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2018-09

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裏日記8日目

 セルフォリーフにやってきてから、何処からともなく聞こえてくる誰かの声。
 その声はとても小さく、意識を声に傾けても聞き取れない程度のものだった。
 その幻聴は私だけのようで、尋ねてみても深雪はもちろんファーヴニールにも聞こえないようだった。
 意識しなければ日常の喧騒に掻き消されてしまうので、そのうち気にもならなくなっていた。


『……ノウァ。』

 皆が寝静まったテントの中、はっきりと私を呼ぶ声を耳にした。
 その声は自分の良く知っている人物であり、この世界では既に亡くなったはずのものの声だった。
 私は毛布から上半身だけ起こして、声の主人を確かめようと辺りを見回した。
 隣で黒いうさぎの縫いぐるみのFPを抱きまくら代わりに寝る深雪は、全く起きる気配はなかった。
 テーセウスと同じ眷属になってから、気配を察知する能力はフィーの頃よりも鋭くなったのだが、よく知るものの気配しか周囲には感じなれなかった。

「……誰か居るの?」

 寝ている深雪を起こさないように、小さな声であたりに呟いてみる。

『あら、やっと聞こえたかしら?』

 再び聞こえた声の元を辿ると、それは驚くことに耳から聞こえるものではなく、意識に直接響いていることに気づいた。

『器用ね。心に直接話し掛けてるってこと?』

 声の主に応えるように、今度は声に出さずに心の中で呟いてみる。

『理解が早いと説明が省けて助かるわ。やっぱり、あなたになら私の呼びかけは聞こえるのね。試してみて良かったわ。』

『確かにあなたの声は聞こえるけれど。それは、あり得ない話ね。私の知ってるその声の主はとっくに死んでいるわ。幽霊だって言っても無駄よ。この世界にいる筈がないのだから。』

『私を偽物だと言いたいのね。その答えは半分正解で、半分間違い。此処は私の進むべき筈だった未来の一つ。私はパラレル(並列世界)からやってきたフィー。この世界のフィーは、死んでしまったのね。あなたが其処に居る事が証拠だわ。』

 それは間違いなく、フィーと名乗っていたオリフィエル・ニフルハイムの声。
 フィーとして生きていた時の私の声だった。

『……あなたは私の何処まで知っているの?そもそも、どうしてこんな回りくどい接触を試みたの?用事があるなら、私に直接会えばいいじゃない。』

 まだ声だけでは、相手が本当にパラレルからきたフィーなのかは信用できない。
 回りくどい質問をしなければいけないことに歯がゆさを感じつつも、相手の情報の棚を開ける事を優先することにした。

『そうね……質問を1つずつ返していきましょうか。この世界の出来事が何処まで、私の世界と同じなのかは把握していないけれど。私が死んだら、あなたになることはとある男から聞いたわ。オリフィと戦った後に、この世界に飛ばされてきたから、その先のことは知らないけど。』

『とある男って、何よ。先ずそこから曖昧な時点で、信用しようがないわ。』

『ごめんなさい、私もその男の素性は知らない。その男が、私の仮初の身体が長く持たない事や、私が死ぬと魂がテーセウスのものになるって教えてくれたの。あなたの名前までは分からなかったけど、元は同じ私だから、出会ってすぐに気づいたわ。』

……お前、テーセウスさんに「さん」付しろよ。引っ叩くぞ。

『あ、ごめんなさい。テーセウスさん、って次から言うようにするから、そんなに怒らないで。』

『ええ、そうして。少し感情を込めるとそのまま言葉に反映されるのね……私も熱くならないように気をつけるわ。』

 ふと、自分が今どんな表情になっているのか気になって、眠っている深雪の方を確認する。
 深雪はより一層FPを絞めつけいるだけで、歯ぎしりをしながら熟睡しているようだった。

『心の中の会話も便利なようで不便ね。でも、嘘はつき辛いから、その分信用はして貰えると助かるわ。』

『それじゃ、さっきの話に戻るけど……あなたは自分自身のことを自分で調べもしなかったって事?結果的に確かにテーセウスさんに助けられたけど、自分の死後の事なんて私は誰にも教わらなかったわ。』

『調べはしたけど、確信を持てる情報がなかったのよ。その後、ちゃんと両親に会って真実を突き止めたわ。そして私が教えてもらったのは、その男が渡した宝石を身につけておけば、テーセウスさんに魂を奪われずに……じゃなくて、宝石の中に留まることができるって。』

『少し違うようだけど、リリの作った人形のようなものね。その話だと、あなたに特にメリットはなかったんじゃない?今の私は何の不自由も感じていないし、仮にその宝石に留まったとしても、あなたが元の体に戻れるわけでもないのでしょう?』

『リリの人形?詳しくは知らないけど、その男は、私とオリフィの魂を賭け事の対象にしていたようだわ。用事が済んだら、新しい身体を用意してくれるって。私にメリットは殆ど無かったけど、一縷の望みに賭けたい心境だったの。』

