FC2ブログ

2018-09

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

精霊日記11日目

「へぇ、ニールがうさぎの着ぐるみなんて着てたの?信じられないー」
 
 元々細い目をさらに細めて黒髪の女は、腹を両腕で抱えて笑いだした。

「素性を知られるよりは都合がいいだろう。それなりに装甲にもなって便利だった。」

 俺の答えに副官であり、四伯爵の一人の娘であるメルフィー・ロングソードは、割とだらしないケタケタとした笑い声でまだ笑い続けていた。

「あー可笑しいー、ニールも左遷されてだいぶ丸くなったのねぇー、良いことだわ。」

 黒剣の出向期間が終わり、本部のあるニフルハイムへ戻った俺を街の門の前で出迎えていたのは彼女一人だった。
 ニフルハイムの街中は、結界で温度を調節しているので割と快適だったが、街の外から門を潜るまでは本来の気候の極寒であり、わざわざ門の前で出迎えるメルフィーは相当なもの好きだと俺は思った。

「それにしても、他の連中も迎えに来ないなんて薄情ねぇ。あとで査定落としておくようにジェラルドに言っておいたら?」

 黒剣の本部に向かう裏路地を歩きながら、メルフィーは相変わらずヘラヘラとした笑いを浮かべながら俺の胸を小突いた。

「別に戻る日にちを伝えたわけでもない。変に気を利かして迎えに来るのはお前ぐらいなもんだ。どうせ俺が本部に戻れば、連中とは顔を合わすのだから問題ない。」 
 
「はいはい、そういう所は相変わらずなのねぇ。落ち着いたら、あっちで何があったか聞かせて貰う事にするわ。ニールが居なくてずっと退屈してたんだから。」

「確かに色々あった。そうだな、宿で飯でも食いながら土産話でもしようか。」
 
 俺はメルフィーの頭に乗った雪を払うと、頭をあやすようにぽんぽんと叩いた。
 結局、その些細な約束すらも俺は果たすことができなかった。

 気がつくと俺は、うさぎの柄の布団と枕のついたベッドに寝かされていた。
そこは、うさぎの模様の壁紙にうさぎをモチーフにした家具が置いてある、うさぎの縫いぐるみに囲まれた部屋だった。
 
「良かった、目が覚めた!」

 鈍痛のする頭に聞き覚えのある声が響く。
 目の前で深雪が、俺の手を握って涙ぐみながら微笑んでいるのが見えた。

「ここは……どこだ?」

 薬の効果が切れる前まで、ナナとの約束で兵庫を守るために森の中でグランギニョル座の劇団員と戦ったのは覚えている。
 狼姉弟を退け、蜂男を倒したあと、鰐男と戦ってる途中にナナらしき声が聞こえた。
やや自棄気味に殺せとか叫んでいたのは、兄を殺さなかったという事だろうか。
 兵庫を守る為に動けない俺は、ノウァに行ってもらう事でナナを託した。
 劇団員の士気が崩壊して散り散りになった頃、俺もナナの声のした場所へ駆けつけたがナナもノウァもそこには居なかった。
 その後、混濁する意識の中でナナを探し回ったが、途中から俺の意識は途切れていた。

「ここは私の部屋ですよ。うさぎ先生。ノウァに、うさぎ先生の目が覚めるまで面倒みといてって頼まれて、看病させてもらいました。」
 
「む、そうか……それは面倒をかけたな、すまなかった。ところで、身体が重くて全然動かんのだが、何かしたのか?」

 俺が首を傾げる力もなく深雪に尋ねると、深雪は驚いた表情で首を横に振った。

「動けないのは当たり前ですよ!大怪我してたし、猛毒も回ってたんですから……結界を張って治療中ですけど、まだ動ける状態じゃないはずです。生きてるのが奇跡なぐらい。」
 
 深雪は俺が不死だという事は知らないらしい。
 放置しておいてもいつかは復活することができるが、昔のように完全に身体が壊されると復活まで時間が掛かるのをノウァが考慮して治療を頼んだのだろう。
 ノウァが何をしているのか、ナナはどうしているのか気にはなったが、深雪に余計なことを聞いて不安にさせるような事はしたくなかった。 

「そうか。何はともあれ助かったようだな。これも深雪のお陰だ……感謝する。」

 ただの子供だった深雪に、治療を受けて助けられる事が俺にとっては夢のような話だった。
 まだ痺れて動かしづらい手をぎこちなく動かして、俺はベッドの傍にいる深雪の頭を撫でた。
 撫でた手で気づいたことだが、今の俺はうさぎの着ぐるみを着ていない下着だけの状態だった。
 着ぐるみを脱いだ姿を見たら、深雪は赤の他人のように振舞うだろうと予測していた俺にとって、今まで同様に親しく接する深雪の反応は意外だった。

「そういえば、俺は着ぐるみを着てないわけだが、深雪は何とも思わないのか?」

 深雪は頭を撫でられながら、こくりと頷いて微笑んだ。

「勿論ですよ。だって、うさぎ先生の皮が剥けたって、うさぎ先生は私の大好きなうさぎ先生ですから。」

「そ、そうか。一応、俺の名はファーヴニールの方なんだが。」

 俺のささやかな抵抗の呟きは、どうやら深雪の耳には届いていないようだった。
スポンサーサイト

● COMMENT ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://mementomorinomaigo.blog81.fc2.com/tb.php/233-6f9eba0c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

精霊日記12日目 «  | BLOG TOP |  » 精霊日記10日目

リンク

プロフィール

佐藤深雪

Author:佐藤深雪
いつから改装中だと錯覚していた?

なん だと…

アイコンは魔術商会さん(E№41)からいただきました。とても感謝なのです。

ノウァ
ファーヴニール
深雪

とことこ

最近の記事

カテゴリ

辺境地域(キャラのホーム世界設定) (4)
辺境黒歴史(ホーム世界の歴史) (3)
偽島2期日記 (25)
Fallen Island (2)
いただき物 (2)
オリフ (32)
ネヴァ (8)
カーズ (25)
偽島1期(TiA) (20)
カーズの日記 (1)
ティアの交換日記 (1)
おりふぃ (14)
偽島3、4期日記 (46)
六命表日記 (14)
六命裏日記 (9)
精霊日記 (19)

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。