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2018-12

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精霊日記2日目

「ウルドって人は私以外には居ないみたいだから、アカデミーの特別卒業試験で私が召喚魔法を使わなければいいんだね。良かった……願いは上手く叶いそう。」

 夜の寮の一室で、リラックスしながら黒うさぎの縫いぐるみのフォルテに話しかける。
 元のウルドは誰だったのか?という新たな疑問もあったけど、他の世界を知る術がないので悩むのをやめることにした。

「うん。ウルドが過去の深雪を呼びださなければ、結果的に元の世界に戻ることが出来るよ。呼び出されなかった深雪は。」
「えーっ、結果的って言い方は引っ掛かるんだけど。私が私を呼ばないっていうのも違和感あるけど、ウルドの魔法を阻止するのが私の役目だったんでしょ。」

 フォルテの言いかたに、私は不満そうな表情で抗議した。

「そうだね。でも僕もこっちに来て知った事だけど、ウルドは君なんだよ?過去の深雪がこの世界に呼ばれなくても、ウルドとしての君は残る。そして、深雪の現れない世界は、君の知ってる未来とは繋がらない。でも、過去の深雪は結果的に元の世界に戻った事になる。ノウァの言ってたことは、そういう事だったんだよ。」

「えっ、何それ……今一緒にいるサクラと、私がセルフォリーフで会ったサクラお姉ちゃんは別人だって事?ノウァも、ウサギ先生も違う人になっちゃうの?」
「そりゃそうだよ、誰も深雪の事なんて知らないんだから。あと、未来が変わったらすべてが深雪の都合のいい方に進むとは思わないほうがいいよ。竃馬に蹴られてサクラは怪我を負わないかもしれないけど、違う要因で怪我をしたり死ぬことだってある。勿論それは、サクラ以外にも言えることだけどね。」

「そんな……それじゃ、私は何のために……。」

 何のために私は過去に来たのだろう。
 元の世界に帰るためにこれまでしてきた努力は、自分ではない並列世界の深雪の為にしてきた事になって、願いを叶えるはずだった私は誰にも知られる事なくウルドとしてこの世界で暮らすことになる。
 アカデミーで出会ったサクラは、私の知ってる過去のサクラお姉ちゃんの筈なのに、私が過去を変えることによって佐藤深雪を知らない世界のサクラお姉ちゃんになってしまう。
 もちろん、サクラお姉ちゃんだけではない。
 私がこの世界に呼ばれて出会った人達は、みんな私の事を知らない並列世界の人になってしまうという事だ。
 不意に襲いかかる喪失感に涙があふれるのを堪え、私は必死に問題の解決の糸口を模索した。
 
 絶望するにはまだ早い。
 私が12歳の深雪をこの世界に呼ばない事で世界が変わってしまうのなら、過去に起こった出来事を私がなぞって行けば、元の世界へと未来は繋がるのではないか。
 現にアカデミーで出会ったサクラは、今の時点では間違いなく私の知っているサクラお姉ちゃんだった。
 少なくとも今は、私の知っている元の世界と繋がっているという確信。 
 今いる過去の私と未来の私を元の世界に繋ぐ糸が、まるで予言者になったかのように見えた気がした。

「分かった……私、過去の私をセルフォリーフに呼ぶ。」
「え、それだと深雪が変えたかった過去と同じになっちゃうんじゃない?またサクラが大怪我するのを見過ごすってこと?」
「うん。そうなっちゃうけど、私の知ってたサクラお姉ちゃんとの約束を守るには、それしか方法がないから。」

 既に私の知ってる出来事とはいえ、またサクラお姉ちゃんが未来で酷い傷を負う事になる。
 血塗れで私に笑顔を向けていたサクラお姉ちゃんと今のサクラの笑顔が重なると、決意が揺らいで胸の痛みに圧し潰されそうになった。

「でも、君の願いは元の世界に帰ることだったんじゃないの。セルフォリーフに深雪を呼んだら、結局元通りじゃないか。」

 結局元通り。
 フォルテの否定的な言葉は、逆に私の決意を固める後押しの言葉になった。

「そうだよ、私の願いは元の世界に帰ること。サクラお姉ちゃんの居たあの場所に帰るの!あの時の私は何も出来なかったけど、今の私ならサクラお姉ちゃんの力になれる!」

 この世界で私が学んできたことすべてが、元の世界の未来に繋がる希望だと思うと、さっきまでの虚無感が嘘のようにやる気が漲ってきた。

「君が日本に帰りたいって泣いてたのが嘘みたいだよ。分かった。ウルドが深雪のいた場所に戻るのなら、僕も最後まで案内人になれるからね。協力するよ。」
「ありがとう、ふぉるて!だから大好き!」

 ベッドの上に置いてあったフォルテに、私は勢い良く飛び込んで抱きしめた。


 ―運命の日。
 候補生の一人に残った私は、最終選考の課題において「異世界から来た者を元の世界に帰す魔法」に失敗して選考から落ちた。
 異世界から呼び出した12歳の深雪は、フォルテの座標把握能力のおかげでうさぎ先生の元に無事届けることができた。

