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2018-12

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裏日記17日目

 今は昔の物語。
 
 ある処に予言者の老婆と、その弟子の少女が街から少し離れた森の小屋に住んでいました。
 預言者は、自分の住む王国の崩壊や復権を正確に予言しました。 
予言者の予知は必ず当たると噂が広がり、権力者や商人達がその恩恵に肖ろうと予言者の元を訪ねました。
 予言者は予知の中身を不可解な詩にして書き記すため、その詩の意味を理解できるのは依頼者に予言通りの結果が起こった後でした。
 幸福の予言は良しとしても、不幸の予言を避けられない事に心を痛めた弟子は、師匠に尋ねました。

「どうして師匠は未来を知っているのに、複雑な詩にして伝えるのですか?分かりやすく伝えてあげれば、依頼者さんの不幸を避ける事ができるのに。」

 老婆の師匠は弟子に答えました。

「私の助言で、依頼人の未来が変わってしまったら、私の予知が外れていまうからよ。」

 師匠の言葉に弟子は驚きました。
 依頼者に予言した事故や不幸も、彼女の予知が外れないために、複雑な詩にしているだけだという事を。

「それでは師匠を頼ってきた人達を、誰も救う事ができないじゃないですか。師匠の予言で誰かを助けてあげたいとは思わないのですか?」

 師匠は首を横に振り答えました。

「それは予言者の仕事ではないから。」

 それから暫くして、予言者の住む森の近くで大きな事件がありました。
 王国に手紙で送られた予言者の詩は、この事件の事で沢山の人が死ぬ事を伝えていましたが、その手紙が届いたのは、事件が終わった後でした。

 あまりの不条理に、怒りを覚えた弟子は師匠を責めました。

「師匠は自分の事ばかり考えて、また助けられる人を見殺しにしたんですね。もう、師匠にはついていけません。」

 小屋を出ていこうとする弟子に、師匠は言いました。

「そこまであなたが言うなら、直接教えてあげましょう。あなたはもうすぐ木の下敷きになって死にます。」

 師匠の予言は必ず当たる事を知っている弟子は、恐怖に怯えました。
 師匠に助けを請おうと弟子が駆け寄ると、師匠は弟子を思い切り突き飛ばしました。
 突き飛ばされた衝撃で弟子は転んでしまい、打ち所が悪かったのか意識を失ってしまいました。
 弟子が意識を取り戻した時には、近くにあった大木が折れていて小屋を押し潰してしまっていました。
 弟子には大きな怪我はありませんでしたが、師匠は木の下敷きになって既に事切れていました。
 初めて外れた予言が、師匠の最後の予言になってしまいましたとさ。

 少し前のお話。
 ある処に錬金術師の男と、その弟の少年が街から少し離れた森の家に住んでいた。
 錬金術師の男は王国からの依頼で、特別卒業試験の為に旅の支度を整えなければならなかった。
 出発間近のある夜の事。
 錬金術師の家の扉を叩く音がするので、白髮の少年は扉越しに声を掛けた。
 
 「……誰?」

 「こんばんはー。アカデミーの生徒のウルドです。お話したいことがあって、レイヤ先生にお会いしたいのですけど。」

 声色の高い朗らかな口調に、やや警戒を解いた白髪の少年、ユカラは扉を少しだけ開けるとウルドと名乗る少女を黙って見詰めた。
 黒髪にニットキャップを被った赤い目の少女は、愛想のない白髪の少年を気にすること無く、にこやかに微笑んだ。

「夜分に訪ねてきてごめんね。ねぇ、レイヤ先生はまだ起きてるかな?特別卒業試験の事で、少しだけお話させて欲しいんだけど。」
 
「兄上に言ってくる。」

 白髪の少年は、赤目の少女の瞳孔が青色に見える事を気にしつつも、一旦扉を閉めてレイヤの元へと向かった。

「兄上、アカデミーの生徒のウルドって人が話をしたいって。」 

「ウルド?知らんな。サクラではないのか。こんな時間に訪ねてくるとは、礼儀がなってないな。会ってやる義理もないが、部屋に入れる訳にもいかんか。しょうがない、出向いてやるとしよう。」
 
