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2018-11

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表裏日記12日目

 とある魔女の記憶。

 ―それは、果たされなかった約束。
 
 日本という世界から来た、赤髪の青年セツカ。
 鏡の世界から呼び出された、オリフィのただの分身でしかない私に何故か優しくしてれる変な奴。
 お調子者な部分はあるけど、頼れるトコロもあって、色々あって少しは打ち解けた気がする冬のある日。

 お菓子作りの試食会という事で、私はオリフィの付き添いで、バレットさんやヒスカのいるテントにやってきた。
 テントにいたエキュパーシュさんやヒスカ達と一緒に、焚火を囲いながらオリフィの作ったプリンをみんなで食べる事になった。
 アランさんやバレットさんは、打ち合わせがあるそうで丁度出掛けていたらしく、ユキネさんは少し前に眠ってしまったそうでテントからは出てこなかった。
 私とオリフィがプリンを配っている間に、蓮さんがみんなに紅茶の準備をしてくれて、その手際の良さに感心してしまった。
 オリフィが、エクやヒスカの傍で楽しそうに世間話をしているので、輪に入っても良かったのだが、セツカの隣が空いていたので気付かれないように横に座って、どんな反応をするのか窺ってみる。
 素知らぬふりで隣でプリンを食べていると、ようやくセツカが私に気づいて嬉しそうに笑った。

「……何。人の食べてる処、ジロジロ見ないでくれる?恥ずかしいんだけど。」
「いや、フィーってもっと上品に食べるんだと思ってたから、意外でさ。凄く美味しそうに食べてて、
庶民的だなって。」

食べるところを見られると照れるんだけど。

 セツカの様子を気にし過ぎて、食べるのが疎かになったなどとは言えない。死んでも言えない。

「見られていると思ってなかったから、油断しただけよ。庶民的で結構。初めて作った割にはよく出来てるんじゃないかしら。私の腕にはまだまだ敵わないけど。」

 そう言って、残りのプリンだけ上品に食べ終えた私は、空の容器を足元に置くと、口元を何事もなかったようにハンカチで拭った。

「あのさ、フィーの手作りのお菓子を食った事がないから、なんとも言えないんだけど。」

 セツカに指摘されて気づいた事だが、確かにこちらの世界に来て、私は誰かにお菓子を作った記憶がない。
 ついでに言うと、勝手にお菓子作りが上手だと思っているだけで、実際には下手くそな可能性すらあり得る。
 何故なら、鏡の世界に居た時の記憶はとても曖昧で、私の本体であるオリフィの記憶とすら合っていなかった。
 不完全な術式お陰で、こうしてオリフィと異なる自我を持つことができるのが不幸なのか、幸福なのか今でも解からない。

「あら、そうだったかしら?それなら……確かお菓子をプレゼントする日が近かったわね。その時に、セツカが絶賛するようなお菓子を作れば良いのでしょう?」
「え、本当に?フィーが作ってくれるものだったら、なんだって嬉しいよ。ありがとう、楽しみにしてる。」
 
 セツカに楽しみにされてしまったので、今更やっぱり自信がないからやめますと言えなくなった。
 今日から帰ってお菓子作りの特訓をしようと、心の中で私は誓った。

「えこ贔屓なしで、オリフィの作ったお菓子より美味しいって言わせたいだけよ……楽しみにしてもらうのは、悪くはないわ。期待して、待ってて。」
 
 
 でも、その日は結局やって来なかった。
 私は果たせなかった約束を果たす為に、ノウァに交渉を持ちかける事にした。

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 とある悪魔の日常。


「……という事で、セツカにチョコを渡したいから、一日身体を貸して欲しいんだけど?」

「はぁ?どうして私が、あなたの為に身体貸さなきゃいけないのよ。しかも何よ、一日って。チョコ渡すなら直ぐ済むじゃない。」

 フィーとの交信は声に出さずとも頭の中でイメージするだけで、いつでも会話をすることができる。
 但し、会話している間に気が逸れるため、他の人との会話や作業をしている時には思わぬミスを招く事になる。
 私は就寝前にミーティングと言う形でフィーと会話をすることにしていた。

