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2018-12

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日記77日目

「……さて、答え合わせをしましょうか」

 ニフルハイムの屋敷にあるアルフラウの書斎。薄暗い部屋の壁には二人の影が、ランタンの灯りに照らされてゆらゆらと揺れていた。
 影の主の一人はアルフラウ女伯爵。
 白子の肌に宝石のような目を持つ少女は、テーブルに置かれた紅茶を一口すすると、もうひとつの影の主の方を見つめた。
 
「答え合わせ……ですか?私がアルフラウ様に謎かけをした記憶はないのですが。」

 もう一つの影の主、青髪で青目の女性はヲルン・シフェル。
 オリフィエルの壊れかけていた心を治した「白羽根」と呼ばれる治癒師。
 ヲルンは目の前にある紅茶に手をつけた後、アルフラウの方に首をかしげながら微笑んだ。 

「そうね。たしかに謎かけをされた覚えはないわ。わたくしの記憶は一日しか持たなかったもの。でも、今はあなたに質問する事ができるのよ。」

 アルフラウの言葉を肯定するように、静かにヲルンは頷いた。

「オリフィエルさんが呪いを解かれたと聞いております。アルフラウ様の記憶が正常に戻られたことは喜ばしいですが、お身体の方をこれからは心配しなくてはなりませんね。」

「ありがとう。でも、私の身体の事はひとまず置いておきましょう。私が尋ねたいのは自分の身体の事ではなく、オリフィについての事よ。」

 アルフラウは椅子に身体を預けるような姿勢になると、付箋のたくさん挟まれた日記を手にとってページをめくり始めた。

「鏡に囚えられてしまったオリフィの精神を救うために、あなたは身体に残った心の欠片を使ったのね。」

 アルフラウの問いにヲルンは小さく頷いた。

「はい。そうしなければ彼女の身体は命の危機がありましたし、心の欠片となった記憶も、鏡に囚われた彼女の精神が解放されれば一つになる筈でした。」

「……鏡に囚われた精神を解放するために、オリフィの心の欠片が鏡の悪魔に接触することは予測できていたのかしら?」

「それは、はいであり、いいえですね。オリフィエルさんの心の欠片……オリフィアさん(偽)と仮に名付けますね。彼女は確証はないにせよ、移送鏡からオリフィエルさんの精神を解放する方法を知っていたように思えます。ただ……」

 ヲルンは考えこむように額に手を当てて目を瞑ると、一つため息をついた。

「鏡の世界を操る力を悪魔に求めるなんて、思ってもみませんでした。」

「ふふ、ニフルハイム家が代々悪魔と関わりを持っているなんて、あなたは知らなかった事ですものね。オリフィの行動は、私にとってはそれほど不思議なことではなかったわ。」

 アルフラウは日記に何かを書き加えた後、別の付箋のページを開いてヲルンに言った。

「もう一つ質問しましょう。あなたがオリフィア(偽)と名付けたオリフィは、鏡に囚われた精神を開放したのに融合しなかった。これは予測できた事なのかしら?」

「いいえ。」

 ヲルンは項垂れて首を横に振った。

「オリフィア(偽)さんは、確かにオリフィエルさんの身体に繋がりを持つために記憶を閉じ込めてオリフィエルさんになりましたが、それは鏡の中の精神が解放された時に融合して記憶が繋がるので問題はなかったはずです。」

「でも、実際はフィーとオリフィという別々の自我が生まれてしまった。これも予測できなかった事なのね。」

「はい、すみません……ちょっと、そこで吊ってきます。」

 ヨロヨロと立ち上がりどこかへ行こうとするヲルンの袖を掴んで、アルフラウは微笑んだ。

「わたくしはあなたに責任を問うつもりで質問しているわけではないわ。フィーとオリフィがどうして別々になってしまったのか、原因を一緒に考えたいだけなの。」

 アルフラウにヲルンは力なく微笑み返すと、静かに元の席に戻った。

「私は……偽島という場所に行ったことはないのですが、あの島は淀んだマナが満ちていると聞いています。オリフィエルさんの精神を解放するまでの間、島に滞在していたオリフィア(偽)さんはその淀んだマナの影響で心の欠片から違うものに変化したと考えられます。」

「エキュオスのようにマナの影響で一つの自我を持った。という事かしら?」

「はい。オリフィア(偽)さんが自分の記憶を封印したことで、身体と心の繋がりが強くなって、鏡の世界に囚われた心を開放しなくてもオリフィエルさんとして生きて行けるようになってしまった。」

「つまり、偽島という特殊な環境が、オリフィの妄想すら飲み込んですべて在ることにしてしまった。」

 アルフラウの言葉にヲルンは静かに頷いた。

「私の尽くした手が、結果的にフィーさん……オリフィエルさんの命を奪うことになってしまって、申し訳ありません。」

 深く頭を下げるヲルンに、アルフラウは席を立ってそばに寄ると、静かに肩に手を置いた。

「あなたの責任が全ての原因ではないわ。これは、ニフルハイム家が背負ってきた私も抗うことのできなかった呪いなの……あの子は命を犠牲にして呪いを断ち切った。」

「あの子の分まで、私達が幸せになるわ。ヲルン、あなたは為すべき事を果たしただけ……とても感謝しているわ、ありがとう。」

 言霊師と呼ばれる術士は、言霊を操るため嘘を付くことができない。
 アルフラウの言葉は偽りのないものであったが、その言葉にこめられた彼女想いにヲルンは頭を上げることができなかった。 
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