……早く会いたいな。」

 お父様達の無事が伝えられたことに安堵した私は、嬉しくなって自然に笑みがこぼれていった。

「ああ……貴方の事は話の成り行きで少し伝えたわ。あの二人は、よく理解していなかったようだけども。あと、貴方がお父様達に会う事はできないわ……残念だけど。」

 澄ました顔で答えるフィーに、何となく違和感を抱きながらも私は彼女に尋ねた。

「え、ちゃんと伝えてくれなかったの?酷いよ……それに、どうして私は会う事ができないの?フィーはちゃんと会えたんだよね?」

 私の質問に、フィーの口元が少しつり上がる。
 彼女は私の顔を覗き込むように近付くと、囁くように言った。

「私が貴方の事を知る必要なんてないと思ったからよ……あと、貴方がお父様達に会っても意味がないから、教える必要はないの。どうしても会いたかったら……」
 
 フィーはいつの間にか笑顔の引いてしまった私の顔を見て、満足そうに微笑んだ。

「テーセウスさんに相談してみたらどう?私のお父様とお母様はどこに居るんですか?って……ね。」
 明らかにいつもと違うフィーの態度に、私は思わず後ずさった。
「……どうしてそんな意地悪するの?それに、テーセウスさんに聞くって……どういう事?急にそんな事言われても、混乱して……よく分からないよ。」
「確かにそうね……貴方のいう事は一理あるわ。じゃあ、一つ一つ解決していきましょうか。私の中では話が纏まっているから、横着してしまったわ。」

 フィーは一瞬苦笑すると、また澄ました顔に戻って話を続けた。

「先ずは、お父様とお母様の事。さっきも言った通り、確かに無事よ。でも、すぐに会える場所には居ないわ。万華鏡の中に閉じ込められているから。」
「万華鏡?どうして、そんな物の中に?お父様達はあの鏡の世界で行方不明になったんじゃ……」
「ええ、そうね。鏡の世界の結界が壊れて、あの世界に住めなくなったのよね。だから、テーセウスさんが結界の欠片を集めて、お父様達が死なないように措置してくれたみたい。」
「あ、えっ。そんな事初めて聞いたよ……それに、どうしてテスがお父様達と関わったりするの?」

 話の展開が急激過ぎて、私の頭の中は既に飽和状態となっていた。

「ああ、まずそこから始めないといけないのね……本当に何も知らないのね。貴方って。」

 フィー溜息をつくと、横に首を振った。

「お父様達がこの世界から鏡の世界へ亡命した頃から、テーセウスさんとは知り合いだったみたい。鏡に纏わる出来事なのだから、彼がお父様達に協力していたのも、おかしくはない話でしょう?」
「え、そうだったの……テスは私と初めて会った訳じゃ無かったって、事?」
「さぁ?でも、私もテーセウスさんと直接会った記憶はないから、初めて会った事は事実かもしれないわね。私の存在を知っていたようだけど。」

 フィーの“私”という言葉の使い方が気にはなったが、おおよそは通じる事なので問いただす事はせずに、別の疑問を彼女にぶつけた。

「お父様達とテスが知り合いだったって事は分かったよ。でも、テスが私の事を知っていたって、誰から聞いたの?」
「それは、お父様の話から推測した事よ。鏡の世界の結界が壊れるのは、私が生まれたからだって、テーセウスさんがお父様に伝えたらしいの。」

 淡々と語るフィーの話に、私は言葉を失った。
 それが事実であれば、私がこの島の探索で求めていた“鏡の世界が崩壊した理由”を知る事となる……即ち、それは―

「あ、え!?どうして私、なの?フィーの言ってる意味が……」

『よく解らないわ』

 私の言葉に合わせるようにフィーがそう言った。
 彼女の言葉にデジャヴを感じて、言いようもない不安感に駆られる。
 身体が震えはじめ、急に周りの空気が寒くなったように感じた。

「面白いわね。ちゃんと自分で言った事は貴方も覚えているじゃない。きっと忘れた“振り”をしていたのね。まぁ、いいわ……続けましょうか。」
「違う……本当に覚えていないの……思い出そうとすると、頭の中が真っ白になって……」

 私の言葉を無視して、フィーは話を続けた。

「あの鏡の世界は文字通り、二人だけが住む事のできる世界だったそうよ。移送鏡が結界を形成した時に、もうそれは決まっていたの。それなのに、契約を良いように解釈してしまったお父様達がそれを破った。」
「……フィー、お願い話を聞いて……。」
「テスは私が生まれた時に。お父様達に、その子が大人になるまでに決断をしないと、結界が完全に崩壊してしまうと告げたそうよ。」

