FC2ブログ

2018-09

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

精霊日記9日目

 錬金術アカデミーでの学園生活は、学生寮に入っている深雪にとって必ずしも楽しい事ばかりでは無かった。
 クラスの中でも成績が優秀で生徒会の役員でもあるダリアは、錬金術アカデミーの学長の親戚にあたる娘だった。
 金髪で整った容姿を持つダリアは、社交的でもあり自然とクラスの中心的存在となった。
 ダリアを慕う女の子達は、次第に彼女を持ち上げるようになり、最初は謙虚だった彼女も次第にリーダー立場を確立し、自分に従わない生徒達に精神的圧力をかけるようになっていった。
 深雪も王族のエキュパーシュ様が目にかけてくれている事や、予言者であるスクルドの弟子という肩書きもあるため、ダリアから一目置かれる立場となり、彼女の取り巻きの女の子からまるで監視されているような毎日を送った。
 ただし、完璧なる預言者スクルドの弟子としての未知の驚異に怯えるせいか、直接的な嫌がらせを深雪が受ける事はなかった。
 代わりに深雪が少しでも学校の規律に反したり授業で答えを間違えたりすると、教室からはどこからともなく嘲笑が漏れた。
 寮の食事でも自然とテーブルから隔離されていたり、団体行動の時には深雪だけ省かれるようなことが頻繁に起きていた。
 深雪と仲の良かったサクラは、ダリアとその取り巻きの行動を不審に思い何度か深雪への嫌がらせを問い詰めたことがあるが、決定的な証拠は見つからず逆にサクラもダリアから目をつけられるようになった。
 
 そんな折に決まったのが、サクラの特別卒業試験生としての選定であり、試験の候補に選ばれなかったダリアの嫉妬心は頂点に達していた。

 「……ちょっと、ウルド。貴方から言ってあげてよ、サクラに。特別卒業試験生なんて荷が重すぎるから辞退するようにって。」
 寮の階段の踊り場で呼び止められた深雪が声の方を向くと、上の階段にダリアとその取り巻きの二人の女子生徒が、こちらの方を睨みつけていた。
 声をかけてきたのは、取り巻きの一人である短い赤髪のプリムラで、割と直情的な運動の良くできる生徒だった。
 彼女は階段を2段飛ばししながら踊り場にヒラリと舞い降りると、踊り場の壁際にいた深雪の行場を封じるように片手で壁をドンと叩いた。

「あの、すみません。通してください。それと……どうして、私がサクラにそんな事言わなきゃいけないんですか。」

「だって~、サクラさんったら遠回しに辞退するように言ってあげても、通じないんですもの。親友のウルドさんの言う事なら素直に聞いてくれると思って~」

 取り巻きのもう一人である桃髪で琥珀の眼鏡をかけたトレニアは、ゆっくりと階段を降りると深雪のもう片方の壁際に手を伸ばして通せんぼをした。
 トレニアは機嫌を損ねると、些細なことでも規則違反を指摘し、クラスでは監視員と呼ばれ恐れられている存在だった。
 
「……学園で決めたことなのに、なんでサクラが遠慮しなきゃいけないんですか。私がそんな事言う訳ないじゃないですか。」
 
「ウルド。貴方とは仲良くしたかったのですけど残念ですわ。」

 音もなく静かに踊り場にいつの間にかいたダリアは、通路を塞ぐプリムラとトレニアの真ん中に立ち、腕を組みながら顎に手を添えて微笑んでいた。
 
「言うことを聞いてくださらないなら、私……ウルドの秘密をみんなに言ってしまいそう。」

 ダリアは金髪をふわりと靡かせながら、深雪にわざとらしい悲しそうな表情を見せた。

「えっ、秘密って!?な、何のことですか!?」

 ダリアに自分が深雪である事や、未来からやって来たことがバレたのだろうか。
 深雪は動揺を抑えつつ、今ある情報を必死に整理した。
 ダリアとはダリア側から拒絶されていたイメージがあり、深雪と行動を共にした事はほとんどない。
 考えられるとすれば、寮の部屋に盗聴器などが仕掛けられてFPとの会話を聞かれてしまった事ぐらいだが、FPが話せることを知っているのは自分だけの筈で、もし部屋に盗聴器が仕掛けていたとしてもFPが深雪に間違いなく報告する筈だった。
 
「とぼけんなよ、ひとごろし。」

 プリムラは壁に押し付けていた拳を壁に再度叩きつけて、深雪の顔を仕方ら覗き込むように睨んだ。
 
「人殺しって、どういう事ですか。意味がよく分からないんですけど。」

 深雪は自分の素性を知られた訳ではない事に密かに安堵しつつ、プリムラの謂れのない罵りに流石に苛立ちを覚えた。
 
「あらやだ~、あくまでもシラをきるつもりなのかしら。ダリア様は知っていらっしゃるのよ。ウルドさんがスクルド様を殺したんでしょ~」

 トレニアは眼鏡をクイッと上げると、得意満面な表情でダリアへ目配せしをした。

「ねぇ、ウルド。貴方はスクルド様が事故で死んだって周りには言っているようだけど、アカデミーにはウルドが死ぬって予言をスクルド様が外して死んだって報告してるのよね。」

