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日記45日目
あきらめる事はいつでもできるから、前を向いて生きていこう。
「遅かったじゃないか。あれから何してたんだ?」
ヒスカの誕生パーティのあと、深夜にテントに帰った私は、先に帰っていたオリフお姉様からお叱りを受けた。
「……ごめんなさい。少し道に迷ってしまって。」
咄嗟についた嘘がばれてしまうのではないかと心配して、私は頭を下げたあとオリフお姉様の顔色を窺った。
「はは、おりふぃらしいや。フィーと一緒に帰ってくれば迷わないで済んだのに。」
日頃の行いのお蔭か、オリフお姉様に嘘がばれなかった事にホッとした半面、自分らしいと言われた事にちょっと落ち込んだ。
「……って、服も泥だらけじゃないか。直ぐにお湯沸かしてあげるから、湯浴みしてから寝なよ。」
オリフお姉様に手間をかけさせる事に気が引けたのと、今日はもう直ぐにでも床に就きたい気分だったので、私はその申し出を断る事にした。
「あ、いえ……大丈夫です。着替えれば済みますし、タオルで拭けば綺麗になっ……うひぁ!?」
私が少し顔を伏せている隙に、オリフお姉様は私の着ていた服を一瞬にしてひん剥いた。
一瞬何が起こってるのか分からなくて、自分の身体を触ってみると既に私は裸になっていた。
これは確か噂に聞いた事のある、ザンさんが得意とする必殺技……“脱がす”
「オリフお姉様!?な、なにを!?」
オリフお姉様は奪い去った服を、あっという間に折り畳んで洗濯篭にシュートした。
「ばっか。濡れた服着てたら風邪ひくだろ。お湯はさっき私が入ったばかりだから、まだ温かいはず。なんか疲れてるみたいだからさ、今日は特別に私が背中を流してあげよう。」
「え、いや、そうですけど……このままじゃ、帰って風邪を引くんで……うひぁ!?」
私を軽々と抱き抱えたオリフお姉様は、お湯の入った大きな桶の中に私を放りこんだ。
「温かったら、沸かしたお湯を足すから言うように。さて……そんじゃ、さっさと洗っちゃおうか。」
有無を言わさず頭からお湯を被せられると、タオルでごしごしと身体じゅうをこすられた。
「お湯加減はどうですか、お嬢様?」
楽しそうに私の背中こするお姉様に、私は振り向かずに軽くお辞儀をした。
「あ、はい。大丈夫です……あの、今日はその……ごめんなさい。」
「ん、怪我はないみたいで安心した。暗い顔してたから、穴に落ちたか人狩りにでも襲われたのかと思って、心配しちゃったよ。」
「あ、え……はい。心配かけてごめんなさい。怪我とかは……大丈夫です。」
心を見透かされたような気がして、恥ずかしくなった私は、オリフお姉様の顔をまともに見る事ができなかった。
「ん、いや。なんつうか……ほんと、おりふぃは隠し事ができないのな。大丈夫って、大丈夫じゃないだろ?何があったんさ。誰にも言わないから、言ってごらん?」
「……あ、えっと……その。」
オリフお姉様に何処まで話していいのだろうか。
フィーが本当のオリフィエル・ニフルハイムであり、私が贋物かもしれないという事。
そんな話をしてしまったら、私の事をオリフお姉様がどう思うのか不安で仕方がなかった。
「んー、おりふぃから話を聞くのに、この調子じゃ湯冷めしちゃいそうだな。とりあえずお風呂あがってから話を聞くよ。それまでに、話す事を纏めておきなよね。」
「あ、はい。あの……お姉様。」
「ん、なに?」
「ご心配おかけしてすみません……あと、ありがとうございます。」
オリフお姉様は短く「うん」と頷き私の頭を軽くポンとたたくと、私の着替えとタオルを取りに立ち上がった。
湯浴みを終えて寝間着に着替えたあと、普段は少し離れて敷いている布団をオリフお姉様は私のすぐ隣に敷いて寝る準備を整えた。
私がランタンに覆いをすると、テントの中は適度な暗がりとなり辺りは静寂に包まれた。
「さって、さっきの話の続き、聞かせてもらおうかなー。」
