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2018-09

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表日記17日目(精霊日記-3日目)

 先に戻ると一足先に街に帰ったノウァは、結局ファーヴニール達の元へ戻って来なかった。
 
 エスタでノウァが借りてる部屋をファーヴニールが調べたが、一度帰ってきたような形跡はあるものの、ノウァはどこにも居なかった。
 深雪が一人では寝れないとノウァに聞いていたので、着包み着たまま宿で寝ることを強いられると危惧したファーヴニールであったが、幸い深雪はサクラと一緒にお泊りする事が決まったので、危機回避することができた。
  
「あの、ノウァさん。まだ戻られていないのですか?」

 今日からサクラやレイヤ先生達と同行する事になり、錬金術師達の護衛役のセツカが 
ファーヴニールに話し掛けてきた。
 うさぎ着ぐるみを着たファーヴニールは、セツカの声に振り返ると軽く手を振って返した。

「ああ、街に先に帰るとは言っていたが、戻ってきていないな。部屋の方には一度帰った形跡はあるし、帰る途中で何かあった訳ではなさそうだが。」

「そうですか。まさか、街でノウァさんに何かあったんじゃ……ところで、ニールさん。今日は声が高い感じなんですが、どうしたんですか?」

 心配そうな様子で、ファーヴニールを見るセツカ。

「ああ、声が高いか?ちょっと風邪気味でな。ノウァに何があったのか迄は知らんが、少なくても死んではいない。死んでいたら、俺もタダでは済まないはずだ。」

「風邪ですか?あまり無理しないでくださいね。よく分かりませんが、最悪の事態ではない……と言う事ですね。変な事件に巻き込まれてないといいんですが。」

 セツカは不安を紛らわすかのように、胸元にあるペンダントに仕切に触れながらファーヴニールに答えた。
 
「なに、戦士は戦場に立った時がベストコンディションだ。違和感は禁じえないが、何の問題もない。気になる事と言えば、俺からは連絡できないにせよ、ノウァから魔法などで俺に連絡があってもいいとは思ってるが。まぁ、まずは依頼をこなすのが先だな。」

 予め、食料運搬の依頼を受けていたため、ノウァが居ない事を理由に依頼をキャンセルする訳にもいかなかった。
 ファーヴニールの言動が不穏なので、セツカは眉をひそめたが、これ以上追求しても答えてくれそうにないので話を切り上げることにした。

「分かりました。ノウァさんの事も、何か分かったら連絡ください。依頼の方頑張りましょう。」

 セツカは軽く一礼すると、隊列の前の方へと戻っていった。
 後方を守るファーヴニールは、あるべきものがない為に落ち着かないのか、何処となく動きがぎこちなかった。
 それは、昨日の出来事。
 街に帰って花見と称して、兵庫や道産子、カオツやナナと一緒に飲み食いをしていた時の事。
 ナナが悪ふざけに、大熊猫の玩具屋から買った「聖典カーン」という本で、ファーヴニールの頭を小突いた。
 外見はまったく変わらなかったものの、ファーヴニールの身体は女へと強制変化した。
 そのままナナが逃げ出したため、ファーヴニールの身体は女体のままだった。

「……早く元に戻らんと、本気でまずいな。用をたすのが不便すぎる。」

 不便な主な要因は、ファーヴニールが着包みを着ている事が原因だったが、それを指摘する人は残念ながら周囲には居なかった。
 
 道中、ファーヴニールの前には、サクラと深雪が仲良く話しながら歩いていた。
 遠目から見ると、姉妹のようにも見える和気藹々の二人のせいか、少し後ろを歩いているレイヤ先生の背中が哀愁を漂わせているかとファーヴニールは思ったが、ユカラが彼の傍にいるので和んだ雰囲気は変わらなかった。
 イメチェンして急にイケメンになった道産子と、いつもはやかましい兵庫は妙に初々しいカップルのように、互いに視線をちらちらと交わしている二人も気にはなったが、何かいうと兵庫にどやされそうなので、ファーヴニールは黙って見守ることにした。

 ちんまりとした村にたどり着いて、セツカとファーヴニールが積荷の食料を下ろそうとしていると、村の中央部の方からなにか声がするのが聞こえた。

「た、た……助けてくれえぇぇえぇぇッ!!」
 
 村人たちの喧騒から、村の中心にある広場で何かが起こっているようだった。
 
「ふええー、なんだろー。何かショーでもやってるのかなぁ。深雪、見てくるねー」

 サクラと手を繋いでいた深雪は、突然手を離して中央の広場の方へと駆け出してゆく。

「あ、待って!深雪ちゃん!一人で行ったら危ないよ!」

 慌ててサクラが後を追う。

「まずいですね、俺たちも早く追いかけましょう。」

 食料袋を一旦降ろし、サクラ達を追いかけようとするセツカ。

「確かにサクラが危険な目に遭うのはまずいな。サクラの方の護衛を頼む。深雪は結界が張ってあるから、先ず安全だろう。俺は足が速いほうじゃないから、先に行ってくれ。」

 セツカは頷くと、荷物を一旦下ろして全力でサクラを追った。
 ファーヴニールも自分の荷物を降ろした後、道産子と兵庫に荷物の番を頼んで後を追った。
 セツカはサクラの背中が見えたので、大声を出して彼女を引き止めようとした。

