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2018-12

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精霊日記3日目

 ※今回のネタはレイヤ・センドウさん(E‐No.655)のサブキャラ、セツカさんに関する話です。
 フィーは昔の自分の使用キャラですが、現在ではNPC気味な扱いとなっています。
 もう秋だというのに、サマーバケーション的ななにか。


 澄み渡る青い空、燦々と煌く眩しい太陽と海。
 ニフルハイム伯爵領にも海はあるが、ほとんどの季節が氷に覆われ、氷が溶けたとしても潮の流れが早く、海で泳ぐ者はいなかった。
 海水浴というものを初めて目にするフィーは、どの様に遊んで良いかも分からず、ビーチパラソルの下でアイスキャンディーを食べながら、周りの人の海水浴を憂鬱そうに眺めていた。 
 オリフィエルも、テーセウスに誘われて一緒に海水浴に来ている筈だが、これだけの人混み中を探して合流する程の気力がフィーにはなかった。
 一応、海には入れるように水着は持ってきたものの、斬琉乃に無理やり付き合わされて来たので、はしゃぎたい気持ちも湧いてこない。
 薄手のTシャツを羽織ったままフィーは、自分を置いて真っ先に海へと飛び出していった、変態ナルシスト野郎の斬琉乃(キルノ)が、泳ぎ疲れて戻ってくるのをただ待つだけだった。

「連れてくるだけ連れてきて、放置プレイとはさすが斬琉乃ね。私……何を期待してたのかしら。」

 アイスキャンディーを食べ終えたフィーは、暇つぶしに持ってきた小説を荷物から取り出して、読書にでも耽る事にした。
 夜にはヒスカ達から花火に誘われてはいたが、それも夜まで用事があって行けない、オリフィエルの分の穴埋め的立場なのは否めない。
 元々、自分は鏡の魔女のオリフィエルの分身なのだから、都合のいい代替え的立場に腹を立てることがおかしいのだが、理屈では理解していても感情の方では素直に受け止めることができず、己の狭量さに自己嫌悪するしかなかった。
 鏡面世界で呼び出された者は、術者と同じ性質を持つ。
 それなのに、オリフィエルが呼び出した鏡の分身の筈のフィーは、オリフィエルとはかなり異なる性格なため、オリフィと呼ばれるオリフィエルと区別して、周囲からフィーと呼ばれるようになった。
 
「それもこれも、オリフィの魔法の使い方が未熟なのがいけないのよ。」

 フィーがため息をついて、栞の挟んだページを開こうとすると、背後から伸びてきた影が小説を取り上げた。
 少し呆気にとられてフィーが影の主を見上げると、翠色の目に赤髪の青年、雪火が微笑を浮かべてこちらの反応を楽しんでるようだった。

「やぁ。せっかく海に来たのに読書?もっと楽しい事しようよ、泳ぎに行くとか。」
 
 雪火はオリフィエルの友人の女の子、ヒスカと共に冒険をしている青年で、オリフィエルの従姉にあたるオリフラムから戦闘技術を学んでいる。
 雪火とオリフィエルとの仲はよく知らないが、分身の身である自分に親しく微笑みかける位なのだから、それなりに仲は良いのだろうとフィーは思った。

「あら、ご心配ありがとう。でも、あの芋洗い場みたいな騒がしい場所は肌に合わないの。ここで読書でもして、ツレを待ってる方がまだ気が楽だわ。本、返してくださる?」

 フィーに素直に本を返したあと、雪火は誰かを探すように周囲を見回してみた。

「……で。そのツレさんは、フィーを待たせっぱなしにして、何してる訳?ジュースか焼きそばでも買いに行ってるの?」
「斬琉乃がそんな気の利く相手だったら、こんな所で読書なんかしてないわ。多分、今頃海で楽しく泳いでるんじゃない?私を荷物持ちにして。」

 雪火とはオリフィエルの紹介で顔見せに会った程度で、彼に愚痴をこぼす程の仲ではなかったが、フィーは夏の暑さのせいもあってか、不満そうな態度をあらわにして溜息をついた。

「それだったら、フィーも泳ぎに行けばいいじゃないか。荷物は俺が見てるからさ。せっかく海に来たんだから、少し遊んできなよ。」
「えっ!いや……私は海に来たのが初めてだし、泳げるかどうかも怪しいから遠慮するわ。」
 
 雪火はフィーのうろたえる表情に一瞬きょとんとしたが、勝手に納得したようで頷きながらフィート腕を引いた。

「何だ。最初から海に来るのは初めてだから、泳ぎを教えてって言ってくれればいいのに。荷物は一緒に持っていけば盗まれないよ。斬琉乃さんだってすぐ帰ってこないだろ。浅めなところなら溺れないしさ、行こ行こ!」
「ちょ、ちょっと!誰も泳ぎ教えてくれなんて言ってないでしょ!何でそういう話になってるの!?って、そんなに引っ張るなぁああああ!」

