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2018-11

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日記51日目

 こんなに遅れて大丈夫か。
 大丈夫、問題ない。
 
 ちょっと不思議な誕生パーティを終えた私は、テーセウスとレーレさんにお礼の挨拶を済ませると、フィーとの約束の場所へと走った。
 夜の街を駆け抜け、息を切らせながら遺跡外のとある一角に辿り着いた私は、フィーがいる事を確かめるように辺りを見回した。

 「……待ちくたびれたわよ、オリフィ。あんまり遅いから、逃げ出して来ないのかと思ったわ。」
 
 私が声の主へと視線を向けると、黒い魔女服の少女……フィーが岩壁に背を預けながら腕を組んでいた。
 フィーは機嫌の悪そうな表情で、岩壁に背を預けたまま私を睨みつけた。
 きっと、遅くまで誕生パーティをしていた事に腹を立てているに違いない。
 フィーの機嫌をなだめようと、私は中身が崩れないように注意深く持ってきた箱を彼女に見せた。

 「ごめんなさい。思っていたより時間が掛かっちゃって……その代わり、お土産のケーキを持ってきたから、後で食べ―」

 「いらない。」

 私の言葉を、フィーは怒気をはらんだ声で遮った。

 「そんなものはどうでもいいわ。何のために私が此処で待っているのか分かっているでしょ?」

 私はケーキの箱を近くの岩場に静かに置いてから、フィーの方へと向き直った。

 「あ、うん。でも……」

 「余計な気遣いなんていらないから……貴方の答えを結論から言いなさい。」

 フィーに睨みつけられた私は気押されて、言い掛けた言葉を噤んでしまった。
 張り詰めた緊張感のせいか、言葉を紡ごうと口を開くが声が擦れて出なかった。
 テーセウスから貰ったカフスピアスに無意識に触れると、私は徐々に落ち着きを取り戻して、少しだけ声が出るようになった。

 「あのね、フィー……ニフルハイムへ帰って調べてみたけど、貴方が本当のオリフィエルさんだって事が私にも分かった。でも、私も貴方の一部なの。」

 「私の一部?」

 首を傾げるフィーが話に関心を持ってくれた事に、少しだけ安堵した私はフィーと自分の関係を彼女に話した。
 自分が、フィーが鏡に閉じ込められた時、彼女の心の片隅に残っていた記憶の一部だという事。
 フィーの少女時代に夢の中で友達として呼び出された、とある絵本の主人公“オリフィア”が私だったと気づいた事。
 意識不明のオリフィエルの身体が衰弱してしまうのを防ぐ為に、治癒師のヲルンという人が記憶の深層まで潜って私に会いに来たという事。
 そして、彼女の説得でフィーを探すために私が夢の中から呼び出されたが、フィーの心が戻れる場所を残しておくために、自分の記憶に鍵を掛けた事を打ち明けた。
 