 協力はするとは確かに言ったが、身体を貸すなんてフィーに言った覚えはない。

「それは……買ったものや、誰かが作ったものじゃなくて、私が作らなければ意味がないの。セツカにそう約束したから。」

「馬鹿馬鹿しい。たかだかチョコ一個で何ムキになってるの。どうせセツカさんだって、忘れてるわよ。あ、痛っ。」

 セルフォリーフ側で寝ている私に、深雪が寝ぼけて蹴りを入れてきた。
 仕方なく、意識をセルフォリーフの私に集中させる。
 私は、FPを抱えたままの深雪を押し退けた後、布団をかけ直して真っ直ぐ寝せた。
 歯ぎしりの癖はなんとか治らないものだろうかと、ギリギリと歯の軋む音を立てて眠る深雪を見て不安に思った。
 深雪が起きてこない事を確認した私は、意識の方をアンジニティの私に戻す。

「いいじゃない。どうせノウァは暇なんでしょ。お菓子配る相手も居ないんだから、ケチケチしないでよ。」

「―よし、分かったわ。今からセツカさんのペンダント壊しに行ってくる。」

「あ、ちょっと!?ごめん、流石に言い過ぎたわ!?海より深く反省するから、考えなおして!?」

 布団から半身起こした私に、慌ててフィーが宥めにかかる。

「恋する乙女は不可解すぎて、解せないわ。世界が違うだけで、こうも変われるものなのね。」

「……セツカが信じてくれるか分からないけど、自分の今の状態やノウァの事も説明してみるわ。それなら、悪い条件ではないでしょう?」 

「そう?それでも私に、あまりメリットがないわね。もう少し条件を付けましょうか。アレの中に入って戦闘手伝って。」

 私はちょっと離れた水槽で、目を開けたまま寝ている魚人を指さした。

「え、ちょ……やだ。」

「ちょっと、拒否権発動してる場合じゃないでしょ、あんた。どうせ新しい身体を見つけたとしても、馴染ませるのに感覚の訓練が要るでしょう。予め準備しておいたほうが、都合がいいの。どうせ、こっちの世界で何していてもセツカさんには見えないんだし、いいじゃない。」

「……そんな姿をセツカに見られたら、本気で成仏したくなるわ。」

「ふっ、フィーの覚悟なんて、その程度の事なのね。体面ばかりに気にしてるぐらいなら、そのままペンダントの中に一生引き篭もってるといいわ。」
「……分かった、条件を飲むわ。でも、新しいペットが手に入ったら、少しはマシな方に乗り換えていいかしら。流石にあの中にずっと居るのは心が折れるわ。」
 
「それは運次第だけど、構わないわよ。それじゃ、契約成立ね。期限は一日だけ。セルフリーフの私の意識を落としておくから、自由に使っていいわ。その代わり、時間になったら起きるから、やるべき事は時間内にやっておく事。」

「了解したわ。ありがとう、ノウァ。これで……セツカとの約束をひとつ果たすことができる。」

「……そういう感情は、私にはあまり『美味しくない』のよね。共感したくないから、もう寝るわ。おやすみなさい。」

 フィーにそう言うと、私は意識を深い底へと沈めて眠りについた。



 とある魔女の約束。

 ―交渉が成立し、私は一日ノウァの身体を貸して貰えることになった。
 
 朝起きると、早速街へ材料の買い出しに向かった。
チョコレートは勿論、お酒や生クリーム等、ナッツ類も購入して多彩なトリュフを作る事にした。
 
 テントに戻ると、私は早速エプロンを着てお菓子作りの準備に入った。
 先ずは、チョコレートと生クリームを鍋の中で湯煎して溶かしながら、ある程度混ざったら別の容器に小出しに移して冷えるのを待つ。
 次にそれを指で溶かさないように丸めながら、中身の種を完成させる。
 コーティング用のホワイトチョコや少しお酒を入れたチョコ等は別々に溶かして、チョコの種にコーティングしていった。
 その中の何個かには、ナッツを砕いたものをトッピングして、食感や見た目を楽しんで貰えるようにした。
 冷やして完成したものを一つだけ味見して、納得の行く出来だと確認した後、一個ずつ丁寧に箱に詰めて包装をしてリボンで結んだ。
 
