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2018-11

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表日記5日目

 人払いの結界のかかった白きの庭と呼ばれる屋敷は、人ならざるものが住む。
 
 庭に咲き乱れる鮮やかな薔薇は、屋敷の外に持ち出さない限り決して枯れることがない。
 とはいえ、枯れないのだから剪定は勿論不可欠で、以前はヘルメスという名の女性(?)が日々手入れをおこなっていたのだが、いつの間にか姿を消してしまった。
 ノウァがテーセウスから聞いた話では、館に出入りする者は入れ替わりが激しいので誰も気にとめないらしい。
 庭園の手入れはテーセウスの趣味のようで、楽しそうに薔薇を愛でる彼の姿をノウァは幾度かみかけたことがあった。
 手入れの行き届いた庭園の散歩は、見る者の目を楽しませてくれる。

 ノウァの屋敷での主な仕事は、料理や洗濯、部屋の掃除であるが、テーセウスの厚意により自由にお暇を取ることができた。
 暇をいただいた時には、好きな本を読んだりピアノを弾いたりして一日過ごした。
それでも時間が余る時には、薔薇の庭園の散歩をしたり、庭先で遊ぶ双子の女の子の悪魔であるドルチェとアマービレの遊び相手になったりした。

「ノウァも一緒にやりましょうよ。バラバラ死体ごっこ♪」
 
 双子の少女の遊びは、ろくでもない悪戯かろくでもない遊びかのどちらかだが、今日は後者の方らしい。
 金髪碧眼の見た目はとても可憐な少女達は、笑顔でお互いの首を鋸で斬りっこして愉しんでいた。
 蜥蜴の再生能力を持つお陰か、この悪魔の双子は異常なほどに生命力が高い。
 ノウァはテーセウスの描いた油絵の身体に生まれ変わってから、普通の人間でいう致命傷という程の傷を負った事はない。
 自分が何処まで傷つけば致命傷なのか知りたくはあったが、わざわざ痛い思いをしてまで試す気もなかった。
 目の前でアマービレが引く鋸で、首を切られて頭が落ちてもケタケタと笑うドルチェを見下ろしながら、ノウァは無茶しやがってと心の中で呟いていた。

「遠慮いたします……ドルチェ様、アマービレ様。服が汚れたら、またオリフィエル様に叱られますよ。」

 ノウァは足元にコロコロと転がった首を拾うと、胴体だけのドルチェの首の上に押し込んだ。

「死ぬわけじゃないものいいじゃない!人間のやることは面白いから、真似したくなるものなのよ!」

 鋸を振り回しながら、アマービレがノウァに叫んだ。 

「ノウァも悪魔なんだから、ちょっとぐらい無茶しなさいよ!ヤクザの詫び入れごっこぐらいなら平気なはずよ!私達が優しく介錯するわ!」

 まだ首がすわらない赤ん坊のように、頭をフラフラさせながらドルチェはノウァに抗議した。

「お断りいたします。テーセウスさんから頂いた大事な体ですから、無闇に傷つける訳には参りません。」

 爽やかな笑顔で受け流すノウァに、双子たちは不満そうに口を尖らせた。

「臭うわ!リア充臭がプンプンするわ!オリフィエル臭がするわ!」

「テーセウスおじさまもオルドローズおじさまのように、好き勝手に下僕を増やして消えてしまうといいのだわ!」

 金髪の双子が絶叫すると、ノウァは急に険しい表情になり二人の方へと歩み寄った。

「……そのお話、詳しく聞かせていただけませんか?」

「あら、そのお話って何の事かしら?何にも知らないわよ。知っていたとしても教える訳にはいかないわ。」

「そうよ、私達は口が固いのよ!お口にチャックが付いてるのだわ!」

 妙に自信のある表情で、双子は腰に手を当てながらノウァに勝ち誇った。
 興味のある話ではあるが、弟のテーセウスと兄のオルドローズは犬猿の仲という事を、彼の妻であるオリフィエルから聞いている。
 オルドローズの事をテーセウスに尋ねて機嫌を損ねてしまうよりは、双子から話を聞いたほうが手っ取り早いとノウァは判断した。

「……晩ご飯にはデザートにプリンを付けましょう。」

「OK。取引に応じてあげるわ!」

 爛々と瞳が輝き、蜥蜴の尻尾をピコピコさせながら、双子達は親指を立てた。
 ドルチェとアマービレの話では、ノウァのような僕を無計画に作って、好き放題遊び歩いていたオルドローズは、魔力が尽きて消えてしまったという。

「なるほど、私も此処に居るだけでテーセウスさんの魔力をいただいているという事ですね。」

 テーセウスは人の不幸を糧とする。
 人間のオリフィエルと一緒に過ごしている間は、テーセウスの悪魔としての食事を摂る事はしないだろう。
 自分がただ此処で暮らしているだけでは、テーセウスへの負担を増やすばかりになる。
 ノウァは額に手を当て考え込んだ後、何か思い付いたように目を見開いた。 

「ちょっと用事ができたので、先に屋敷に戻ります。ドルチェ様、アマービレ様。ちゃんと遊び終わったら、お片づけは忘れないで下さいね。」

「う゛……言われるまでもないわ!プリン忘れないでね!嘘ついたら、針入りのおはぎ食わせるわよ!」

 金髪の双子は屋敷に戻るノウァを、手に持った血塗られた鋸を振りながら見送った。

 
 屋敷に戻ったノウァは、身の回りのものをトランクに詰めこんで出かける準備を整えた後、テーセウスの部屋へと出向いて扉をノックした。

「どうしたんですか、ノウァ。何処かへお泊りですか?」

「テーセウスさん……私暫く旅に出ようと思います。」

 突然の申し出に目を丸くしたテーセウスは、ノウァ肩に静かに手を置いた。

「屋敷で何か困ったことがあったら、わたくしに相談してください。旅に出るのはそれからでも遅くはない。」

 テーセウスの言葉に、ノウァは視線を落としたが何かを決意したように、真剣な眼差しでテーセウスのターコイズの瞳を見つめた。

「此処にいると、テーセウスさんがいつまで経っても子離れできないと思いまして。」

「……それは……そうですか。」

 テーセウスは肩を落として溜息をつくと、ノウァの肩に置いていた手をそっと離した。

「それでも、なにか困ったことがあったら、此処に戻ってきてください。ココは貴女の棲家なのですから。」

「はい、ありがとうございます。今日はオリフィエル様や、ドルチェ様、アマービレ様達と一緒にお食事をして、明日の朝ここを発ちたいと思います。」

 ノウァの言葉に、テーセウスは気を取り直して口元を緩めて頷いた。
 翌日、ノウァは朝靄の立ち込める早朝に、白きの庭のお屋敷を出た。

「親離れできないのは私の方です……行ってきます、テーセウスさん。」

 誰もいない門の前でノウァは一礼すると、朝靄の中へと消えていった。
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