 「私が自分自身の事を知らなかったのは、夢から醒めないようにするため。でも、私が誰なのか分かった今、貴方が還る場所は此処にあるんだよ。」

 私は自分の胸元に手を添えながら、フィーに訴えた。
 フィーは私の話にきょとんとしていたが、口元に手を当て思案するように目をつぶると、横に首を振った。

 「……で?」

 「えっ。」

 「そんな答えを私は待っていた訳ではないわ。第一、その話が嘘じゃないって証拠はどこにあるの?オリフィの心の中にあるとでも言うつもり?笑わせないで。」

 「そんな、嘘なんて言ってない……フィーと私が争う理由なんてないって伝えたかったの……私達は友達だったんだよ。」

 私の言葉にフィーは鼻で笑ったあと、凍りつくような冷たい目で私を睨んだ。

 「じゃあ言わせてもらうけど……もし本当に私の夢の一部だったら、何故夢から覚めても貴方は消えずに此処にいられるわけ?」

 「あ、え?それは……貴方の心の一部だから、貴方が戻ってくるまでこの身体を預かってるからなのだと、思う。」

 自分が何者なのかを打ち明ける事で、フィーと和解出来ると思っていた私は、彼女の素っ気ない反応に動揺を隠す事が出来なかった。

 「オリフィ、私は言ったはずよ。私の身体から出て行きなさいって。上手い事言った心算でしょうけど、私が貴方に取り込まれるって事じゃない。冗談じゃないわ。」

 確かに私の答えは、フィーがヒスカの誕生パーティからの帰る途中の森で私に要求した答えではない。
 だが、それはフィーが本当のオリフィエルだという事を知り、私が自分自身の事を知らなかった事がショックで返す言葉が見付からなかっただけ。
 自分がフィーの心の欠片である以上、私がこの身体から離れる事がお互いの幸せに結びつかない事は理解しているつもりだった。

 「フィー、そうじゃないよ。私の記憶も貴方の記憶もかけがえのないものだから……どちらかが欠けてもいけないんだよ。取り込むとか、取り込まれるとかじゃなくて……一つになれるって事を分かって。」

 フィーは暫く黙って私の方を見つめていたが、魔女帽を深く被りながら口元をつり上げて静かに答えた。

 「どうして私が貴方の想いまで支えなければいけないの?そんなの御免こうむるわ。」

 「フィー……私達はお互いに自分の事を知らなかったから、すれ違っただけでしょう。お互いが誰なのか分かり合えた今、争う必要がどこにあるの?」

 フィーに自分の想いが伝わらない事が、心が締め付けられるように苦しくて辛い。
 どんな言葉を紡げば、彼女に自分の気持ちが伝わるのだろう?
 何故フィーは、今まで分かりあえたと思っていたのに、私の事を見てくれないのだろう。

 「あらあら、オリフィ。やっぱり私と戦う気でいたのね?私は言ったはずよ、大人しく体を返しなさいって。貴方が言う事を聞かないのならば……ちょっと痛い目に遭ってもらわないとね。」

 フィーの表情は帽子を深く被っているために、伺い知る事は出来なかった。
 彼女は懐から白い箱を取り出すと、それを近くの岩場にそっと置いた。

 「違うよ、フィー!戦うなんて言ってない!言い争う必要がないって……」

 私は杖を構えようとするフィーを抑えようと駆け寄った。

 駆け寄ろうとした私の鼻先を、彼女の振り払った杖が掠めたので私は思わず立ち止まってしまった。
 フィーは片手で帽子のつばを上げると、この場に不自然なくらいに優しい微笑みを私に向けた。

 「大丈夫、殺したりはしないわ。私の大切な身体ですもの。でも……そのうるさい口は噤んでもらおうかしら。」

 「フィー……どうして……分かってくれないの?」

 あまりの切なさに、言葉を紡ぐのさえ苦しくなる。
 フィーがどうして私をそこまで拒絶するのか、まったく理解する事が出来なかった。

 「……分かろうとしていないからよ。」

 「分かってくれなくても、私は分かりたいの……フィーが私に言ってくれなかった辛い思いや、貴方の心の声を聞きたいの……」

 「オリフィ、貴方……殺さないって言われて安心してるんじゃないでしょうね?もう話は終わりよ。無駄口叩いてる余裕なんて貴方にはないでしょう……私は本気で行くから。」

 本当にそれがフィーの本意なのだろうか?
 フィーが私を嫌っていると、私が今まで理解できていなかったのだろうか。
 私はフィーの心に少しでも触れたい一心で、彼女の心の内を視ようと意識を研ぎ澄ませた。
 おぼろげに見えた彼女の身体の中で燃える青色の仄かは、とても小さく今にも消入りそうだった。

 「あ、え……フィー……貴方の身体……何があったの?」

 フィーは私の言葉に忌々しそうに舌打ちすると、私から遠退いた。

 「話は終わりよ……これ以上、話す事はないわ。」

 彼女の殺気をはらんだ視線に気おされて、私は思わず息を飲んだ。
 さっき見えた青い灯が何だったのか、どうしてフィーのそれは今にも消え入りそうなのか。
 私は戸惑いながらも彼女が呪文を詠唱するのに備え、戦いの準備を整えざるをえなかった。
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