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2018-11

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表日記9日目

 ノウァにとってのクリスマスの日は、主であるテーセウスとオリフィエルの結婚記念日という記憶しかない。
 悪魔だから当たり前なのだが、クリスマスそのものを祝う習慣は、自分が暮らしていた白きの庭のお屋敷には無かった。
 ノウァの故郷であるニフルハイムでは、イグドラシルに見立てた樹に飾り付けをして星霊が降りるのを祝うお祭りがあるが、似たような習慣が他の世界にもあることは新鮮だった。

「クリスマスイブに枕元に靴下を置いておくと、良い子にプレゼントを持ったサンタさんが来るんだよ。ノウァはそんな事も知らねーの?」

 クリスマスが近づくつれ、はしゃいでいる深雪がしつこいので、クリスマスなんぞ知らんとノウァが答えると、何故か偉そうに深雪に説教をされた。

「私の世界にはサンタさんとやらは来なかったわ。そもそも、サンタさんというのは複数いるの?街中で確かにニールとケーキを売ってたけど。世界中の子供にプレゼントを配るって、どんだけ大規模なボランティアなの。」

 ファーヴニールはいつもの習慣だとかで、クリスマスのケーキ売りのバイトに出掛けてここには居ない。 

「街のサンタさんは偽物だよー、ノウァはアホだなー。深雪もサンタさんなんて信じてないけど、プレゼントは毎年貰ってたよ。だから、ノウァも深雪の喜ぶもの考えなね?」

 ノウァは深雪の話を理解することが出来ず、何度か深雪の言葉を反芻してみるがやっぱり意味がわからなかった。

「どうして良い子でもない深雪の為に、サンタの代理で私がプレゼントを用意しなければいけない訳?私がその日に用事がないからって、深雪の為に時間も経費も費やすつもりはないわ。」

「……ノウァは、ほんとにアホだね。もっとクリスマスの事を勉強したほうがいいよ?」

 哀れみの目で深雪に頭を撫でられて、どうせ親がイベントに託けて子供にプレゼントを渡す日だろうとノウァは言いたくなったが、そういう習慣を自分の一言で台無しにしてしまうのは流石に気が引けたので黙ることにした。

「分かった……調べておくわ、クリスマスの事。深雪の期待に応えられるかは分からないけど。」

 深雪がサクラやセツカ達の所へ遊びに行っている間に、ノウァはクリスマスに関する資料をひと通り調べてみることにした。

「なるほどね……大体分かったわ。」

 図書館や携帯からの情報を駆使して調べてみると、クリスマスは聖人の生誕祭を発端とする祭が民間に普及したもので、宗教行事的な意味合いだけではない事が分かった。
 プレゼントの習慣も民間に普及したものの一つで、サンタというものは目には見えないけれど実在する妖精のようなものと彼女は認識する事にした。
 とはいえ、深雪の為にサンタの代わりになることは、悪魔として如何なものかとノウァにとって悩みの種がひとつ増える結果となった。
 自身に流れる魔性の血がそれに抗おうとするのか、ただ単に天邪鬼だからなのかは分からないがノウァは素直にプレゼントを準備する気にはなれなかった。


「奇遇だな弟子よ!何を悩んでいるんだ、恋の悩みか?恋の悩みなら私に任せろ!」

 喫茶店で携帯電話の情報を見ながらノウァが溜息をついていると、パーティメンバーのお菓子でできた少女、キャンディが何処からともなくやってきて彼女の肩をポンと叩いた。

「あら……師匠。奇遇ですね。恋の悩みでは、まったくないのですけど、悩み事がありまして。」

 キャンディは向かい側に席があるにも拘わらず、隣にちょこんと座ると店のメニューを見ながら既に注文を開始していた。

「考え事か!考え事も私に任せろ!どんな事でも相談にのるぞ!お通じが良くないならヨーグルトを食え!プラシーボ効果だが良くなるらしいぞ!」

「あ、いえ。そうじゃなくて……といいますか、お通じとかこういう場所でする話じゃねーですから、それ。注文したものを食べたら、さっさと場所を変えましょう。」

 キャンディとノウァはテーブルいっぱいに並べられたデザートを片付けたあと、喫茶店から場所を変えていつも利用している宿兼酒場の辛子亭へと向かった。
 辛子亭のメニューを早速開いたキャンディは、メニューに『らんだむ』とのみ書かれているのを見て、そっとメニューを元へ戻した。