 黒髪を後ろに束ねた兄上と呼ばれた男、レイヤは気怠い様子で扉の方へ歩いていった。
 錬金術師のレイヤの部屋は出発の準備に伴って、荷造りがほぼ終えられていたため、人を招き入れるのには些か不具合があった。 
 それに何より、夜に生徒を招き入れて不必要なトラブルに巻き込まれたくもなかった。

「何の用だ?俺様は忙しい。要件を手短に言え。」

 レイヤは相手の顔が見える程度に、ノブにてを掛けたまま少しだけ扉を開けると、黒髪にモノクルを付けた少女がやたら恐縮したように深々とお辞儀をした。

「す、すみませんっ。あの、私はサクラの友達のウルドと申します。レイヤ先生に、どうしてもお話したい事があって。」

「だから、何の用だ?前置きはその辺にして、要件をまず言え。そして手短に、だ。」

 黒髪の少女の話が本題に入りそうにないので、レイヤはあからさまに不機嫌な表情をウルドに向けた。
 ウルドは、先ほどまで恐縮していた割には、レイヤの不機嫌な視線の方を意に介する事無く、思いつめたような表情で、胸元で手を握りしめながら男を見詰めた。

「サクラの事を、よろしくお願いします。」

「それだけか?」

「えっ……それだけって?」

 不思議そうな顔をするウルドに、レイヤは面倒くさそうに頭を掻いた。

「それだけの事を、わざわざ夜に来て伝えに来たのか?と言ってるんだ。俺様は既に、王女から直々に依頼を受けている。お前に言われるまでもない。」

「あっ、ええと、そうですよね!?レイヤ先生、ごめんなさい!貴重なお時間割いてくださって、すみませんでした!」

 ウルドは深々と頭を下げると、街の方へと逃げ帰るように走り去っていった。

「兄上、お話は終わった?」

 レイヤが扉を閉めると、いつの間にか近くに居たユカラが枕を抱えながら眠そうに眼を擦った。

「うむ。サクラの友達は、変なやつだった。そろそろ俺様も寝るとしよう。」
 
 不可解な来客の事は既に記憶の隅に追いやると、レイヤはユカラに続いて寝室へと姿を消した。



 森の中でウルドの帰りを待っていた少女は、彼女の足跡が聞こえてくると軽快な動きでウルドの方へとやってきた。
 
「お帰り。早かったね。もう用事は終わった?」

 少し駆けたせいで息がまだ整わないウルドは、手を上げて用事が終わったことを伝えた。
 邪魔くさそうにニットキャップを脱いだ少女の頭には、黒いウサギの耳がピコピコと揺れていた。
 
「お、終わった。よ、よく考えたら、私の行動あやしすぎた……変なことは言ってないから、大丈夫だとは思う、けど。」
 
「それは、もっと前に気づくべきだと思うよ。どうせウルドは何もできないんだから、静観しておけばいいのに。」

 黒いウサギ耳の少女は、ウルドの呼吸が落ち着くように背中を摩った。
 深呼吸をして息を整えたウルドは、拗ねたような表情でウサギ耳の少女を睨んだ。

「それはそうなんだけど、黙っていられなかったというか。とにかく、いいの!私が言いたかったんだから。」

「はいはい。それじゃ、帰ろうか。とりあえず、今の所は大丈夫そうだし。」

 ウサギ耳の少女は愛想良く微笑むと、街へと続く道の方へと軽やかに歩き出した。

「スクルド師匠の言葉の意味……今頃分かるなんて、遅すぎるよね。生きてるうちに、もっと師匠の想いを知っていれば良かった。」

 形見のモノクルを懐かしむように触れるウルドが感傷に浸っていると、呟きが聞こえたのか先に行っていたはずのウサギ耳の少女が戻ってきていた。

「リセットボタンでもあれば、記憶した場所からやり直せるのにねー。」

「ある訳ないでしょ……ゲームじゃあるまいし。」

 ウサギ耳の少女の不真面目な態度に、ウルドは呆れたように溜息を吐いた。
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