FC2ブログ

2018-11

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

日記53日目

 フィーの身体から体温が失われてゆくのを、私はなす術もなく抱き留めていた。
 次第に硬直してゆく身体と、蒼白くなる肌が彼女の死という現実を私に突きつけた。
 思いきり泣いたり叫んだりもしたような気もするが、今は何も覚えていない。
 時も思考も完全に制止したかのように、何もない白い世界に私とフィーだけが取り残された。
 
 「―オリフィエル。」

 ふいに誰かが、私の名前を呼んだような気がした。
 
 「オリフィエル。大丈夫ですか?」

 白い世界の靄の中から、馴染みのある声と姿が私の目に映った。
 
 「テ……ス?」

 テーセウスは私の抱くフィーの亡骸を見ると、沈痛な面持ちで私の肩に手を添えた。

 「テス、どうしましょう。私、この手で……フィーを殺してしまいました。」
 
 「……オリフィ、ここにずっと居ては身体に障ります。とりあえず私の屋敷へ。フィー様は私がお預かりしましょう。」

 テーセウスは私の腕を解くようにフィーの背中に手を回すと、もう片方の手を膝に差しこんで抱きあげた。

 「立てますか、オリフィ……怪我の方、大丈夫ですか?」

 不安そうに見詰めるテーセウスに、私は小さく頷くとよろよろと立ち上がった。
 それからどうやってお屋敷まで着いたのかは覚えていない。
 ただ、フィーを抱きしめて屋敷へと戻るテーセウスの背中をずっと眺めて歩いていた。

 テーセウスは屋敷の空き部屋の一室を使い、フィーの亡骸をベッドに安置した。
 ベッドで眠るフィーを私はずっと眺めていたが、テーセウスは少しだけ席を外しますと言って私とフィーだけが部屋に残った。
 私はベッドの隣の椅子に腰かけたまま、ひょっとしたらフィーが目を覚ますのではないかと頬を何度か擦ってみたが、その肌に赤味がさす事はなかった。
 暫くするとテーセウスが部屋に戻ってきて、私の肩を軽く二、三度叩いて耳元で囁いた。

「オリフ様が着替えを持って迎えに来てくれるそうです。フィー様は私が看ていますので、オリフィはその間にシャワーを浴びてくるといいでしょう。」

 私は彼の言う通りにお風呂に入ると、シャワーで身体にこびり付いた血糊を洗い落とした。
 自分の赤い血とフィーの身体から付着した青い血が、絵具のように混ざり合って床のタイルを紫色に染めた。
 温まった身体のせいか、今まで気がつかなかった血の匂いが辺りに満ち、私は吐き気に耐えながらそれを洗い流した。
 お風呂からあがった頃には、脱衣所にオリフお姉様の届けてくれたと思われる着替えが用意されていたので、私はそれに着替えてフィーの眠る部屋へと戻った。

 部屋ではフィーの亡骸の横で、テーセウスとオリフお姉様が神妙な表情で何やら話をしていたが、二人とも私の気配に気付くと話を止めて私の傍にやってきた。

「オリフ様と相談したのですが、オリフィは一度家に帰って休んだ方がいいでしょう。フィー様の事は公にならないように弔いますので、お墓の方が決まり次第お知らせいたします。」

 オリフお姉様は私の顔色を窺うように、私にゆっくり話しかけた。 

「おりふぃ……今必要なのは、心を整理する時間だ。このままフィーの傍に居ても、おりふぃの為にならない。今日は一緒に帰ろう……いいね?」

 私はオリフお姉様の言葉に、ただ頷いた。
 それから、テーセウスさんに見送られて私とオリフお姉様はテントへと戻った。
 オリフお姉様は私に一緒に寝ようと声を掛けてくれたが、私は眠くないのでもう少し起きていますと言って丁重に断った。
 オリフお姉様は何も言わず笑顔で頷いて、おやすみと挨拶をすると先に眠りについた。
 私は眠る事ができずにテーブルに置いたランタンの炎をただずっと眺めていた。

 ふと、テーブルに置かれたストードームが少しだけ音を出して動いたので、私は気を取られてそちらの方へと目を遣った。
 スノードームの隣には黒いカードを抱えた黒い縫いぐるみの兎が倒れていたので、私はそれを手に取った。
 黒い縫い包みの兎の脇に挟んである黒いカードを手に取ると、懐から手鏡に映してそれを読んだ。
それはバースデーカードで、フィー宛に届けられたものだった。
 刹那、テーセウスやレーレさんと誕生日を過ごしていた自分と、ここで独りで誕生日を過ごしたフィーのイメージが交錯した。
 
 私は力が抜けたように、テーブルの上に崩れ落ちると突っ伏した。
 今日の出来事が万華鏡のようにぐるぐると頭の中を駆け巡る。
 
 もしも、あるいは、という儚い希望が浮んでは泡沫のように消えていく。

 一つだけ確実に起こった事象、フィーの死だけを残して。

 私は堰を切ったように涙が溢れるのを、抑える事ができなかった。
 フィーの形見となってしまった縫い包みを握りしめて、私は「ごめんなさい」と何度も何度も呟いていた。
スポンサーサイト

● COMMENT ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://mementomorinomaigo.blog81.fc2.com/tb.php/174-65541e91
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

季刊おりふぃ ういんたーすぺしゃる «  | BLOG TOP |  » 日記52日目

リンク

プロフィール

佐藤深雪

Author:佐藤深雪
いつから改装中だと錯覚していた?

なん だと…

アイコンは魔術商会さん(E№41)からいただきました。とても感謝なのです。

ノウァ
ファーヴニール
深雪

とことこ

最近の記事

カテゴリ

辺境地域(キャラのホーム世界設定) (4)
辺境黒歴史(ホーム世界の歴史) (3)
偽島2期日記 (25)
Fallen Island (2)
いただき物 (2)
オリフ (32)
ネヴァ (8)
カーズ (25)
偽島1期(TiA) (20)
カーズの日記 (1)
ティアの交換日記 (1)
おりふぃ (14)
偽島3、4期日記 (46)
六命表日記 (14)
六命裏日記 (9)
精霊日記 (19)

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。