2018-07

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日記55日目

 白い霧に包まれた、とある駅のホーム。
 黒いワンピースを着た少女が、ぽつりとホームに佇んでいた。
 つば広の帽子を被った藍色の髪の少女は、白い霧の先を見ようと辺りを見回していたが、一向に晴れる気配のない白い霧の世界に溜息を吐いた。
 少女がふと耳を澄ますと、背後の方から足音が近づいてくるのが聞こえた。
少女が朧げに影が近付くのを見つめると、金髪に青いリボンを付けた男が不機嫌そうな表情で霧の中から現れた。

「……ったく、余計な事をしやがって。」

 少女は金髪の男の言葉に、含みのある笑みを口元に浮かべながら首を傾げた。

「あら、貴方に迷惑をかけた覚えなんて、まったくないのですけど?」

「惚けんじゃねぇ。悪魔いのが魔女いのと一緒に居ることで、衰弱してたのを知ってた筈だ。あのまま放っておけば勝手に悪魔いのが消えてくれたのによ。」

 金髪の男は苛立だしげに髪を掻きながら、少女の方を睨んだ。

「何だか知らねぇが。お前が死んだら、あの悪魔いの魔力が戻ってやがる……魔女いのを幽世に連れて行く計画がパァじゃねーか。」

 金髪に青いリボンの男が言う「悪魔いの」というのはテーセウスのことであり、「魔女いの」というのはオリフィの事を指した。
 自らの死が、テーセウスの寿命を延ばすことに繋がると知っている男に感心しつつも、彼の計画という言葉に少女は疑問を持った。
 金髪の死神、キルノはこちらの世界に来て、オリフィの力の覚醒をただ待っているだけと思っていたが、彼ら住む世界、幽世に彼女を連れてゆく計画があったとは、少女にとって初耳だった。

「別に……私は死にたくて死んだわけじゃないわ。それよりも、あなたの計画の方が気に掛るのですけど。どうせ死人に口無しなのだから、冥土の土産に教えてくださいません?」

「あ?そんなの簡単な話だ。あのまま悪魔いのが衰弱して消えてもらって、その原因を魔女いのの所為だって教えてやるだけさ。そうすりゃ、この世界に未練なく幽世に連れていけるじゃねーか。」

 自信満々なキルノに一瞬きょとんとしたフィーは、死神の企みを知ると蔑むような目で彼を睨んだ。

「なるほど。つまり、私が死んだことが貴方の誤算だったのね。なら……オリフィを殺さなかっただけでも、ありがたく思いなさい。」

「うるせぇ!勝手に殺し合いなんて始めやがって!知ってたら邪魔したに決まってるだろ!鏡の使い魔もどきめ!」

 キルノは藍色の髪の少女を睨み返したが、ふと違和感を感じ、フィーの顔をじっくりと眺めて呟いた。

「あれ……鏡いの。何で目の色が魔女いのと同じ……なんだ?」

 鏡いのというのは生前の少女、フィーのことを指していた。
 目の色は自分で確かめた訳ではないが、キルノが言うのなら本来の姿、オリフィエルに戻っているという事なのだろう。

「あら、そこは知らないのね……私がオリフィエル本人だって。今いるあの子は私の一部だったけど、既に私ではないわ。この島のマナが私の妄想を具現化してくれちゃったみたい。」

 フィーの言葉に怪訝な顔をして眉をひそめていたキルノは、何かに気付いたのかアッと声を漏らして彼女を凝視した。

「魔女いのが贋もので、鏡いのが本体だと!?俺が連れ戻さなきゃ行けないのはお前の方じゃないか!なんてこった!?」

「だから……贋ものじゃなくて、あの子はオリフィとして自我を持ってしまったの。あの子と私は別人だから喧嘩だってするんじゃない。」

「お前らがやってたのは、喧嘩じゃなくて殺しあいじゃねーか。」

「うるさい……まぁ、死んで何処へ行っても未練はないから、今から貴方に付き合っても構わないわよ。うっかりものの、キルノさん。」

 嘆きながら真っ白な霧の空を仰ぐキルノに、フィーは慰めるように肩を叩いた。

「何いってんだアホが!悪魔と契約したままの魂で幽世に来れると思うな!お前が今から行くのは地獄だ!煉獄なり、地獄なりに堕ちやがれ!」

 キルノはフィーの手を振り払うと、フィーの鼻先に指を突きつけて怒鳴った。

「あら……やっぱり地獄行きなのね。慈悲深い神様がいつ私に救いの手を差し伸べてくださったのか、愚かな私は気付くことが出来なかったわ。」

 つば広の帽子を深く被りながら、フィーは口元に笑みを浮かべて死神に手を振った。

「くっ、いちいち気に障る奴だ……悪いが、お前に同情する気なんて無いからな!俺は、お前に言いたいことがあるからここに来ただけだ!」

「……お見送りに来てくれたんですか?それは、ありがとうございます。死神様にお見送りしていただいて、良い土産話が出来ましたわ。」

 深く頭を下げるフィーに、キルノは舌打ちをすると踵を返して立ち去っていった。
 フィーは足音が消え白い霧が再び静寂に包まれるまで、キルノの居た場所をずっと見詰め続けていた。

「話し相手があの人で良かった……あれだけ扇情的な態度で挑発してくれると、私のほうが冷静でいられるもの。」

 ホームに立ち込める白い霧は相変わらずだったが、耳を澄ますと遠くで汽笛のような音が聞こえた。

「……あれがお迎えの乗り物の音かしら。」

 やがて大きな車輪の回る音が聞こえてくると、霧を掻き分けて禍々しい装飾の施された大きな汽車がフィーの前に停車した。 

「なにこれ……もしかして生きてるの?」

 フィーが眉をひそめて黒い汽車を覗き込むと、目の前の扉が自然に開いて、真っ黒な手のようなものが無数に飛び出して彼女の体を掴んだ。
 無数に伸びた冷たい闇の手がフィーの身体をしっかりと掴み、彼女は声を上げる暇もなく列車の中へと引きずり込まれようとしていた。
 

 ……ああ、これで終わりか。

 暗闇に飲まれてゆく自分の意識が、少しずつ遠のいて行くのを感じた。
 覚悟はとうに決まっていても、やはり少し未練はあるらしい。
 薄れ行く意識の中で、最後に泣かせてしまった友達の顔が浮かんでフィーは苦笑いをした。 
 
「もう少し、いいやり方があったかもしれないわね……ごめんね、オリフィ。」

 
 フィーの意識が闇に飲まれようとした時、感覚の殆どない腕を誰かに掴まれたような気がした。
 闇の手を引き剥がすように力強いものは、フィーの腕を決して掴んで離さなかった。
 引き寄せられた彼女の身体は、靄の中を通り抜けるような懐かしい感覚を覚えた。
 
 それは鏡の世界を通り抜ける時と良く似ていて、フィーは夢見心地に掴まれた腕に身を委ねていた。
 
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