 確かにダリアの言うとおりアカデミーの入学の際には、ありのままに起こった出来事を書類に書いて提出した。
 その内容をダリアが知っている事は、おそらく親のコネか何かで深雪の弱みを握るために調べたことなのは分かるが、そこまでして人を陥れようとするダリアの腐った性根に深雪は怒りを通り越して呆れ返った。

「……そうですけど、それがどうかしましたか?」

「なにこいつ、こんだけ言っても分かんねぇのかよ!アホじゃねぇの!」

 深雪の故郷によく居たような、うんこ座りスタイルで下から睨みつけてるヤンキー姉ちゃんなプリムラがあまりに滑稽で、ウルドは思わす吹き出してしまった。

「ちょっとぉ~、ウルドさん。ここは笑うところじゃないですよ~、空気読んでくださいよ~」

 トレニアは微笑みながら、深雪の髪を無造作に掴むと強引に引っ張った。

「やめなさい、トレニア。言わなきゃ分からないなら教えてあげるわ。」

「あのっ、ほんと、やめてください。私が何したって言うんですかっ……」

 下手に此方から手を出すと、風紀委員のトレニアが嘘をでっち上げて深雪のせいにするかもしれない。
 髪を引っ張られた痛みに耐えながら、自分を囲う三人の女子生徒を涙目で深雪は睨みつけた。

「スクルド様の予言は、今まで外れたことが無いって知ってるのよ。ウルドは自分が助かりたいから、自分の身代わりにスクルド様を殺したのでしょう?」

 ダリアは同意を求めるように、ウルドに首を傾げて微笑んだ。

「違います、師匠が私を助けてくれたんです。勝手な推測はやめてください。」
 
「あら、そう。でも、私とウルドの言うことを、周りはどっちを信じると思う?人殺しのお友達を持って、サクラも可哀想。」
 
「サクラは私の事を信じてくれますから。お好きにどうぞ。」

 深雪は笑顔で応えると、呆気にとられたダリアの脇を素早く潜ってすり抜けた。

「なっ、ちょっと!待ちなさいよ!?」

 ダリアが慌てて深雪を捕まえようと手を伸ばすと、逆に背中を押し出す形となり踊り場に深雪の体がふわりと浮いた。
 呆気にとられている三人の目の前で、勢いのついた深雪は階段から転がり落ちてうつ伏せになったまま動かなくなった。
 
「なにー、今の音ー?すっごい音したよねー?」

 下の廊下側から他の女子生徒の声がしたので、三人は姿を見られる前に慌てて階段を駆け上がって逃げ出した。

「あれ?今、上の方に誰かいたよねー?」

「ちょ、なんか人が倒れてるんですけど!?」

「何、何、なんか動いてないよ。やばくね?」

 周りに人集りが出来たころ、深雪は何事もなかったようにむくりと立ち上がると、服に付いた埃を手で払いながら照れ笑いした。

「あ、すみません。大丈夫です、なんかお騒がせしましたっ!」

 周りの生徒が驚いているところを、深雪はすり抜けるように駆け出して自分の部屋に戻った。

「ふぅ、事前に結界準備しといてよかった。ダリアも負い目があるから、当分おとなしくしてくれるかな。」

 ベッドに寝転がりながら深雪は安堵の息を吐いた。
 しばらく寝転がって落ち着くと、ダリアがサクラにちょっかいを掛けていると言っていたのを深雪は思い出してベッドから飛び起きた。

「そうだ!サクラを励ましてあげなきゃ。明日は一緒にご飯に誘おう!サクラが元気になってくれるといいなぁ。楽しみだなぁ、えへへー」

「何だかよく分からないけど、いい事あったの?」

「いんや、全然。」

 兎の縫いぐるみのFPを抱きしめると、深雪はにっこりと微笑んで横に首を振った。


 

スポンサーサイト

● COMMENT ●

占ってあげる☆

x44123q6
さてさて、今週のあなたの運勢、早速占ってあげましょう!
結果は・・・
大吉!!まちがいなし!!!全てがうまくいっちゃうかも☆
http://0O95840a.anp.xac6a.net/0O95840a/

山村正子の独り言

すごいですね!


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://mementomorinomaigo.blog81.fc2.com/tb.php/230-eaeb8e35
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

まとめ【精霊日記9日目】

 錬金術アカデミーでの学園生活は、学生寮に入っている深雪にとって必ずしも楽しい事ばかりでは無かった

精霊日記10日目 «  | BLOG TOP |  » 精霊日記8日目

リンク

プロフィール

佐藤深雪

Author:佐藤深雪
いつから改装中だと錯覚していた?

なん だと…

アイコンは魔術商会さん(E№41)からいただきました。とても感謝なのです。

ノウァ
ファーヴニール
深雪

とことこ

最近の記事

カテゴリ

辺境地域(キャラのホーム世界設定) (4)
辺境黒歴史(ホーム世界の歴史) (3)
偽島2期日記 (25)
Fallen Island (2)
いただき物 (2)
オリフ (32)
ネヴァ (8)
カーズ (25)
偽島1期(TiA) (20)
カーズの日記 (1)
ティアの交換日記 (1)
おりふぃ (14)
偽島3、4期日記 (46)
六命表日記 (14)
六命裏日記 (9)
精霊日記 (19)

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。