 着替えの荷物を持った雪火に引き連れられながら、フィーは抵抗も虚しく海の浅瀬へとやって来た。

「まずは身体を浮かすことに慣れる事かな。水より塩水の方が浮きやすいから、力を抜けば自然に浮いてくるはずだよ。手は持っててあげるから、身体を伸ばしてみてよ。」
「ええと、こういう感じ?本当に沈まない?手を離したら、冗談でも怒るわよ?」
「そんな事したら、後で俺がオリフィに怒られちゃうじゃないか。フィーをいじめたって。まだ力抜けてないんじゃない?手に力入ってるよ。」

 オリフィエルがまるで自分の保護者のように聞こえたので、フィーはオリフィエルの都合のいい代替え的立場を再び思い出し、行き場のない憤りが再び込み上がってくるのを感じた。
 雪火の泳ぎの指導も、結局はオリフィエルの為にしてる事だと考えると、煩わしくさえ思えるようになった。 

「……うるさいわね。そもそもこんな事、私は頼んでないわ。なんで私に構うのよ。放っておいてよ。」
 
 フィーは身体を伸ばすのをやめ、浅瀬で膝立ちすると、雪火の握る手を強引に振りほどこうとした。
 だが、雪火はフィーの手を掴んだまま、困ったような表情でフィーを見詰めた。

「それは……フィーのことが好きだからじゃないか。放ってなんておけないよ。」
「え、どういう事なの?」

 一瞬呆気にとられていたフィーだったが、燻っていた鬱憤のような感情が、雪火の一言で抑えきれないほどに込み上げてきた。

「雪火が好きなのは私じゃなくて、オリフィでしょう?オリフィが自分のものにならないから、代りに私?そうよね、私はそういう立場ですものね。」

 自虐的に微笑むフィーに、雪火は戸惑って彼女の肩を揺すった。

「違う、何言ってんだよ!俺はオリフィの事じゃなくてフィーのことが好きなんだ!勝手に勘違いするなよ!?」

 勘違いしてるのは雪火の方だ。
 自分は歪なかたちで具現化されたオリフィエルの鏡像にすぎない。
 ピグマリオンの物語をふと思い出しながら、フィーは小悪魔的な微笑みを浮かべて雪火を誂うように囁いた。
 

「私のこと?笑わせないで。私はオリフィの分身でしかないわ。そんなに私の事を好きにしたいなら、オリフィにお願いしなさいよ……フィーを好きなようにさせてくださいって、ね?」
 
 ―パシン。
 頬に伝わる衝撃。
 フィーの微笑みは止まり、何が起こったのか分からないような表情で呆けてしまった。
 それは雪火が自分を叩いた事だと痛みで気づき、自分の頬が熱くなってくるのを感じた。

「ふざけんな、お前に言ってんだよ!勝手にオリフィの所為にして捨て鉢になってんじゃねぇ!」

 雪火に叩かれた頬を摩りながら、フィーは俯いたまま何も答えなかった。

「って、悪りぃ。熱くなりすぎた。オリフィの事は関係ないって言いたかったんだ。俺はフィーの事を……あ。」

 不意に顔を上げたフィーは、雪火を毅然とした表情で睨みつけた。
 声をかけようとした雪火の頬を、フィーは返事の代わりに思いっきり引っぱたくと、着替えの荷物を置きっぱなしにして走り去ってしまった。

「ちょっと、フィー!待て!どこ行くんだよ!?」

 すぐさま、着替えの荷物持って追いかけた雪火だったが、人ごみに紛れたフィーを見失ってしまい、仕方なくビーチパラソルのあった場所まで戻ることにした。
 フィーはビーチパラソルに戻った形跡もなく、着替えを持ったまま途方にくれて溜息を吐いた。
 空気を読まずに泳ぎ終わった斬琉乃が、大満足な表情で帰ってきた。

「ふぅ、久々に海を堪能したな。あれ、分身の魔女いのはどこに行った?」

 フィーの事を変なあだ名で呼ぶ斬琉乃に、雪火は着替えの入った荷物を手渡しした。

「多分、先に帰ったんだと思います。あとこれ、着替えです。フィーの着替えも入ってますから。」
「お、おう……で、何でお前がここにいるんだ?」

 斬琉乃の質問に答えることなく、雪火は頬を摩りながら項垂れて海水浴場を後にした。


 ー多分後半に続く。
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