2018-07

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

精霊日記4日目

ー遅れてきたサマーバケーション後編

 夜。
 浴衣に着替えたヒスカやエキュパーシュ達と共に、雪火も浴衣に着替えて再び海岸にやってきた。
 ヒスカと花火の約束をしていた筈のフィーが来ていないか周囲を見回してみたが、来ているのはオリフラムだけで、フィーの姿は見当たらなかった。

「お、どうした。雪火?浮かない顔して。せっかくの花火なんだから、楽しくやろうよ。スイカ割りもやるみたいだしさ。」

 淡雪と一緒なので、機嫌のいいオリフラムにバシバシと肩を叩かれ、雪火は力なく笑うと目を逸らした。

「ははは……今は、そういう気分じゃなくて。師匠、フィーとは一緒に来たんじゃないんですか?」

 さり気なくフィーの動向を探ろうと訪ねた雪火だったが、表情に現れていたようでオリフラムはニヤリと笑うと、雪火の肩を引き寄せた。

「なんだ、雪火。フィーの事が気になるのかい?もしかして、昼間何かあった?」

「な、何にもないです!それより師匠、母さんがバケツの水汲みに行ってますよ、手伝ってあげないと。」

「おお、淡雪に重いものを持たせるわけにはいかないな!すぐ行く!フィーは後で来るって言ってたけど、気まぐれな奴だからアテにしないほうがいいよ、んじゃ!」

 颯爽と淡雪のあとを追いかけてゆくオリフラムに手を振り、雪火はヒスカ達と少し離れた海沿いの岩場のほうへとフラフラと歩いて行った。

「はぁ……何であんな事になったんだろ。」

 波の見える岩場に一人しゃがみ込むと、雪火は水面に揺れる月をただ眺めていた。
 フィーがどうしてあんな事を口走ったのか、雪火はいろいろ考えてみたが答えは見つからなかった。
 話を聞こうとしないフィーに思わず怒鳴ってしまった事や、手を上げてしまったことに今更ながらに後悔の念が募ってきた。

「謝ったほうがいいよな……やっぱ。」

 理由はどうであれ、女の子に手を上げたことに変わりはない。
 殴り合っても全然気にしないオリフラム師匠と顔は似てるけど、もっと繊細な相手なのだ。
 フィーを探すにしても探す宛も無く、情報源なはずの師匠はフィーをそっち除けで、雪火の母親の淡雪にべったりで話にもならなかった。
 それから、何処からともなく親父の焔がやってきて、師匠をぶっ飛ばすまでが一連のコントだった。

「はぁ……フィー。どこに居るんだよ。」

 波間に漂う月と夜空に輝く月は、オリフィエルとフィーの関係のように雪火は思えた。
 フィーは、オリフィエルの姿を水面に映した月のような存在。
 だが、水面の月に触れることはできないが、フィーには触れることができるし話すことだってできる。
 明らかにオリフィエルとは違う個性をもつフィーに、好意をもって何がいけないのか。
 雪火の問いに答えてくれるものは、ここには居ない。
 フィーと喧嘩別れした心の痛みだけが、雪火の胸を締めつけていた。