「実は、深雪にサンタの代わりにクリスマスプレゼントを強いられていまして。」

「何だ、そんな事か!それなら玩具屋に見に行って、早速選んでこようじゃないか。チョイスは私に任せろ!私がサンタだ!」

 自信満々に胸を強く叩こうとするキャンディが何となく壊れそうな気がしたので、ノウァは彼女の細く華奢な手を掴んで叩くのを宥めた。

「いえ、クリスマスという習慣が私に抵抗があるという話で……キャンディ師匠がサンタですか。それは良いアイディアかも。」

「そうか!巷にはリア充が溢れて、はがない(※友だちが少ないの意)ワタシ達には肩身が狭いのか!一人ぼっちは寂しいもんな!ワタシが悪堕ちしてもそばに居てやるぞ!」

 気持ちを好くしたキャンディが『らんだむ』なメニューを注文すると、目の前にカブトムシが置かれたので二人は見ないことにして話を進めた。

「ありがとうございます。サンタが来た、これで勝つる。一緒にクリスマスを楽しむ方法を考えましょう。さっき、ハロウィンの妖怪たちがクリスマスに子供達を驚かせる人形劇のお話を見たばかりで、実は師匠とやってみたいと思っていました。」

 キャンディは目を宝石のように輝かせて、ノウァの肩をガシっと掴んだ。

「そうか!それはワタシに適役だな!ぜひやろう、そうしよう!一緒に深雪をアッと言わせるようなプレゼントを用意しようじゃないか!初めての弟子との共同作業でワクワクするぞ!」

「ありがとうございます。私も楽しみになって来ました。子供の頃に、お母様に誕生日にお菓子を作って貰った事を思い出しますね。ここの厨房をちょっとお借りして始めましょう。」

 酒場の主人が快く厨房を貸してくれたので、早速キャンディとノウァはクリスマスプレゼントの準備を進めるのだった。

 
 ―クリスマス前夜。
 深雪は大きな靴下を枕元に置いて、黒い兎の縫いぐるみのFPを抱きながら眠りについた。
 ノウァは深雪が完全に眠ったのを確認すると、キャンディと一緒に用意したクリスマスプレゼントを、深雪の枕元に気付かれないように置いた。
 
 翌日。
 深雪が目覚めると、隣で寝ているはずのノウァの姿は既になく、枕元には大きな靴下にも入り切らない程のリボンの結ばれた箱が置いてあった。

「おおー!すっげー!こんなでかいの初めてだぁー!中身なんだろー!」

 嬉々としながらリボンを解いて箱を開けた深雪は、箱の中身を見て目の光を失ったが、もう一度我に返って箱の中身を覗き込んでみた。

 箱の中には真っ赤な衣装を着たサンタの女の子が、四肢バラバラの状態で、綺麗に折り込まれて入っていた。
 サンタの頭の部分には何やらメッセージの付いた紙が貼られていて、深雪の目には嫌がおうにもその文字が目に入った。

『約束通り、サンタを用意したわ。メリークリスマス。 byノウァ』


「ちげーよぉおおおおおお!サンタなんていらねぇよぉおおおお!?なんだこれぇええええええ!?」

 夢か現か混乱したままの深雪は、自分の頬を叩いて正気に戻ろうとしたが、目の前にあるプレゼントはなくなることがなかった。

「うわぁあああぁ!?ノウァのアホぉおおおおおおおー!?」

 絶叫して涙目の深雪が、這いながら逃げ出すと箱だけがそこに残された。

「……少しやりすぎたかしら。中にはちゃんとお菓子も用意したのだけど。それどころじゃなかったかしら。」

「いや!大成功だろう。深雪にとって忘れられない思い出になったぞ!」

 サンタの衣装の格好でバラバラになったキャンディの首をノウァが抱え上げると、彼女はとても楽しそうに笑った。

「はい、確かにそうですね。記憶に残りすぎて、おねしょ癖が付かないといいですけど。」

「しかし、ハロウィンのようにクリスマスを楽しむのは面白いな。その人形劇の最後はどうなったんだ?」

 キャンディの顔についた血糊に見立てたジャムをノウァは指で拭って舐めとると、味に満足するように目を細めて微笑んだ。

「はい、ハロウィンの主役のジャックがやってきて、悪戯をした妖怪は退治されてしまいました。」

「なるほど!それは面白いな!」

 キャンディの頭は相槌を打つようにカクカクとノウァの手の中で揺れていた。
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