「もう、分かったから、いいよ……それ以上……言わないで。」

「……あらそう?貴方は決断って何のことなのか理解しているの?知らないでしょう……教えてあげるわ。」

「もうやめて……お願い……フィー……」

 耳を塞いで屈み込む私の手を、フィーは強く掴むと無理やり私の事を立ちあがらせた。

「まだ終わっていないわ……最後まで聞きなさい。」

 フィーに睨まれ、泣きたいぐらい恐くて哀しいのに、涙は出てこなかった。
 ただ、やるせない気持ちを溜めこんだまま、フィーを見詰める事しか私にはできなかった。

「……お父様とお母様は私を殺そうとしたのよ。自分達の保身のために。」
「嘘……だって、お父様とお母様は……あの時、私を助けて……」

 フィーは私の両手を握った手を振り払うと、私の胸座を掴んだ。

「違うわ、貴方は現実から目を逸らしているだけよ。私の記憶にはお母様に殺されそうになった記憶と、傷の痛みが今でも鮮明に残っているわ。」

「そんな……どうして、今までフィーは、それを言ってくれなかったの?おかしいよ……」

 フィーは私の胸座を掴んでいた手を、突き飛ばす様に離した。
 私は体勢を崩して転んでしまったが、フィーはそれを凍るような冷たい瞳で見降ろしていた。

「それはね。私が私を誰なのか、知らなかったからよ。私の記憶にあった出来事は、夢だと勘違いしていた。」
「え……フィーはフィーでしょ?何を……言っているの?」
「……そうね。私も貴方の分身だって思ってた。でもお父様達の話を聞いて確信したの。私の記憶が正しくて、貴方の記憶が贋物だって。」

「え、それは……どういう事、なの?」

 私の言葉にフィーは口元をつり上げ、とても楽しそうな目をしながら言い放った。

「私がオリフィエル・ニフルハイムだって事。貴方は真実に耐えられなくて、あの鏡に自分を置いてきてしまったのね。」
 
見降ろすフィーと見上げるおりふぃ

 喉が張り付いて言葉が出なかった。
 立ち上がろうと腕に力を入れようとしても、身体と魂が離れたようにいう事を利かなかった。

「……貴方がお父様に会う必要はないって、流石に理解できたかしら?」

 フィーは倒れ込んだままの私の前にしゃがみ込んで、私の頬に静かに触れた。

「で、私からも質問なのだけど……貴方は誰なの“贋物の”おりふぃさん?」
「あ、だって……私は……私は……」

 私の答えを待つまでも無く、フィーはそのまま私に静かに言った。

「貴方が誰であろうと……別にどうでもいいわ。それより。」

 フィーは視線を逸らす私の顎を手で上げると、私の目を覗き込んで微笑んだ。

「私の身体、返してくれないかしら?」
「え、そんな……事、むり……」

 私の言葉を遮るように、フィーは私の口元に人差し指を当てた。

「手段は私が用意してあるわ。安心して。でも……すぐにお別れじゃ、おりふぃを知ってる人達が混乱するだろうから、少しだけ時間をあげる。」

「お別れって……そんな……」

「そうね……一週間の猶予をあげるわ。今日が一日目。七日後までには、みんなにお別れを済ませておきなさい。」

 私が何か話そうとすると、フィーはまた私の口元を抑えて静かに見詰めた。

「……私って優しいわよね。そう思わない、贋物さん?」

「そんな、急に……言われても私……フィー……私……」

 フィーに言葉を紡ごうとしても、頭の中の歯車が空転するように、一つの言葉にならない。

「安心してね?それまでは貴方の分身を演じてあげるわ……それじゃ、先に帰るわ。自殺なんか、考えちゃだめよ?大事な私の身体なんだから。」

 フィーは私の頭を静かに撫でると、私を置き去りにして森の奥へと消えていった。
 置き去りにされた私は、何もかも考えたくなくなって、震えながら目を閉じた。
 
 ―これは悪夢で、夢なら早く覚めますように。
 そんな淡い期待を裏切るように、目を覚ましても私は暗い森の中にただ一人残されていた。

 涙は出なかったが、自分の身体を抱きながら、私は赤ん坊のように啜り泣いた。
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