「……となり、空いてる?」

 急に声がしたので雪火が見上げると、花柄に紺色の浴衣姿に着替えたフィーがすぐ傍に立っていた。

「フィー……あ、うん。空いてる。」

 雪火の返事で、フィーは黙って隣に座ると、雪火が見ていたように水面の月を眺めはじめた。

「あ、あのさ!さっきは……」

 雪火がフィーの方を向いて話しかけようとすると、フィーは冷やかな視線で雪火を睨み返した。

「なんで謝るの?別に謝るようなことしてないでしょ?謝るんなら、やらなきゃいいじゃない。」
「いや、そうだけど……そうじゃなくて!」

 雪火が立ち上がろうとすると、フィーは雪火の腕を引っ張って強引に隣へと座り込ませた。

「謝られたら、私が謝れないでしょ。ちょっと、座ってて。」

「えっ……あ、うん。」

 フィーの様子を伺いながら、雪火はおとなしく隣で海辺を眺めることにした。

「叩かれたときは、反射的に叩き返したけど、雪火の言うとおりだと思った。図星だったから余計苛立ったのかもしれない。」

 雪火は何かフィーに声を掛けるべきか迷ったが、珍しくフィーが饒舌なので暫く黙って彼女の話を聞くことにした。

「誰も私の事なんて見ていないと思ってた。私もオリフィの分身でしかないって、自分に言い聞かせるのが正しいものだとも思ってたわ。」

 フィー肩が雪火の身体に寄りかかるように触れたので、雪火は彼女を支えるように肩へと手を添えた。

「でも……本当に、私はただの出来損ないのオリフィの分身かもしれない。それでも、私のこと見ていてくれるの?」

 フィーの視線に気づき、雪火もフィーを見つめ返す。
 水着姿も色っぽかったが、髪の毛をアップにして細い首筋から見えるうなじがとても色っぽく見えた。
 
「当たり前だろ。何度も言うけど、俺はオリフィじゃなくて、フィーが好きなんだ。」

 またフィーに逃げられてしまいそうな気がして、雪火の肩に触れる手には無意識に力がこもっていた。 

「ちょっと!あんまり好き好きって言わないで!どう反応していいか分からないでしょ!」

 フィーが不意に立ち上がろうとするので、雪火は思わずフィーの腕を引き寄せた。

「ごめん、でもフィーのこと、好きだから……って、うわ!?」

 怒ったように睨みつけながら、引き寄せた反動で雪火の方へとフィーが突進した。
 同じような展開で、フィーに昼間に引っぱたかれた記憶が蘇り、雪火は思わず目を瞑って衝撃に身構えた。
 だが、その衝撃はやってこなかった。

「あ、れ?」

 雪火が恐る恐る目を開けると、逆に目を閉じたフィーの唇が雪火の唇にそっと触れた。
 思いがけない出来事に、雪火は思わずフィーを掴む手を緩めてしまった。
 ゆっくりと身体を起こしたフィーは、頬を紅く染めながら袖で口元を隠した。

「……ごめんなさいと、ありがとう。」

 フィーは雪火にそう言うと、小走りに雪火から離れていった。

「ちょ、ちょっと!?待てよ、フィー!」

 雪火が慌てて立ち上がって呼び止めると、フィーは振り返らずに足を止めて雪火に言った。

「今、一緒に花火に行ったら、顔が赤いのバレちゃうでしょ!先に行ってるね……待ってるから。」

「ああ、師匠やヒスカにひやかされちゃうよな。俺も、落ち着いてから合流するよ。」

 夢見心地でフィーの後ろ姿を手を振りながら見送ったあと、雪火は頬を両手でパシパシと叩いて気合を入れ直した。

 「夢じゃない……よな。」

 口元を指でなぞり、フィーの柔らかい唇の感触を思い出すと、雪火の頬は緩みに緩みまくってしまった。

 
スポンサーサイト

● COMMENT ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://mementomorinomaigo.blog81.fc2.com/tb.php/223-084546c9
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

まとめ【精霊日記4日目】

ー遅れてきたサマーバケーション後編 夜。 浴衣に着替えたヒスカやエキュパーシュ達と共に、雪火も浴衣

精霊日記5日目 «  | BLOG TOP |  » 精霊日記3日目

リンク

プロフィール

佐藤深雪

Author:佐藤深雪
いつから改装中だと錯覚していた?

なん だと…

アイコンは魔術商会さん(E№41)からいただきました。とても感謝なのです。

ノウァ
ファーヴニール
深雪

とことこ

最近の記事

カテゴリ

辺境地域(キャラのホーム世界設定) (4)
辺境黒歴史(ホーム世界の歴史) (3)
偽島2期日記 (25)
Fallen Island (2)
いただき物 (2)
オリフ (32)
ネヴァ (8)
カーズ (25)
偽島1期(TiA) (20)
カーズの日記 (1)
ティアの交換日記 (1)
おりふぃ (14)
偽島3、4期日記 (46)
六命表日記 (14)
六命裏日記 (9)
精霊日記 (19)

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。