「あの魔法はお父さんが、蓮くんを間違って呼び出した時の魔法だな、懐かしい。課題を『異世界にいる人を召喚する魔法』にしておけば満点だったのに、惜しかったな。」

 試験に落ちた所を見ていたエキュパーシュ様が励ましてくれた時、私は照れ笑いしながら頷くしかなかった。
 それから数カ月後、特別卒業試験の課題に解決の糸口がなかなか見つからない事もあり、アカデミーでは改めて特別卒業追試験が行われる事となった。
 私はその選考に選ばれ、今度は意図的に失敗することもなく合格を果たした。
 一足先にセルフォリーフへ旅だったレイヤ先生とサクラ。護衛の騎士団副隊長のセツカと合流するようにと、王宮に呼ばれた私はヒスカ王女からの勅命をいただいた。
 
「思えば5年も、あっという間だったね。ウルドも大変だったでしょ、深雪呼んでからは記憶がリンクしちゃったんじゃない?僕はいつもあんな感じだから慣れてるけど。」

 部屋で旅の支度を整える私に、ウサギの耳を生やした黒髪の少女がベッドに転がりながら話し掛けた。
 記憶の共有という言葉をよくフォルテからは聞いてはいたが、デジャヴのような感覚がそれだと気がついたのは今更ながらの事だった。
 過去に黒うさぎのフォルテが飛んでも、白うさぎのフォルテは過去に行く前の世界に居て、同じ記憶を持っているらしい。
 フォルテの感覚で行くと、過去も未来も今も本のページのように好きな時にいつでも読むことができるものなのかもしれない。 
 そんな時系列が狂った感覚で、よく精神が不安定にならないなとフォルテに感心するのだった。 

「うん……昔の記憶と今の記憶がごっちゃになって、宙に浮いた感じだったかな。でもこれで、サクラ達にまた会えるんだね。」
 
 レイヤ先生やセツカ兄ぃの事を思い出すとともに、無愛想だったユカラがどんな顔をするのか楽しみだった。
 ノウァやウサギ先生の事も気になるし、ナナお姉ちゃんやリアーナお姉ちゃん達にも会える事が嬉しい。
 お菓子なキャンディさんや、磯臭いクラゲなブレインが相変わらずなのかも気になった。

「はしゃぐのはいいけど、これから先の未来はもう読めないんだから、あまり無茶しないでよね。」

 ウサギ耳を生やした少女、フォルテはベッドから起き上がると、私の荷造りを手伝ってくれた。

「未来なんて見えないほうが楽しいじゃん。決められた事を決められた通りに実行するほうが、よっぽど疲れるよ。ふぉるて、そろそろ戻ってくれないと、私が持っていけないでしょ。」
 
 フォルテはハァイと軽い返事をして、元のうさぎの縫いぐるみになった。
 フォルテは人の姿で動けるようになってからは、私のフォローをすすんでしてくれるようになった。
 ウサギの縫いぐるみのフォルテを、人の姿に変身できるようにしたのは、私がアカデミーで学んだ魔法の成果の一つだった。
 旅立ちの準備を整えた私は、お世話になったエキュパーシュ様に挨拶をした後、転送用魔法陣を使ってサクラのいる世界へと向かった。

 辿り着いたのはとある街。
 私が異送鏡を使って過去へ遡った時と、当たり前だが街の風景はまったく変わっていなかった。
 甦る想い出に想い出に胸が一杯になりながら、私はサクラ達の泊まっていた宿を目指す。
 宿の下にある酒場の近くにまでやってくると、聞き覚えのある声が喧騒の中から聞こえてきた。

 早くサクラに会いたい。

 私は逸る気持ちを抑えきれずに、酒場の中へと駆け込んだ。
 入口の扉を勢い良く開けると、レイヤ先生やセツカ兄ぃと一緒にいるサクラの姿が見えた。

「あれ、ウルド?どうして、ここにいるの?」

 呆気にとられたような表情で、サクラが私の顔を見た。

「卒業追加試験があって、合格したんだよ。また一緒だね!」
 
 私は再会の喜びに感情を抑えきれなくなって、サクラに向かって飛び込んだ。

「そうなんだぁ、おめでとう。嬉しいけど、ちょっと大袈裟じゃない?」
 
 歓喜余って嬉し泣きしまった私に、サクラは吃驚したように目を丸くした。
 そんなサクラの様子を気にすること無く、私はサクラの存在を確認するかのように強く抱きしめた。

「やっと、やっと戻ってこれたよ……ただいま、サクラお姉ちゃん。」

 甘えるようにサクラの柔らかい身体に顔を埋めて、思う存分私は泣いた。
 5年の歳月を経て、私はサクラお姉ちゃんの居るもと世界に戻ることができた。
 そして、この世界に置いてきた12歳の私にやっと逢えたのだ。

 
 ※E-No.655(サクラ・エゾヤマ)の日記に続きます。
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