 お菓子作りが終わった後、夜まで少し時間があったが、深雪さんに見つかったり、ファーヴニールさんに見つかったりすると色々ややこしくなるので、二人が寝静まるのを確認した後、セツカに会いに行くことにした。
 二人が寝静まった後、私は速やかに支度を整える。
 私のトレードマークである黒の魔女服は、綺麗に畳んで衣装箱に仕舞ってあった。
 鏡に姿が映れば簡単に支度を整えることができるのだが、映し身も使っているために鏡に姿は映らない。
 ノウァの持っている携帯の機能で、自分用にカメラを向けると姿が映るので、私は携帯を見ながら支度を整えることにした。
 深雪さんが歯軋りをしながら寝ているのを確認すると、深雪さんの抱えているFPに小さく声を掛けた。

「行ってくるわね。深雪さん、もし起きちゃったら適当にごまかして。」
「んじゃ、トイレ行ったって言っておく。いってらっしゃい。」

 FPの小さな返事を確認すると、私はテントを抜けだして、セツカの居るテントの元へと急いだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 息せき切って駆けただけあって直ぐにセツカのテントまではやってきたが、肝心のセツカを呼び出さなければチョコを渡す事ができない。
 私はペンダントの方へ意識を一時的に集中させて、お菓子作りの試食会の時にセツカと約束した時の事を強くイメージした。
 結果的に悪夢となってしまったようだが、断片的なイメージを夢の中のセツカに伝えることができた。

 私はセツカが起きてくるまで、テントの外でじっと待つ事にした。
 しばらくすると、テントから物音が聞こえてきたので、私はとりあえず声を掛けてみる。

「……セツカ。そこに居るなら、出てきて欲しいのだけど。」
 
 警戒したような表情で、セツカはテントの入り口の幕を捲ると、私の姿をじっと凝視していた。

「フィー……なのか。どうして、此処に居るって分かったんだ?」
「細かいことは、気にしたら負けよ。約束を守りに来ただけ。はい、トリュフチョコレート。」

 セツカは手渡された小さな箱を受け取ると、まだ夢見心地なのか呆然と私の事を見ていた。
 こんな状態で、色々説明しても無駄かもしれない。
 いろいろな感情が溢れて押し流されそうになるのを堪え、私は笑顔を取り繕った。

「急に来ちゃってごめんね。要件はこれだけだから、それじゃ。」
 
 私は踵を返すと、ノウァのテントに駆け戻ることにした。

 自分では急いでいたつもりなのだが、ノウァの身体の感覚が馴染んでいなかったようで、あまり早くは走れなかった。
 セツカの追いかけてくる足音がどんどん近づいてくると、腕を強い力で掴まれるのを感じた。
 追いかけてきたセツカに、嬉しさと動揺の入り混じった感情がこみ上げてくる。

「ちょっと待て、色々順序がおかしいだろ!?分かるように説明してくれ!」

 私が言葉を選んでいるうちに、セツカは私の方を見つめて急に落胆したような表情になった。

「……違う。」

 セツカは少し考え込んだ後、私に少し強張った笑顔を向けた。

「酷いですよ、ノウァさん。どうして、こんな手の込んだ嘘を?からかうにしても、やり過ぎです。」

 確かに身体はノウァのものなので、セツカにそう思われても仕方のない事だと受け入れるしかない。
 ただ、自分の渡したプレゼントまでも疑われることだけは、どうしても我慢したくなかった。
 
「嘘じゃないわよ……事情があってノウァの身体を貸して貰ったの。気付かれないようにしたかったのに、追ってくるから。」
「は、い?」

 まったく信じてないといったセツカの表情に、私の胸が締めつけられるように苦しくなる。

「嘘を付くなら、もう少しマシな嘘をついてください。チョコを貰えた事は有り難いですが、こんな渡し方をされたら素直に喜べませんよ。」

 セツカと私だけに分かる記憶であれば、彼も信じてくれるかもしれない。
 私は一縷の望みに賭けることにした。

「ちょっと、私がフィーの振りしてる痛い子みたいじゃない。そんなに疑うなら、私がフィーだって証拠を見せるわ。セツカと私しか知らないような事を聞いてみなさいよ。ちゃんと答えられるから。」
「え……じゃあ、初めてキスした場所は?」