オリフお姉様は、私の方に寝転がりながら近づいてくると、私の顔を覗き込んだ。
「あ、はい。そういえば……フィーが居ないみたいですけど?」
「ん?だいぶ前に帰ってきて、鏡の中に入っちゃったけど?どうかした?」
「あ、いえ。帰ってきてるなら良かったです。途中で別れちゃったので。」
「……フィーとなんかあった?」
私が驚いた顔をすると、オリフお姉様はやや呆れるような表情で失笑した。
「いや、ほんと分かりやすいわ。ま、多分喧嘩したんだろうけど、言ってみなよ。私がアドバイスしてあげられる事もあるだろうからさ。」
何処まで説明しようか迷った私だったが、嘘をついても表情に出てしまうのなら隠し事をしても仕方がないと思い、一部始終をお姉様にお話する事にした。
まず、私の旅の目的である鏡の世界の崩壊した理由が分かった事。
そして、その原因が私にあった事。
さらに、鏡の世界から助け出された時に、鏡の中にオリフィエルさんの心が閉じ込められてしまった事を話した。
「い、いきなりクライマックスすぎて……これは、何処から突っ込めばいいんだ?」
オリフお姉様は私の話を聞くと、頭を掻きながら何か思いあぐねているようだった。
「だから……フィーが本当のオリフィさんで、私は贋物だって言われてしまいました。でも、多分本当だと思います。」
こみ上げてくる切なさに息が詰まりそうだったが、確り説明をしないとオリフお姉様に伝わらないので、呼吸を整えて落ち着きを取り戻すように努めた。
「フィーが本当の妹……まぁ、確かに私に似てるとこはあるけど、あっちが本物って急に言われてもなぁ。」
「それで、フィーに身体を返せって言われました。期限はあと一週間……もう今日が過ぎてしまったから六日ですね。」
「返せって……どうやって、そんなの返すのさ?フィーがおりふぃの身体に乗り移ったりするの?」
「あ、いえ……詳しい事は分かりません。でも、そういう手段はあるって、フィーは言ってました。」
「むー。予想してた展開と違いすぎるぞー……フィーが何かやらかすと思ってたけど、これはないわー」
ゴロゴロと布団を転がりながら頭を抱え込んでいたオリフお姉様は、大きく息を吐くと私の方へまた近寄って来た。
「それで、おりふぃはどうするつもり?フィーの言う通りにするの?」
オリフお姉様の問いに私は首を横に振った。
「すみません……まだ、決めてません。オリフお姉様に申し訳ないと思いますけど……私も心の整理がまだつきません。」
俯いている私の頭をオリフお姉様は静かに撫でた。
「んー、いや。おりふぃが妹じゃないとしても、こうやって妹のように接してきたからさ。直ぐに気持ちの切り替えは私にもできないよ。」
私は胸がいっぱいで何も答える事ができず、ただオリフお姉様のほうを見るのが精いっぱいだった。
「私はおりふぃとフィーがどんな選択をしたとしても、その結果を受け入れるよ。だから、おりふぃも私に申し訳ないとか思わなくていい。自分の事を考えなさい。」
「……オリフお姉様。」
「あはは、私もずるいよね。選択をしないって選択をしちゃうんだからさ。でも、私がおりふぃとフィーに介入すると、余計哀しい事になると思うんだ。」
「……。」
「どちらも大事だから、どちらにも手を貸さない。分かってくれるかな?」
「……はい。ありがとうございます。」
「あー……そんな子犬のような目で私を見ないように。なんか可愛くて抱きしめたくなっちゃうじゃないか。」
と、言ったそばからオリフお姉様は、私をまるで縫い包みを抱くかのように強く抱きしめた。
「お、お姉様……苦しい……息が。」
「ん、いい抱き枕だ。今日は良く寝られそう。おやすみ、おりふぃ。」
そう言ってオリフお姉様は私の頬にキスをすると、わたしを抱きしめたまま、あっという間に寝息を立てて寝てしまった。
少し身動きの取れないぎこちなさを感じながらも、オリフお姉様の温もりに、行き場のなかった感情が少しずつ和らいでいくような気がした。
手を伸ばしてランタンの灯りを何とか消すと、張り詰めていた糸が切れるかのように私は深い眠りに誘われた。
