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2018-11

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精霊日記1日目

―あのお話の続き

 ノウァが用意した異送鏡をくぐり抜けた私は、気がつくと天井にひらひらのカーテンのついた豪華なベッドに寝かされていた。        
 ふわふわの布団の心地よさを感じつつも、この部屋が何処なのか半身だけ起こして辺りを見回してみる。
 ノウァの話が転送先は5年前のジェイド王国と言っていたので、きっとここはジェイド王国のどこかなんだと思う。
 そういえば、一緒に来たはずのフォルテが居ない。 

「ふぉるて!ふぉるて!どこにいるの!?返事してよぅ!」

 ノウァやうさぎ先生や、サクラお姉ちゃんと離れ離れになった寂しさが急にこみ上げてきて、私は泣きそうになりながらフォルテを探した。

「やぁ、おはよう深雪。あれから一日中眠りっぱなしだったよ。時間遡行すると、体力も消耗するのかな?」

 フォルテの声のする方を見ると、ベッドのすぐ隣のキャビネットにフォルテは置いてあった。

「ふぉるて!良かった、居なくなったのかと思っちゃった!ねぇ、ここ何処……ジェイド王国って所なの?」

 フォルテを思いっきり抱きしめると、こみ上げてきた寂しさが少し落ち着いたような気がした。

「うん。僕の分身からの情報は正確だからね。ノウァも僕のことを道標にするように、深雪に預けたんだと思うし。」

 フォルテの言ってることはちんぷんかんぷんだったけど、ここがジェイド王国という所なのは間違いないらしい。


「そっかー。よく分かんないけど、ウルドって人の魔法を邪魔すればいいんだよね?5年の間に深雪、魔法使えるようになれるかなぁ……頑張らなきゃ。」
「うん、頑張って。あ、そうだ。深雪は僕と二人でいる時以外は深雪って名乗っちゃいけないよ。この世界に深雪はまだ来てないことになってるからね。」
「えーっ!それじゃ、深雪は自分の事どう呼べばいいの?口癖だし、つい言っちゃうかもしんないでしょ!」
「んー、そうだね。名前は聞かれても忘れちゃったって言えばいいよ。あと、その口癖は直すこと。元の世界に帰りたいんでしょ?今過去が変わったら、未来まで変わって元の世界に帰れなくなっちゃうよ。」

 深雪の事を深雪って言ったら、元の世界に帰れなくなるっておかしくね?
 そうは思ったけど、本当に元の世界に帰れなくなったら困るので、フォルテの言うことをきくことにした。

「分かったよぅ……じゃ、ふぉるても深雪って呼ばないでね。言われたら、応えちゃうもん。」
「了解。まぁ、僕は縫いぐるみで通すから、君が話しかけない限り喋らないから安心していいよ。と、誰か来たみたい。そろそろ僕は黙るから、うまく自分の事誤魔化してね?」

 すぐにドアをコンコンとノックする音がして、ピンク色の髪がくるくる巻いてある女王様みたいな人が入ってきた。
 本や漫画では見たことがあるけど、本当のお姫様を見るのは初めてなのでドキドキした。

「良かった。ずっと眠ったままだったから、起きてこないのかと思った。城の中庭で倒れていた事は、覚えているか?」

 ピンク髪の人の片目は前髪で隠れていて見えなかったけど、もう片方の紫の目が優しそうな感じで私のことを見つめていた。

「あ、えっと……あんまり覚えてなくて。助けてくれたのは、お姉ちゃんですか?ありがとう、ございます。」
馴れ馴れしい言葉を使ったら牢屋に入れられそうな気がしたので、ドキドキしながらお姉ちゃんにお礼を言った。

