2018-07

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精霊日記5日目

「……割と不味くないわ。ただ、なんで卵ばっかりなの。」
    
 深雪の作った朝食の目玉焼きと、卵焼きと、スクランブルハムエッグを食べながらノウァは不満げに深雪を睨んだ。

「ちょっと!全然料理できなかったんだから、少しは進歩したでしょ!師匠に教わったのが卵料理ばっかだったんだから、そこは我慢してよっ!」

 事の始まりは、深雪がノウァとニールに子供の時にお世話になったお礼に、料理を作ると言いだした事だった。
 深雪が5年前にノウァ達と一緒に行動していた時は、ノウァの作った料理か宿の下にある酒場で朝食をとっていた。
 その頃の深雪は、ノウァの料理を手伝うどころか片付けもせずに、毎日食っては遊んで寝る生活を繰り返していた。
 そんな自分の過去を省みて、ノウァ達に恩返しをしようと思い立ったのが今朝だった。
  
「うむ、まぁ食う分には問題はない。毎日これだとさすがに飽きるが。」

 ウサギの着ぐるみを着込んだまま、ニールは卵焼きや目玉焼きをパクパクと食らった。
 そんな奇妙な光景は、既に慣れてしまったノウァや深雪には特に気にかける部分ではなかった。
 
「わぁ!うさぎ先生ありがとー!うさぎ先生にも食べてもらえて深雪嬉しいよ!」
「うむ、だが食う最中に抱きつくのは止すんだ。着ぐるみの中が大変なことになる。」

 ニールに飛びつく深雪を横目にノウァは眺めながら、溜息を吐きつつも口元は微笑みで緩んでいた。

「毎日は遠慮したいけど、たまには深雪が作るのも悪くはないわね。私も手が空いて助かるわ。」
「なんだよー、ノウァ。もうちょっといい言い方ないの?割とほめてないよね、それ?」

 深雪が不満そうに頬を膨らませている表情を、ノウァは楽しそうに眺めながら頷いた。
 
「ごちそうさま……深雪。手伝うから、食器の片付け終わったら少し話をしましょう。」
「ありがとノウァ。え、いいけど、何、畏まっちゃって?」
 
 さっきまで微笑んでいたノウァが、急に眉を細めて真剣な表情をするので、深雪は思わず首を傾げた。
 
 食事の片付けを終え、ニールが階段を下りて酒場に寛いでいるのをノウァは確認すると、深雪に椅子に座るようにすすめた。
 テーブルの対面の椅子にノウァは腰掛けると、肘をテーブルに立て両手を組みながら深雪の方をじっと見詰めた。

「私に言いたいことがあるはずでしょう……深雪。」
 
 彼女の問いに、深雪は視線を宙に泳がせながら考え込んでいたが、ポンと手を柏手をするとテーブルからノウァの方に乗り出すように前屈みになってノウァの方に微笑んだ。

「えへへ、そうだね。ちゃんと言ってなかったよね。ただいま、ノウァ。そして、ありがと。」

『ありがとう』

 深雪の答えに、ノウァはますます混乱した。
 5年前、深雪が元の世界に帰る方法として、こちらの世界に来た深雪が消えることを告げずに過去へ転送した経緯がある。
 ノウァは深雪を結果的に消滅させるように導き、再び深雪に会う事はもう無いと思っていた。
 その過去に飛ばした筈の深雪が、ウルドとなって再びノウァの元に姿を現した。
 深雪があの時帰りたいと言っていた元の世界……日本に返す契約も果たす事なく、深雪は元の世界のループに囚われたまま、無駄に5年を過ごしてしまった事になる。
 深雪の不幸がノウァの甘美な糧となった今、深雪が自分を恨まない筈がない。
 お礼を言われる事がまったく理解できないことだった。

「はぁ?どうして、ありがとうなの。私は深雪を騙したの。本当は殺したいと思っているんでしょう?でも、私が死んだら深雪も魔法が使えなくなるのよ。知ってる?悪魔と二人っきりで契約してはいけないって。」

 侮蔑的な笑みを浮かべながら、ノウァは深雪の頬に触れた。
 深雪はきょとんとした表情だったが、ノウァに触れられてやがて視線を落とすと肩を震わせ始めた。

「ふふ、悔しいのね……説明してあげないと現状が理解できないなんて、深雪はやっぱり深雪ね。ニールも居ないわよ。少しぐらいあなたの本音を見せなさいよ、ねぇ。」

 顔を伏せていた深雪の顎を無理やり持ち上げると、ノウァは歪んだ笑を浮かべながら深雪の顔を覗き込んだ。
 彼女の表情を見たノウァは、一瞬にして余裕の笑みが消え、口を開けるほど茫然としてしまった。

「ひゃぁはははは!ちょっと、何カッコつけてんのノウァぁ!中二病じゃないの、ひゃはははははは!」
「な、なんで笑ってるのよ!ほんとおかしいんじゃないの深雪!?」

 狼狽えるノウァに深雪は席を立って近づくと、思い切りノウァを抱きしめた。

「恨んでなんてないよ。私はノウァに感謝してるんだもん。自分の運命を切り開く力と、サクラを助ける事のできる力を貰ったんだから。」

「何言ってんの……自分がどういう境遇に置かれてるか理解できてるの?深雪は元の世界と隔絶されたのよ。あなたを知る人間なんてもう何処にもいないの。赤の他人のウルドとしてこれから生きるの!なんで笑ってられるのよ!」
  
 彼女から逃れようと必死に抵抗するノウァだったが、深雪の力は予想以上に強く、振りほどくことはできなかった。
 ……いや違う、深雪に抱きしめられて安らぎすら感じて、抵抗する気がない自分にノウァは気づいてしまった。

「えへへ、私を知ってる人ならノウァがいるじゃない。だから私は何も変えないで戻ってきたんだよ。」

 深雪がノウァに頬をすり寄せて囁くと、ノウァは自分を支える力も失って膝まづいてしまった。

「ああ、もう……深雪の馬鹿、ほんとうに馬鹿……なんなのよ、ほんとうに……ッ!」
「あれ、もしかしてノウァ、また泣いてるの?ノウァは泣き虫だねー」

 深雪に頭を撫でられて、ノウァは「ばかばか」と深雪の背中を叩きながら肩を震わせていた。
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