 セツカの問いに、鮮明にあの日のことを思い出して頬が熱くなるのを感じた。

「な、夏の日の偽島の海岸で私から……って、何でそんな事今聞くの!?言わせないでよ、恥ずかしい!」
「ご、ごめん。咄嗟にそれしか思い浮かばなかった。」

 セツカらしいといえば、セツカらしいが、この質問はあんまりだと流石に責めたくなるのを我慢する。

「でも、合ってる。本当にフィーなのか?」
「……分かってもらえたなら、別にいいわ。勘違いされたまま別れたら、私だって辛いもの。」
「正直、にわかには信じがたい出来事で、まだ混乱してる。どういう状況なのか、順を追って説明してくれ。フィーの言うことを、今度は信じるから。」

 セツカがノウァに対する口調から、私に対する口調に変わった事に安らぎを感じる。
 今なら、私の話を信じてくれるかもしれない。 

「話せば長くなるのだけど、ノウァの身体もずっと借りていられる訳ではないから、私の知ってる所だけでも話すわね。」

 私はなるべく簡潔に、自分の置かれている状態をセツカに説明した。
 
 先ず、私の身体は失われてしまったけど、形を変えて留まっているという事。
 セツカに託したペンダントがそれであり、ペンダントの中でも僅かに意識があって、周りの状況はある程度把握できている事。
 ノウァはこちらの世界の私がオリフィに殺されて、テーセウスさんの力で生まれ変わった人だという事。
 同じ魂が共鳴するお陰で、ペンダントからでもノウァとコンタクトを取ることができ、身体を取り戻す協力をしてくれると約束した事を伝えた。

「もっとも、具体的な手段はまだ決まってはいないけど……今まで伝えられなくてごめんね。私の所為でずっと辛い想いをさせてしまって。」

 セツカはしばらく黙っていたが、気恥ずかしそうに私に小声で呟いた。

「……あのさ、今まで意識があったって事は、俺の独り言もペンダント越しに聞こえてたって事?」

 私は返答に困り、言葉に詰まってしまった。


「ああ、そうなんだ。俺、かなり恥ずかしいことしてた訳ね。ははは……そうだったんだ。」

 セツカは自嘲的に笑うと、私から視線を逸した。

「あ、それはっ……いつも意識があって聞こえてたわけじゃないから。それだけ想ってていてくれたことは嬉しかったし、何も伝えられない私が歯痒かったりしたし。」

 落ち込んでいるセツカを、何とか励まそうと思いつく限りの言葉を紡いだ。

「いや……今思えば、ペンダントを握りしめた時にフィーの想いが伝わってくるように感じたのは、錯覚じゃなかったって嬉しくなった。」
「……うん、そうかもしれない。チョコは私がちゃんと作ったものだから、安心して。一つでも、約束を守りたかったから。」

 セツカの温かい手が、私の手を握り締める。

「約束を破ったなんて思ってないよ。覚えていてくれて、ありがとう。でも、過去の約束よりも今いるフィーとの約束が欲しい。また会えるって、約束してくれ。」

 しばらく忘れていた人の温もりの感覚が、セツカに触れることで鮮明に蘇ってくるのを感じた。
 まるで、この身体が私自身の身体のように錯覚するほどに。

「……うん、分かった。必ずセツカにまた会いに来るわ。約束する。」
  
 セツカが頬を寄せ、私を優しく抱き寄せる。
 密かな息づかいが感じられるほどの距離に彼がいる。
 私は磁石に引き寄せられるように、セツカとくちづけを交わしていた。

磁石が自然にひきあうように。










 後でノウァに激しく怒られた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 とある悪魔の目覚め。


 ……。



 …………。



 ………………。





 ●△□◎△※◯!?



(挿絵はENo.1351 サクラ・エゾヤマさんからいただきました)
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