『一縷の望み……ね。私には不思議なことに、見当が全くつかないわ。オリフィと争ったのなら、魂の融合の提案はあった筈。なぜあなたはその話に乗らなかったの?死にたくなかったのでしょう?』

『確かにオリフィから、その話は出たわ。でも……彼女と融合することで、自分の心が喪われる恐怖のほうが強かった。秘めた想いも、彼女に消されてしまいそうで。』

『……それって、セツカさんの事?』

『え?あ、ううん。そう、ソレも確かにあるわね。あなたからその名前が出てくるとは思わなくて、びっくりした。』

『……形見がわりにあなたの渡したペンダントを身に付けて、あまつさえ飼っている猫にフィーって名付けているぐらいだもの。流石に何かあるとは思うでしょ?』

『そうね、確かにそう言われれば。今の話しで分かったかもしれないけど、私はそのペンダントの中にいるわ。あの男との約束は、こちらの世界に飛ばされてしまって果たされないままだけど。』

『なるほど……あの髪留めの紐がヒスカにあげたものと同じなのは、納得がいった気がしたわ。魂の波長が同じだから、私はあなたの声をペンダントから聞くことができたのね。』

『ええ、そう。二つ目の質問にも答えたことになるわね。ずっと呼びかけていたけど、私の方も試行錯誤していたから、今の今まで掛かってしまったけど。』

『……で?』

『えっ?』

 私の質問にオウム返しのように答えるフィー。 

『だから、それで?私と話をして、あなたの状況が好転すると思ったの?パラレルから来た私でも、オリフィに手を出すのなら容赦しないわ。』

『え、その考えはなかったわ。新しい身体を見つけることに協力を頼もうとは思っていたけど。私の声が聞こえる人があなたしか居ないから、あなたと話をしないと始まらないって思って。』

『そう……話が出来たついでに、フィーに言っておくわ。自分の未来に道がないことを知っていながら、セツカさんに心を許したのはあなたの罪。あなたがつけた心の傷は、今でも癒えないまま残っている。』

『……結果的にはそうなるわね。彼には申し訳ないことをしたと後悔してる。それでも、あの時は彼に縋ってしまった。同じ私なのに、この気持は理解してもらえないのかしら。』

『理解出来ないわね、私はもう人ではないから。』

『……分かったわ。それなら、あなたと取引をしましょう。それならば、私の頼みも聞いて貰えるでしょう?』

『取引?宝石閉じ込められたあなたが、私に何を与えてくれるというの?ここはもしかして、笑うところなのかしら?』

『まじめに聞いて貰える?ペンダントの中に閉じ込められていた時も、私の意識はわずかにあったの。』

 何も答えない私にフィーはそのまま返事と受け取ったのか、話を続けた。

『お陰で、あなたが生前に大切にしていた友達の事も知ってるわ。ヒスカも王妃になってだいぶ大人っぽくなったけれど、まだ心は少女の頃のように純粋なままよ。』
 
 ヒスカと別れてから、ジェイド王国ではかなりの歳月が経っていることを王宮騎士のセツカさんや錬金術師のサクラさんから聞いている。
 今は王妃となって、しっかりバレットさんを支えていたりしてると勝手に思っていたのだが、実際はそうではないらしい。

『ヒスカはフィーが生きているって信じてる。貴方はずっと嘘を突き通すつもりなの?』

『……事実をヒスカに告げるって脅すつもり?その前に私があなたを壊せば済む話じゃない。取引にも何にもならないわ。』

『違うわ。あなたの嘘に乗ってあげようって言ってるの。この世界のフィーの振りを私がすればいいのでしょう?そうすれば、あなたの嘘は真実になる。』

『……私にあなたの代わりの身体を探す手伝いをしろと?』

『ええ。もし叶えてくれるなら、私は元の世界に帰る必要はないし、セツカはジェイド王国で騎士をやっているのだから、私はヒスカの事をあなたの代わりに護ると誓うわ。』

『なるほど。それなら私にもメリットは無くはない……か。いいわ、話には乗ってあげる。但し、あなたの願いが叶わなくても私にはデメリットは無いって事を弁えておいて。』

『分かったわ。ありがとう、ノウァ……なんだかんだ言って優しいのね。深雪さんの事を見ているとよく分かるわ。』

『それって自画自賛?気持ち悪いからやめてもらえる?話はついたし、そろそろ寝るわ。』

 私は一方的に話を切ると、そのまま深い眠りに落ちようと目を瞑った。
 ニールの件も深雪の件も片付いていないのに、パラレルの自分にまで頼みごとをされるとは思っていなかった。
 私自身の旅の目的は無いのに、やらなければいけないことが増えてきた気がする。

「……一つずつ片付けていくしかないわね。」

 私は深雪の頭を撫でて髪の触り心地を楽しんだあと、再び眠りにつくことにした。
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