2018-07

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表日記18日目(精霊日記-2日目)

 竃馬はセツカや道産子、そしてユカラの活躍により無事に撃退することができた。
 あの後サクラは、レイヤ先生やユカラ達に運ばれて、一足先に街に戻っていた。
 うさぎの縫いぐるみのFPは、竃馬の亡骸を片付けていた村人の一人が、深雪の元へと届けてくれた。
 ウサギの着ぐるみを着たファーヴニールは、鈴梅と名乗る和服の少女と暫く話をしていたが、深雪が広場で佇んでいるのを見つけると、彼女との話を切り上げて深雪の方へ声をかけた。
 
「依頼の方は片付いたし、帰るとしよう。サクラ達は先に街へ戻ったようだな。」

 ファーヴニールの言葉に、深雪は上の空な様子でうんと頷いた。

「む……深雪がここで落ち込んでいても、サクラが良くなるわけじゃない。失敗は誰にだってある。同じ過ちを二度繰り返さなければいいだけの話だ。サクラの様子を確認するためにも、一旦街へ戻るぞ。」

「違うんだよ。深雪ね、サクラお姉ちゃんが怪我するって、知ってた気がする……知ってた筈なのに、結局何も出来なかったんだよ。」

 ファーヴニールが深雪へ手を差し伸べると、拒否するように深雪はサクラの血が付いたままのFPを両手で抱えて肩を震わせた。
 深雪の態度に、ファーヴニールは首を傾げる仕草をしたが、思い出したかのようにポンと手を打つと、できるだけ優しく深雪の頭を撫でた。

「それはあれだ、デジャヴというやつだな。俺も経験したことはあるが、錯覚みたいなものらしい。本当に未来が分かったなら、深雪はサクラに怪我をさせたりはしないだろう。気が動転してるだけだ、あまり気に病むな。」

「違うよ!深雪は分かってたのに……ううん、やっぱいい。」

 深雪は、泣いて腫れた目でファーヴニールを見上げると、なにか言いかけて口を噤んだ。

「うむ。少し休めば落ち着くだろう。反省することはいい事だが、あまり自分を責めるな。そろそろ街に戻るぞ。」

 ファーヴニールが再び深雪の手を引くと、深雪は目を擦りながら再び啜り泣きはじめた。
 子供の対応などほぼ経験していないファーヴニールは、泣いてばかりいる深雪をどう宥めていいのか悩んだまま街まで帰還した。

 街に着いてノウァの部屋に戻ろうとすると、宿では玩具屋さんの大熊猫が深雪の事を待っていた。
 大熊猫は、いつもの様に軽い調子で、修理を頼まれていた深雪の携帯電話を手渡した。

「おいこら、大熊猫。ナナがお前の店で買った、聖典カーンで殴られてこのザマだ。奇妙な品物売りやがって、トイレ行く度に気になるだろうが……ちょっと来い。」

 深雪の携帯を渡し終えて、上機嫌だった大熊猫の首根っこをファーヴニールが猫を捕まえるように掴むと、着包み越しからでも分かるような殺気を放ちながら宿の外へと引き摺っていった。

「アッー!やだ、ファーヴニールサンこわぁーい!
お代は、ノウァさんから頂いていまスんで。何かあったら、言てくだサイネー!」

 大熊猫はファーヴニールに連れて行かれてしまったので、深雪は仕方なくFPを抱えながらノウァの部屋へと戻った。
 部屋には昨日から行方不明だったノウァが、何事も無かったように紅茶を飲みながら寛いでいた。

「お帰りなさい。あら、深雪どうしたの……随分目が腫れてるけど?」

「なんでノウァ居なかったの……ノウァのアホぅ。」

 深雪が急に抱きついてきたので、ノウァは悶えながら変な声を漏らした。

「しょうがないでしょ、色々事情があふぅ!?ちょっと、いきなり抱きついてこないで……結構辛いんだから。」
 
 深雪が驚いてノウァから離れると、ノウァは血塗れになっているFPを見てとても悲しそうな顔をした。

「血ってなかなか落ちないのよね……FPが血塗れってことは、深雪も怪我をしたの?見た目はなんとも無いようだけど。」

「深雪は大丈夫だけど、深雪のせいでサクラお姉ちゃんに怪我をさせちゃった。」

 深雪の目に涙が溜まるのを、ノウァは指で拭いながら少女を軽く抱き寄せた。

「……珍しく深雪が反省してるのね。私がついていなかった事にも原因はあるから、深雪のせいだけじゃないわ。サクラさんにはちゃんと謝ったの?」

 深雪が黙って首を横に振ると、ノウァは深雪の顔を覗きこんで視線を合わせた。

「FPは私が綺麗にしておくから、深雪はサクラさんの所に行って、謝ってきなさい。いる場所は分かるのでしょう?」

「サクラ姉ちゃんは……多分、レイヤ先生の所だと、思う。」

「こういうことはね、代わりに誰が謝っても仕方がないことなの。深雪がサクラさんにちゃんと言わない限り、逃げてるのと変わらないのよ。反省しているなら、まずは謝るべきだわ。」