「遅かったじゃないか。あれから何してたんだ?」
ヒスカの誕生パーティのあと、深夜にテントに帰った私は、先に帰っていたオリフお姉様からお叱りを受けた。
「……ごめんなさい。少し道に迷ってしまって。」
咄嗟についた嘘がばれてしまうのではないかと心配して、私は頭を下げたあとオリフお姉様の顔色を窺った。
「はは、おりふぃらしいや。フィーと一緒に帰ってくれば迷わないで済んだのに。」
日頃の行いのお蔭か、オリフお姉様に嘘がばれなかった事にホッとした半面、自分らしいと言われた事にちょっと落ち込んだ。
「……って、服も泥だらけじゃないか。直ぐにお湯沸かしてあげるから、湯浴みしてから寝なよ。」
オリフお姉様に手間をかけさせる事に気が引けたのと、今日はもう直ぐにでも床に就きたい気分だったので、私はその申し出を断る事にした。
「あ、いえ……大丈夫です。着替えれば済みますし、タオルで拭けば綺麗になっ……うひぁ!?」
私が少し顔を伏せている隙に、オリフお姉様は私の着ていた服を一瞬にしてひん剥いた。
一瞬何が起こってるのか分からなくて、自分の身体を触ってみると既に私は裸になっていた。
これは確か噂に聞いた事のある、ザンさんが得意とする必殺技……“脱がす”
「オリフお姉様!?な、なにを!?」
オリフお姉様は奪い去った服を、あっという間に折り畳んで洗濯篭にシュートした。
「ばっか。濡れた服着てたら風邪ひくだろ。お湯はさっき私が入ったばかりだから、まだ温かいはず。なんか疲れてるみたいだからさ、今日は特別に私が背中を流してあげよう。」
「え、いや、そうですけど……このままじゃ、帰って風邪を引くんで……うひぁ!?」
私を軽々と抱き抱えたオリフお姉様は、お湯の入った大きな桶の中に私を放りこんだ。
「温かったら、沸かしたお湯を足すから言うように。さて……そんじゃ、さっさと洗っちゃおうか。」
有無を言わさず頭からお湯を被せられると、タオルでごしごしと身体じゅうをこすられた。
「お湯加減はどうですか、お嬢様?」
楽しそうに私の背中こするお姉様に、私は振り向かずに軽くお辞儀をした。
「あ、はい。大丈夫です……あの、今日はその……ごめんなさい。」
「ん、怪我はないみたいで安心した。暗い顔してたから、穴に落ちたか人狩りにでも襲われたのかと思って、心配しちゃったよ。」
「あ、え……はい。心配かけてごめんなさい。怪我とかは……大丈夫です。」
心を見透かされたような気がして、恥ずかしくなった私は、オリフお姉様の顔をまともに見る事ができなかった。
「ん、いや。なんつうか……ほんと、おりふぃは隠し事ができないのな。大丈夫って、大丈夫じゃないだろ?何があったんさ。誰にも言わないから、言ってごらん?」
「……あ、えっと……その。」
オリフお姉様に何処まで話していいのだろうか。
フィーが本当のオリフィエル・ニフルハイムであり、私が贋物かもしれないという事。
そんな話をしてしまったら、私の事をオリフお姉様がどう思うのか不安で仕方がなかった。
「んー、おりふぃから話を聞くのに、この調子じゃ湯冷めしちゃいそうだな。とりあえずお風呂あがってから話を聞くよ。それまでに、話す事を纏めておきなよね。」
「あ、はい。あの……お姉様。」
「ん、なに?」
「ご心配おかけしてすみません……あと、ありがとうございます。」
オリフお姉様は短く「うん」と頷き私の頭を軽くポンとたたくと、私の着替えとタオルを取りに立ち上がった。
湯浴みを終えて寝間着に着替えたあと、普段は少し離れて敷いている布団をオリフお姉様は私のすぐ隣に敷いて寝る準備を整えた。
私がランタンに覆いをすると、テントの中は適度な暗がりとなり辺りは静寂に包まれた。
「さって、さっきの話の続き、聞かせてもらおうかなー。」
オリフお姉様は、私の方に寝転がりながら近づいてくると、私の顔を覗き込んだ。
「あ、はい。そういえば……フィーが居ないみたいですけど?」