「サクラさん!一人で前に出ては危険ですから、一緒に行きましょう。深雪は結界が掛かってるから大丈夫だって、ニールさんが言ってました。焦らなくても、大丈夫です!」

 振り向いたサクラは、一旦止まって安堵したような表情を見せたが、少し考えこむと険しい表情に変わり、またセツカに背を向けて駆け出した。

「ダメですよ!深雪ちゃんの結界を掛けてるのはノウァさんじゃないですか!深雪ちゃんには今、なんの魔法も掛かってないですよ!」

「あ、そうですよね……深雪をすぐに追いかけなきゃ。くそっ、深雪め。余計な心配かけやがって。あ、待ってください、サクラさん!」

 セツカは脳裏に浮かびあがる不吉な予兆を払拭すると、サクラの背中を追って駆け出した。
 自分の目の届かない場所で、守るべき者を守れない後悔は二度としたくはない。
 それでも、全力で駆けるサクラとの距離はなかなか縮まらず、まるで風が水のように錯覚するほどに纏わりついて、逸るセツカの心を焦らさせた。
 

「うわ。便所コオロギばっかりだ、きめぇ。」

 中央の広場に一足先にたどり着いた深雪は、巨大竃馬に襲われる村人達を見て、それ以上近寄るのをやめた。
 深雪の地方では竃馬を便所コオロギと呼ぶのだが、それが群れているという事は、村の中央の公衆トイレから発生したのだと深雪は勝手に思った。
 
 「深雪ちゃーん!」

 背後から声がしたので、兎の縫いぐるみのFPを抱えながら深雪が振り向くと、此方にサクラが手を差し出しながら駆け寄ってきた。

「あ、サクラお姉ちゃんー。なんか便所コオロギしかいなかったー」
  
 サクラの方へと駆け寄ろうとする深雪に、穏やかだったサクラの表情が急に険しくなる。

「深雪ちゃん、避けて!後ろっ!」

「ふぇ?」

 サクラの声に反応して振り向いた深雪の目に映ったものは、数匹の巨大な竃馬が凄まじい跳躍で飛び込んでくる姿だった。

「うゎあああああ、きめぇええええ!?」

 慌てて避けようとした深雪は、思わず躓いて転んでしまった。
 深雪が立ち上がろうとする前に、巨大竃馬の群れの影が深雪の上に覆い被さった。
 
 巨大竃馬の蹴りが何度も、深雪の身体に叩き込まれる。
 その衝撃は子供の深雪にとって、致命傷になる打撃の筈だったが、何かに保護されているようで、深雪にほとんど衝撃は伝わらなかった。
 不思議に思った深雪は、怖くて思わず瞑ってしまった目を開けると、彼女に覆い被さるようにサクラが身を挺して巨大竃馬の蹴りに耐えていた。
           深雪を庇うサクラまじ天使

「良かった~。深雪ちゃん、怪我はない?」

 サクラは普段通りのおっとりした笑顔で、深雪の頭を優しく撫でた。
 深雪は大丈夫だと笑顔で答えようとしたが、サクラの額から一筋の赤い血が流れ落ちるのが見えて、あまりの動揺に声が出せなくなった。
 
「サクラさん!深雪!大丈夫かっ!」
 
 二人のもとに駆けつけたセツカは、素早く鞘から剣を抜くとサクラに纏わりつく巨大竃馬を横薙ぎで引き剥がした。
 
「セツカさん……よかったぁ~、間に合って。深雪ちゃんの事を頼みますね。」

 顔を上げたサクラは安堵の表情の後、セツカに寄りかかるように倒れこんで意識を失ってしまった。
 サクラの様態は気になるが、衝撃を受けた身体をあまり動かすのは良くない。 
 セツカは目に見える致命的な外傷がない事と、呼吸を確認をすると巨大竃馬を警戒しながら、自分の外套を敷いてサクラをそっと横にした。

「サクラ、お姉ちゃん!?大丈夫……やだぁ!?死んじゃやだよぉ!」

 人形のように動かないサクラに、深雪が駆け寄って体を揺さぶるが、その顔色は血の気が引いたようで真っ青だった。 

「落ち着け、深雪!こういう時は、あまり動かすな!サクラさんの事を看ていてくれ!奴らを片付けたらすぐ戻る!」

 セツカに叱咤され、深雪は泣きながらもFPを枕にして、サクラの額から流れていた血の跡をハンカチで拭った。
 そこからは何をしていいのか分からず、サクラの手を強く握っていると、後ろからユカラの声がした。

「どいて、邪魔。僕が応急処置するから。」

 深雪を押しのけるように、ユカラがサクラに駆け寄ると、荷物から薬を取り出し手際よくサクラの傷口を消毒したり、包帯を巻いたりした。
 後にやってきたレイヤ先生は、ユカラと連携して速やかにサクラの様態を確認しつつ治療に取り掛かった。 
 ファーヴニールも深雪をすり抜けて、セツカと共に巨大竃馬に対峙すべく中央の広場へと掛けて抜けていった。

「ひぐっ……うぅ……」

 サクラたちの様子を見ながら、少し離れた場所で深雪はペタリとしゃがみ込んだ。
深雪に今できる事は誰の邪魔にもならないように、膝を抱えながら声を押し殺して嗚咽する事だけだった。
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