2017-10

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精霊日記17日目

ー薔薇の王女と紫の魔女の話。

「……どうしてこうなったの」

 オルタンシアは、城のテラスから庭先に集まった大勢の人達を眺めながら唖然とするしかなかった。

 オリフィアが城に遊びに来て欲しいと言うので、城の内部の構造も把握しておきたかったオルタンシアは快く承諾した。
 城に招待される以上、相応に着飾って城へはやってきたものの、国民総出で歓迎を受ける事になるとは微塵も予測していなかった。
 
「どうかなさいました?何か気分が優れませんか?」

 清楚な白いドレスを纏った王女オリフィアは、庭に集まる人々を見て物怖じしているオルタンシアに不安そうな表情をした。

「いえ。このように盛大に招かれるとは思ってなかったので……驚きました。」

 オルタンシアが強張った表情で微笑むと、オリフィアは胸を撫で下ろしたように爽やかな笑顔に戻った。

「あはー、オルタンシアさんが遊びに来てくださったので、みなさんに声を掛けさせていただきました。」

 王女が一声掛けるだけで、国民総出で歓迎ムードになるヴィオレッド王国の平和さに脱力したオルタンシアであったが、国民全員に顔を知られる事で迂闊に動けなくなってしまった事を少しばかり後悔した。

「大げさな気はしますね。まぁ、私の歓迎というよりお祭りを楽しんでるようですが。」

 オルタンシアが庭先を眺めると、端の方では出店のようなものが並んでいて人々が賑わっていた。
 また、庭の中央では豚の丸焼きが振舞われているようで、香ばしい匂いが城内にも流れてきた。

「えっ、そんなことはないですよ?みなさん、オルタンシアさんにお会いできると楽しみにしていましたから。あ、今からご紹介しますね!」

 オリフィアはオルタンシアの手を引くと、城のテラスから人々の集まる庭の広場まで降りていった。

「みなさん、私に注目してください!オルタンシアさんがいらっしゃいましたよ!」

 オリフィアはオルタンシアと繋いでない方の手を大きく振ると、庭先にいる人々の視線が一気に彼女のもとへ集まった。

「おお、可愛らしいお嬢さんだ!オリフィア様と瓜二つで姉妹のようですね!」
「やったー、オリフィア様が増えたぞー!」
「まるで鏡の中から出てきたようですね、ファンタスティック!」
「あ、豚の丸焼き食べますか?」

 次々に話しかける人々に、オルタンシアは緊張して満足に返事をできなかったが、隣にいるオリフィアは生き生きとした表情で、握手をしたり返事をしたりして周囲の人々を楽しませていた。
 
 一通りの挨拶を終えて、テラスに戻ってきたオリフィアとオルタンシアは、歓迎の花火を眺めながらゆっくりと寛ぐことにした。

「王家の貴族と国民がこれ程仲が良い国は、私が旅して来た中でもここが初めてです。この国は、平和すぎますね。」
 
 オルタンシアがやや皮肉を込めた言葉に、オリフィアは素直に喜んで頷いた。
 
「驚きましたか?みんな家族みたいに接してくれるんですよ。今日の花火もお食事も、みなさんがオリフィアさんのために有志で準備してくれたんです。」

「私ごときのために、勿体無いことです。それでも、今日は楽しく過ごせました。ありがとうございます。」

 オルタンシアが礼をすると、二人を見守っていたオリフィアの兄、ユリシスが近づいて来た。

「礼には及ばない。こんな事ぐらいでいちいちお礼をされていたら、返ってこちらが気を使ってしまうよ。これからは一緒の家族なのだから。」
「え、何を言ってるんですか。ちょっと意味が分からないんですけど。」

 ユリシスの言葉に唖然として口を開くオルタンシアに、オリフィアは目を輝かせて抱きついた。

「素敵ですね!オルタンシアさんも一緒にここに住みませんか!私も妹ができたみたいで嬉しいです!」

「ふふ、お父様とお母様からは許可は貰ってるんだ。もう部屋も用意してあるよ。オルタンシアが嫌じゃなければ、オリフィアと一緒に居てもらって欲しい。どうかな?」

 ユリシスの言葉にオルタンシアは一瞬頷きかけたが、我に返ると首を横に振った。

「王族の方と一緒に暮らすなんて、恐れ多すぎます。第一、私はどこの誰なのかも分からない旅人です。そんなに信用される謂れがありません。」

 オルタンシアの言葉に、オリフィアとユリシスは顔を合わせて首を傾げたが、直ぐに笑顔になってオルタンシアの方を向いた。

「誰って、君はオルタンシアじゃないか。オリフィアにそっくりないい子だ。それで十分だよ。」
「そうですよ。オルタンシアさんに出会えて、私もとても嬉しいんです。これからもずっと一緒に居てくださったら、もっと嬉しいです。」 

 二人のあまりの歓迎っぷりに、オルタンシアは自分に魅惑の魔法でもシュヴァルツが掛けておいたのかと不安になったが、二人が魔法に支配されているようではないので一先ず胸を撫で下ろした。
 
「いえ、身に余る光栄で恐縮です。これから、よろしくお願いします。」

 魔王降臨の儀式の時まで、オリフィアの近くに居られる機会をわざわざ逃す事はない。
 一ヶ月の間友達のフリをしているだけで自分の任務は達成できる。
 そう考えるとオルタンシアは気が楽になったが、それと同時にこの二人にはあまり深入りはしてはいけないと自分の心を戒めるのだった。
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