「そう畏まらなくてもいい。私の名前はエキュパーシュ。エクと呼んでくれても構わない。師匠のスクルドが訪ねてきてくれたから、帰り道は迷わずに済みそうで良かったな。」

 師匠?スクルド?誰それ?
 私が周りを見回すと、エキュパーシュさんの後ろに割と小ざっぱりしたお婆ちゃんがいた。

「えっ。それって、私の事?」
「ん……スクルドから、弟子が薬の素材のキノコを探しに行ったまま戻ってこないので連れ戻しに来たと聞いたぞ?それも覚えていないのか?」

 エキュパーシュのお姉ちゃんがよく分からないことを言っているので、フォルテをチラ見したけどフォルテは縫いぐるみのフリをしてるだけだった。

「ええっ、何それ!スクルドって誰っ?多分それ、私じゃないよ、だって私は……!」

 私がエキュパーシュお姉ちゃんにここに来た理由を説明しようとすると、さっきのお婆ちゃんに頭をポンポンと叩かれ黙らせられた。

「すみません、エキュパーシュ様。うちの弟子はまだ混乱していて、記憶も曖昧なようです。私がスクルドよ。顔まで忘れてしまったのかしら?」

 いや、お婆ちゃんほんとに知らねーし。
 そう言う前に、スクルドって名前のお婆ちゃんが割と力強く私の腕を引っ張ってきた。

「それでは、弟子がお世話になりました。家に帰れば落ち着くと思いますので、失礼いたしますね。」
 
 いや、ちょっと待って待って!
 このお婆ちゃんボケてんじゃないの!?
 私は慌てて足でブレーキをかけてお婆ちゃんに引かれるのに抵抗した。

「ちょっと、お婆ちゃん……私は弟子じゃないよ!私は婆ちゃんの事知らないもん。人違いじゃないの?」
「そう。じゃあ聞くけど、人違いだとしたらあなたは誰なの。自分が誰なのか教えてくれるのかしら?」
「えっ、それは……その……。」
 
 深雪って名乗っちゃダメだってフォルテが言ってたのを思い出して、なんて言っていいのか分からなくなった。

「あなたは未来から来たのでしょう?私はジェイド王国の予言者だから分かるの。下手に騒いで目立ちたくないのなら、大人しく私についてきなさい。」

 このお婆ちゃん高性能だ!
 ピッタリと言い当ててきたので、私はびっくりしてお婆ちゃんを見つめた。
 私が深雪だって知られたら、元の世界に帰れなくなっちゃうかもしれない。 

「スクルドのお婆ちゃん……私の事を何処まで知ってるの?」
「さて、ね。そろそろ戻るわよ。あなたを看護してくれたエキュパーシュ様に、しっかりお礼を言って来なさい。」

 背中をポンとお婆ちゃんに叩かれた私は、何となくノウァの顔が浮かんできてお婆ちゃんと重なった。

「ん、何やらスクルドと取り込み中の様だったが、話し合いは終わったのか?」

「はい……エクお姉ちゃん。助けてくれてありがとう。私ね、エクお姉ちゃんに初めて会ったような気がしないの。何処かで会ったような気がする。」
 
 エキュパーシュのお姉ちゃんは不思議そうに首を傾げたけど、少ししゃがんで私の頭をなでなでした。

「そうか、私も初めて会った気はしない。昔お世話になった人によく似ているから。」
「ほら、そろそろ戻りますよ。それでは、エキュパーシュ様。ごきげんよう。」

 お婆ちゃんの家はお城からかなり離れた森の中にあった。

「ねぇ、お婆ちゃんはどうして私がお城に運ばれた事を知ってたの?やっぱそれも予知なの?」 
「そうね。あなたが来ることは星を見て分かったわ。でも、あなたの目的をすべて知ってる訳ではない。先ずは、あなたの名前を教えてくれないかしら。」
「えっと、それは……名前とか目的とかよく覚えてなくて、忘れちゃったみたいで……。」
「そう、分かった。名前がないのは困るわね。それでは、私があなたに名前をつけてあげるわ……あなたの名前はウルドよ。」
「えっ、ウルド?なんでっ?」

 急に出された名前に私は驚いて、お婆ちゃんに言い寄った。
 私が探してる人がウルドなのに、私の事をなんでウルドって呼ぼうとしてるのこの人?

