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2018-11

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表日記4日目

「ノウァのアホー!」

 頬を叩かれた黒髪の少女は、涙目になりながら黒いうさぎの縫いぐるみを抱えて酒場を出ていった。

「ノウァ……追わなくていいのか。」

 カウンターに座るピンクのうさぎの着ぐるみが、妙な存在感を醸し出しながら器用にエールを煽る。

「別に……私は深雪の保護者じゃないわ。」

 ノウァと呼ばれた紫の髪の女性は、パタパタと揺れるウエスタンドアを見つめながら深い溜息をついた。

「確かにそうだな。あの黒い縫いぐるみはノウァのお気に入りだったのか?少女趣味とは意外だが。」

「……大切な人から貰ったものなの。深雪にあげるなんて言った覚えもないし、返しなさいって言ったら『深雪のだもん!』は流石にないわ。」

「他のことはだいたい言うことを聞くが、うさぎに関わることになると深雪も頑固だから困るな。まぁ、腹を空かして夕飯までには多分帰ってくるだろう。」

 うさぎの着ぐるみを着た男、ファーヴニールはそう言うと再びエールを煽ってくつろぎ始めた。

「……お腹は空かすでしょうけど、多分帰ってこれないでしょうね。」

 ノウァは首を横に振って、諦めた表情で深雪の出ていった扉をただ眺めていた。

「なるほど、迷子か。」

 ファーヴニールはノウァの言葉の意味を理解して、ポンと手を打った。


 深雪は突然空から降ってきた。
 うさぎの着ぐるみを着たファーヴニールの上に落ちたとはいえ、 無傷で済んだのは何らかの魔法によって深雪の身体が保護されていたからだろう。
 直撃したファーヴニールもいかに中身が頑強な男だとはいえ、空から落ちてきた少女を受け止めて無事で済むはずがない。
 おそらくは召喚魔法で異世界から呼び出されたものにかかる障壁。
 召喚魔法だと仮定したとして、ノウァにはまた一つの疑問が浮かび上がる。
 深雪を呼び出した召喚者は誰なのか。そして、何の目的で深雪を召喚したのか。
 少女を呼び出した召喚者は少なくともノウァではなく、旅で同行している錬金術師のレイヤやサクラが呼び出したようには思えない。
 玩具屋の仕業とも考えたが、セルフォリーフにやってきてこれから危険な依頼を受ける可能性があるのに、わざわざ足手まといを増やす物好きが何処にいるのか。
 結局のところ、誰がこの世界に深雪を呼んだのかを知る術は殆ど無かった。
 
 そして、当人には足手まといの自覚が全く無い事が、更にノウァを悩ませた。
 赤の他人であれば、施設にでも預けてしまえば済む話なのだが、深雪は淡雪さんの従姉妹の娘。
 淡雪さんの親友であるオリフラムと生前に縁のあるノウァは、せめて元の世界に深雪を還すまでは面倒をみなければならないとは思っていた。

「……仕方が無いわね。深雪を迎えに行きましょう、ニール。」

 うさぎの着ぐるみの男は、エールを一気に煽って空にすると「うむ。」と頷いて席を立った。





「ううっ、ここ何処ーっ?」

 黒いうさぎの縫いぐるみを抱えた深雪は、見たことのない路地の隅っこでしゃがみこんでいた。
 勢い良く酒場を飛び出したのはいいものの、スティルフを殆ど歩いたことのない深雪にとって、この大きな街はまさに迷路だった。
 元の酒場に戻ろうにも、酒場の名前すら覚えていない。
 それでも戻ろうと闇雲に歩きまわったせいで、深雪はあっという間に体力を消耗してしまっていた。

「完全に詰んだね。」

 黒いうさぎの縫いぐるみのFP(フォルテ・ピアノ)は淡々と現在の状況を呟いた。

「だって、ノウァが私のフォルテを取ろうとするから……ノウァが悪いんだよ!ノウァのアホー!」

「叫ぶと余計体力消耗するよ。ついでに言わせてもらうと、僕はノウァの使い魔だから、深雪のものじゃ……」

「ふぉるては深雪のだもん!」

「むぎぅ!?」

 深雪に力いっぱい抱き締められたFPは、首のあたりを絞めつけられて苦しそうに呻いた。
 残った力をFPを抱き締めることに注いでしまったせいで、深雪は体力を一気に消耗してしまった。
 項垂れて力なくFPを抱えながら路地の壁に寄りかかった深雪は、いつの間にか意識が落ちて眠りについていた。


「ふぇ……」

 何かに肩を叩かれた深雪は、FPに涎を垂らしながら目を覚ました。

「ぎゃぁー!涎が!?涎が!?」

 騒ぐFPをよそに、肩を叩いた主を見ようと深雪は首をもたげた。

「あ……ノウァ。と、うさぎ先生!」

 また怒られると肩を竦めた深雪だったが、ノウァは少しだけ口元に笑みを浮かべて深雪に手を差し出した。
 ノウァの後ろには深雪がうさぎ先生と呼んでいる、大好きな着ぐるみを着たファーヴニールが立っていた。

「怪我は無いようね……深雪、帰るわよ。」

「うっ……ふぉるては渡さないからね!」

 涙目になりながらFPを抱きしめる深雪に、ノウァは苦笑いをするしかなかった。

「はいはい、それじゃFPは深雪に貸しておくわ。無理に返して貰うつもりはないから、大事にしてね。」

 ノウァの言葉に、さっきまで涙目だった深雪はすぐに笑顔になった。

「うん、ありがとうノウァ!もちろん大事にするよ!」

 うさぎの縫いぐるみを抱えながら、深雪はノウァの差し出した手を握り返した。

「……しかし。よく深雪のいる場所がすぐ分かったな。」

 ニールが感心したように呟くと、ノウァは可笑しそうに笑った。

「FPは私の使い魔ですもの。何処にいても見つけることができるわ。」
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