「違うの。深雪、どういう風に謝っていいか分からなくて。深雪、お姉ちゃんが怪我すること分かってたはずなのに、何もしなかったから……あぶっ。」

 深雪の言葉を遮るように、ノウァは深雪の頬を両手で挟んだ。

「なに深雪なのに小難しいこと考えてるの?一言、ごめんなさい。余計な事は言わなくていいの。サクラさんだって、深雪の言い訳聞かされても困るだけでしょう。」

「……レイヤ先生の所に行ってくる。」

 深雪はまだ何か言いたげな表情だったが、FPをノウァに手渡すと部屋から出ていった。
 少女が出ていくのを確認すると、ノウァは深い息を吐きながら崩れ落ちるように座り込んだ。

「ノウァの方も怪我酷いんじゃない。幻覚被せしても、痛いものは痛いでしょ?」

 ノウァに抱えられたFPが呑気な口調で言った。

「いつまでも寝てるわけには、いかないでしょ。この程度の怪我で動けなくなったなんて、思われたくないの。とりえず、ちょっと休んだらFPを洗濯するわ。」

 深雪のことも心配だけど。とノウァは付け加えて、ベットの方へ倒れこむように転がり込んで目を閉じた。

 
 深雪はレイヤの部屋の近くまでは来たが、扉をノックする勇気が出ずに通路の前で立ち竦んだ。
 ノックをして、ユカラやレイヤが出てきた時の事を想像すると、門前払いされそうで今一歩踏み出すことができなかった。
 暫くレイヤの部屋の前を右往左往していると、ノブが回る音が聞こえたので深雪は慌てて通路の角へと隠れた。
 足音はそのまま深雪の方へとやって来たが、今更逃げ出すわけにもいかず深雪は俯きながら足音が通り過ぎるのを待った。

 「そんなところで何をやってるんだ、貴様は。」

 無愛想な男の声に深雪が顔をあげると、少し疲れたような表情をしたレイヤが深雪の前に立っていた。 

 「あ、レイヤ先生……。」

 レイヤに何か言われそうで怖くなった深雪は、胸元で手を握りしめながら振り絞るように声を出した。 

 「レイヤ先生……サクラお姉ちゃんを、お願い……。お願い、します……。」

 『サクラはもう大丈夫だ。後で、会いに行ってやれ。』

 泣き出しそうな深雪を、あやすように頭を撫でるレイヤ。
 深雪の脳裏に一瞬、鮮明な映像が映し出されると、深雪の身体はますます恐縮した。

 「サクラはもう大丈夫だ。後で、会いに行ってやれ。」
 
 深雪のイメージをなぞるように、レイヤは深雪の頭を優しく撫でた。

 ―また、だ。

 サクラが怪我をした時も、深雪は過去にあった出来事のように、映像が再生される既視感を憶えていた。
 起きる悲劇が分かっていても、その結果を変えることができない。否、変えようともしない自分に対する失望と絶望が深雪の心を締めつけた。
 サクラが瀕死で助かる事も、もう分かっていた。
 未来を告げてしまうと、サクラが今度は死んでしまうかも知れないという不安と、結果を知っていたのに何もしなかった自分が責められる事が怖くなった。

 「レイヤ先生ごめんなさい……」

 「俺様に謝るより、後でちゃんとサクラにでも謝っておけ。あと、少しは元気を出しておけ。サクラが気にする。」

 レイヤはそれだけ言うと、深雪を残して別の部屋に入っていった。
 サクラの寝ている部屋へ行っても、今はサクラの意識は無い。
 意識が戻ったら、サクラお姉ちゃんにちゃんと謝ろう。
 元気になったサクラお姉ちゃんになら、本当の事を言っても許してもらえるかもしれない。
 もしかしたら、深雪の変な感覚も錬金術の薬で治せるものかもしれない。
 深雪は自分にそう言い聞かせると、結局サクラに会わずに帰ることにした。


「……そういえば、携帯直ったんだっけ。」

 郷愁にふけった深雪は、母親の声が聞きたくなった。
 携帯のアドレスは奇跡的に残っていたらしく、深雪は実家の佐藤醤油店へと電話をかけた。
 電波は繋がっているようで、呼び出し音が数回なった後で電話を取る音が聞こえた。

「佐藤醤油店ですー。御用はなんですかー」

「……!?」

 自分の声を、自分で聞く機会があまりないので違和感があるが、その声は間違いなく深雪自身の声だった。 

「……なんで、そっちに深雪がいるの。冗談だよね、美鈴お姉ちゃん?悪戯やめてよぅ。」

「ふぇ?なんで深雪の声がするの……うわぁ、おっかねぇぇ!?なにこれぇ!?」

 ガチャン!
 
 一方的に電話を切られたショックで、深雪は持っていた携帯を思わず落とした。
 慌てて深雪が拾うと、携帯電話の液晶画面が割れて画面も真っ黒なまま何の反応もしなくなった。
 大熊猫にまた頼めば直るかもしれないが、直ったとしてもまた同じように『あっちの世界』の深雪と繋がってしまう事を考えると、怖くて電話をかける気にもならなかった。 

「もぅ、やだよぅ……お家に帰りたいよぅ……お母さん……」

 泣きながら歩く深雪は、宛もなく何処かをずっと彷徨っていた。
 歩くことも泣くことも疲れ果てた深雪は、見覚えのある扉の前までたどり着くと、力尽きて扉にもたれ掛かるように意識を失った。


 少女が辿り着いた場所は、不幸を糧として喰らう悪魔のいる部屋だった。
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アイコンは魔術商会さん(E№41)からいただきました。とても感謝なのです。

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