2018-07

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表日記13日目

 綺羅びやかな甲冑や剣などが飾られた石造りの部屋。
 
 中年の男は、机の上で手持ちの剣の手入れをしながら、目の前に立つ和風の着物を着て腰には白鞘を佩びた女の報告を聞いていた。
 中年の男の後ろには彼の背中を守るかのように、二人の少女が微妙だせず立っていた。
 二人の少女の髪は、綺麗に切り揃えられたやや紫掛かった白髪で、その目は柘榴石のように赤かった。
 体温の通っていないような白い肌と、双子のように良く似た容姿はまるで人形のようで、
中年の親父の趣味とするならば些か、気味が悪いものに見えた。
 着物の女は、男の背後の少女達の反応に慣れているのか、気に留める様子もなく報告を淡々と続けていた。
 着物の女の隣には、床に触れるほどの長刀を背中に佩びた、目付きのとても悪い男が退屈そうにつっ立っている。
 この男も、後ろの少女がまるで静物であるかのように、何の興味を示さなかった。
 白鞘の刀を佩びた女性はシズク。長刀を佩びた男はカスミといい、共に剣客流という剣術の使い手である。
 イウラの民と呼ばれる彼らの多くは黒髪のため、邪なるものの血を継いでいると忌み嫌われているが、中年の男にとっては腕さえ立てば出身など気に留めるものではなかった。

「ちゅう事で。そろそろ、ファーヴニールはんが帰って来ますけど、迎えに行かはった方がええどすか?」

「ふむ。もうそんな時期だったか。」

 中年の男、ジェラルドは手入れをしていた剣を机に置いて、顎に蓄えた髭をしごきながら何やら思案し始めた。
 ジェラルドの治める黒剣は、表向きは傭兵や武器の調達を行う武器屋ギルドだが、裏では盗賊ギルドや暗殺者ギルドとしての顔も持つ。
 「黒剣」の剣称を持つファーヴニールは、裏の黒剣を束ねるリーダーであったが、グランツ王国の近衛隊長を務める「聖剣」のサウス・ウインド殺害のほとぼりが覚めるまで、ジェラルドが近隣諸国へ支部長として出向に出していた。
 近衛隊のサウス・ウインドは、グランツ王国の長女であるエレアノール王女と親しい仲であり、長男でファーヴニールの従兄弟の関係でもあるクロークス王子の野心に警戒を抱いていた。
 グランツ国王であるリューノが病に倒れて、次期王位の継承の噂が宮廷内で囁かれ始めた頃、次期国王の候補としてエレアノール王女を四伯に推したのがサウス・ウインドだった。
 国を守る要人に送られる「四つの風」と呼ばれる剣の一つを持つサウス・ウインドの信頼は高く、四伯とも交流のあるサウス・ウインドはクロークス王子の次期王位継承を脅かす存在となった。
 サウス・ウインドは表黒剣の取り纏め者でもあり、ジェラルドの信頼も厚かったのだが、ファーヴニールがクロークス王子との繋がりを持ち、エレノアール王女を支持する諸侯達を暗殺している内情を突き止めると、ファーヴニールの凶行を阻止すべく動いた。

 ジェラルドが事態を把握するよりも速く、サウスは暗殺者ギルド討伐を近衛隊の表向きの任務として、ファーヴニールの拘束を試みた。
 裏黒剣の本拠地へ突撃するも、一騎打ちに持ち込まれたサウス・ウインドがファーヴニールに討ち取られるという結果に終わり、近衛隊も撤退を余儀なくされた。
 国王リューノの信頼も厚かったサウス・ウインドの死の衝撃は大きく、権威ある四伯達の怒りの矛先が黒剣に向かわぬように、ジェラルドはファーヴニールを匿うために諸国へ出向させたのだった。
 
 三年も経てば、ほとぼりが冷めるだろうと見積もっていたジェラルドであったが、今度はクロークス王子が失態を犯して事態が急変してしまっていた。
 病に伏せたリューノ国王の原因が、クロークス王子の盛った毒の所為であると宮廷内で噂が広がり、功を焦ったクロークス派の諸侯達がクーデターを起こした。
 クーデターはサウス・ウインドを失って逆に結束力の強まった、エレアノール王女の率いる近衛隊「白羽根騎士団」に討伐され失敗に終わる。
 クロークス王子が捕らえられた今、ファーヴニールがクロークス王子の解放に向かう可能性が高く、組織の中では「聖剣」を討った者として求心力の高い彼が、ジェラルドの影を脅かす事は容易に想像できた。
  
「……潮時だな。ローゼスは、やはり俺には手が余る。クロークスの復権なぞに、手を貸すような下手は踏まんよ。エレアノールの下についたほうが、甘い汁を吸えるというものだ。」

 ローゼスとはファーヴニールの本名であり、育ての親とも言えるジェラルドや彼が信頼を置ける者しか口にすることのできない名前だった。

「ジェラルド。「黒剣」を斬れるなら俺にやらせろよ。一度ファーヴニールと死合ってみたかった。」

 さっきまで話に関心のなかったカスミが、眼を光らせて身を乗り出すかのようにジェラルドに言い寄った。
 カスミとシズクも裏黒剣の一人ではあるが、イウラの民の気質なのかあまりファーヴニールに忠誠心がある訳ではなかった。
 
「カスミはん一人ほな、手に余るでっしゃろ。うちも一緒にお供しましょか?」

 シズクがカスミに呆れた視線を向けつつ、ジェラルドに尋ねた。

「いや。お前たちの腕は信頼しているが、ローゼスは魔剣使いだ。剣の腕だけでどうにでもなるような相手じゃない。化物の始末は化物に任せるさ。」

「そら、残念ですな。カスミはん殺る気満々やったのに。ほして、その化けモンはよう来たはるんどすか?」

「ああ、後ろにいるじゃないか。二人にローゼスの迎えに行かせよう。シオンの最高傑作で、邪なるものも屠った実績もある。アウレアと、ルシリアで仕留められなければ、俺達がローゼスに殺される番になるが。」
 
 二人の少女はジェラルドの言葉に少しだけ反応すると、部屋に立てかけてあるそれぞれの得物を持って、軽く一礼だけすると音もなく部屋を出ていった。

「……そら、洒落にならへん、てんごですなぁ。」
 
 あんな華奢な小娘二人に何を期待しているのだろうと、カスミとシズクは顔を見合わせて首を傾げた。
 暫くすると、少女の一人が部屋に戻ってきて、ジェラルドのへとつかつかと歩み寄った。
 
「……相手の顔、教えてもらってない。」

「おっと、忘れてた。似顔絵はここにある。この男を狩って来てくれ。」

 ジェラルドの取り繕うような真剣な面持ちに、カスミとシズクは外の景色を眺める振りをして笑いを堪えていた。
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