「ん?だいぶ前に帰ってきて、鏡の中に入っちゃったけど?どうかした?」
「あ、いえ。帰ってきてるなら良かったです。途中で別れちゃったので。」
「……フィーとなんかあった?」
私が驚いた顔をすると、オリフお姉様はやや呆れるような表情で失笑した。
「いや、ほんと分かりやすいわ。ま、多分喧嘩したんだろうけど、言ってみなよ。私がアドバイスしてあげられる事もあるだろうからさ。」
何処まで説明しようか迷った私だったが、嘘をついても表情に出てしまうのなら隠し事をしても仕方がないと思い、一部始終をお姉様にお話する事にした。
まず、私の旅の目的である鏡の世界の崩壊した理由が分かった事。
そして、その原因が私にあった事。
さらに、鏡の世界から助け出された時に、鏡の中にオリフィエルさんの心が閉じ込められてしまった事を話した。
「い、いきなりクライマックスすぎて……これは、何処から突っ込めばいいんだ?」
オリフお姉様は私の話を聞くと、頭を掻きながら何か思いあぐねているようだった。
「だから……フィーが本当のオリフィさんで、私は贋物だって言われてしまいました。でも、多分本当だと思います。」
こみ上げてくる切なさに息が詰まりそうだったが、確り説明をしないとオリフお姉様に伝わらないので、呼吸を整えて落ち着きを取り戻すように努めた。
「フィーが本当の妹……まぁ、確かに私に似てるとこはあるけど、あっちが本物って急に言われてもなぁ。」
「それで、フィーに身体を返せって言われました。期限はあと一週間……もう今日が過ぎてしまったから六日ですね。」
「返せって……どうやって、そんなの返すのさ?フィーがおりふぃの身体に乗り移ったりするの?」
「あ、いえ……詳しい事は分かりません。でも、そういう手段はあるって、フィーは言ってました。」
「むー。予想してた展開と違いすぎるぞー……フィーが何かやらかすと思ってたけど、これはないわー」
ゴロゴロと布団を転がりながら頭を抱え込んでいたオリフお姉様は、大きく息を吐くと私の方へまた近寄って来た。
「それで、おりふぃはどうするつもり?フィーの言う通りにするの?」
オリフお姉様の問いに私は首を横に振った。
「すみません……まだ、決めてません。オリフお姉様に申し訳ないと思いますけど……私も心の整理がまだつきません。」
俯いている私の頭をオリフお姉様は静かに撫でた。
「んー、いや。おりふぃが妹じゃないとしても、こうやって妹のように接してきたからさ。直ぐに気持ちの切り替えは私にもできないよ。」
私は胸がいっぱいで何も答える事ができず、ただオリフお姉様のほうを見るのが精いっぱいだった。
「私はおりふぃとフィーがどんな選択をしたとしても、その結果を受け入れるよ。だから、おりふぃも私に申し訳ないとか思わなくていい。自分の事を考えなさい。」
「……オリフお姉様。」
「あはは、私もずるいよね。選択をしないって選択をしちゃうんだからさ。でも、私がおりふぃとフィーに介入すると、余計哀しい事になると思うんだ。」
「……。」
「どちらも大事だから、どちらにも手を貸さない。分かってくれるかな?」
「……はい。ありがとうございます。」
「あー……そんな子犬のような目で私を見ないように。なんか可愛くて抱きしめたくなっちゃうじゃないか。」
と、言ったそばからオリフお姉様は、私をまるで縫い包みを抱くかのように強く抱きしめた。
「お、お姉様……苦しい……息が。」
「ん、いい抱き枕だ。今日は良く寝られそう。おやすみ、おりふぃ。」
そう言ってオリフお姉様は私の頬にキスをすると、わたしを抱きしめたまま、あっという間に寝息を立てて寝てしまった。
少し身動きの取れないぎこちなさを感じながらも、オリフお姉様の温もりに、行き場のなかった感情が少しずつ和らいでいくような気がした。
手を伸ばしてランタンの灯りを何とか消すと、張り詰めていた糸が切れるかのように私は深い眠りに誘われた。
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