「何でって……私が今決めたからよ。それとも、本当の名前を思い出したのかしら?」
 
 深雪が深雪と言ってはいけないとはフォルテに言われたけど、ウルドにされちゃったら元の世界に帰れなくなるんじゃないかと心配になった。
 フォルテをすがるようにチラ見したけど、相変わらず縫いぐるみのフリをしてピクリともしなかった。

 スクルドはそれ以来、私の過去を聞くことはなく、薬の処方や魔法の使い方の基礎などを分かりやすく教えてくれた。
 ただ、予言に関する事はなぜか教えてくれなくて、私はスクルドにそのことを何度も聞いた。

「予言者になると、運命の糸から外れて世界を見なければならない。一度糸から外れたら、元の世界には還れないのよ。」
 
 決まってスクルドはそう返した。
 スクルドとの共同生活は2年ほどだったけど、私が死ぬという予知を外してあっさり亡くなってしまった。
 身寄りの無くなった私は、エキュパーシュ様のご厚意で王立錬金術アカデミーの特待生として寮生活をする事となった。

 王立錬金術アカデミーは、ジェイド王国の魔術師養成のために建てられた歴史ある学校で、国が一時的に滅んだ後も、王立の名を冠したまま運営を続けてきた逸話がある。
 現在の国王であるバレット王も、王立錬金術アカデミーの出身者だった。
  
 名誉ある魔法学校に入学した私は、サクラお姉ちゃんに会えるかもしれないと思うと不安と希望で胸がいっぱいになった。
 年上だったサクラお姉ちゃんと自分が同い年になって、同じ学校に通う事になるなんて、小学六年生の頃に異送鏡に飛び込んだ私には考えもしない事だった。
 念の為に校内でウルドと名乗る生徒を探し回ってみたけど、学園には自分以外にウルドと言う名を持つ生徒や先生は、私一人だということが分かった。
 事前にフォルテとも相談をして、過去でもウルドという友人とサクラお姉ちゃんと仲が良かったと聞いているので、私がウルドと名乗って接触をしても未来に影響を及ぼす可能性は少ないと判断した。

 とは言うものの、実際にサクラお姉ちゃんに会った時、自分の溢れ出す感情を抑えこむことができるか、不安で仕方がなかった。 
 サクラお姉ちゃんに会ったら、出来るだけ自分の癖を出さないように意識しようと、私は心に言い聞かせた。
 教室に入って周囲を見回すと、蝶の髪飾りを付けた桜色の髪の少女がすぐ目に止まった。
 私がどう声を掛けようか思案していると、こちらの様子に気づいたサクラお姉ちゃんの方から歩み寄ってきた。 
「初めましてー。あたし、サクラ・エゾヤマって言います。良ければお名前、教えてもらえますか?」
「はいっ、やっぱりサクラさんですよね!わ、私はウルドっていいます。あのっ、よろしく、お願いしますっ!」

あんなに仲の良かったサクラお姉ちゃんと、初対面の会話をしなければならない違和感にむず痒さを覚えながらも、話し掛けてもらった嬉しさと懐かしい声に心臓が高鳴っていくのが分かった。

「やっぱりって、そんなに有名だったんですか、あたし?ウルドさんですね。あの、良ければ姓の方も教えて貰えますか?」
「あ、えっと。私の中では有名だったもので!え、姓ですか?実は、亡くなった師匠につけて貰った名前で、本当の名前を知らないので……ウルドって名前だけなんです。」
「そうだったんですか……ごめんなさい、余計なこと聞いてしまって。」

 申し訳なさそうな表情のサクラお姉ちゃんに、嘘をついた心がチクリと痛んだ。

「そんな、気にしてないから、大丈夫ですよ?同じクラスになれて嬉しいです。これから宜しくお願いしますっ!」
 
 過去…未来と同様に相性が良かったみたいで、サクラお姉ちゃんとすぐに名前で呼び合える仲となった。
 錬金術の勉強は勿論、買い物や食事なども一緒に出掛けることも多くなり、セルフォリーフで出会った時のサクラお姉ちゃんとアカデミーで知り合った此処にいるサクラが、まったく同じ人物あることを私は確信したのだった。
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