2017-05

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精霊日記21日目

 目の前で倒れる親友を、私は守ることができなかった。
 私が学んできた魔術は、強大な魔力の前には何もかも無力だった。
 あまりにも惨憺な光景に、私は目の前に映るものすべてを否定したくなった。
 これはきっと悪い夢だ。
 私は夢ではない何処かを求めて、親友を置き去りにしたまま暗闇の中をさ迷い歩いた。
 失意に打ちひしがれる私が辿り着いたのは、とある商店のアンティーク調の鏡の前だった。

「その鏡に興味がおありですか?」

 紫の髪の女性が目を細めて私に微笑んだ。

「その鏡は異送鏡と言って、その鏡に映った者の、思い描く場所へ行くことが出来るのだそうですよ。」
 
 私は紫の髪の女性に、縋るような気持ちで尋ねた。

「この鏡を使えば、過去に戻ることもできるんですか?」
「ええ、勿論……転移に必要な魔力さえ満たすことができれば。」

 ―夢はそこで覚めた。

「うぁあああ……すげー寝起きの悪い夢を見たぁ。」

 今日はフィーさんにチョコ作りの基礎を教わってから、サクラと一緒にバレンタイン用のチョコを作る予定だったのに、朝から気分が鬱蒼としてしまって私は布団の中で悶え転がった。

「夢占いの本とか後で調べておこう。私、なにか心配事でもあるのかなー……そりゃ、卒業試験の事とかあまり進んでなくて不安だけどさー」

 黒いウサギの縫ぐるみのFPを抱えながら、私がゴロゴロして壁掛け時計を見ると、朝の支度を整える時間が限りなく間に合わないことに気づいた。

「わぁあああん!何で、朝からこんな慌ただしいぉおお!?FPも時間がやばいんなら、黙ってないで起してよぉ!もぅぅううう!」

 私はFPを床に叩きつけようと振りかぶってはみたが、ユカラにうさぎの扱いが雑だという理由で、うさぎ耳を持った少女のマグノリアさんに会わせてくれない事を思い出した。      
 私はFPをそっとキャビネットに戻すと、飛び起きて朝の支度を速やかに整えた。

 準備が整った私は、セツカ兄ぃから借りたペンダントをフィーさんの姿に戻した。
 セツカ兄ぃに渡しておいてくれと頼まれた指輪と、着替えの服とエプロンをフィーさんに渡すと、私は彼女をキッチンへ案内した。
 フィーさんのチョコ作りのお手伝いをしつつ、私もチョコ作りの基礎を学んだ。
 去年は確かノウァが作ったチョコの余りをサクラとユカラに配った気がするが、今年は自分でしっかりチョコを作りたいと何となく思った。

「セツカは1個づつ大事に食べると思うから、日持ちの良いチョコソフトクッキーにしてみようかなって。」

 フィーさんのリア充話を聞ききながら頷きつつ、私は自分の腕相応のチョコの型抜きの方法を教わった。
 テンパリングという作業には温度管理が大事らしい。
 簡単そうに見えて、手作りチョコを作るのはなかなか手間がかかるなと思った。

「初めてにしては、なかなか上手だったわ。後はトッピングしたり冷やして固めるだけだから、簡単なはずよ。」
「ありがとー!フィーさんが教えてくれるのが上手いから、失敗しないで済んじゃいました。」

 フィーさんの作ったチョコソフトクッキーを味見させて貰いながら、軽くお茶を飲んでくつろいだ私達は、部屋を出てからそれぞれの約束の場所へ向かうために別れた。
 フィーさんは、セツカ兄ぃと待ち合わせの場所へ。
 私は、サクラと一緒にチョコ作りをするために、彼女のいる宿へと向かった。

「ウルド、今日は付き合ってくれてありがとう。」

 サクラが嬉しそうに微笑んでるのを見て、私は今朝の憂鬱な気分がすっかり晴れた。

「ううん!サクラとチョコ作りなんて初めてだから楽しみにしてたんだよ。すっげえ美味しいの作ってレイヤ先生を驚かせようね!」

 せっかくのサクラとのチョコ作りで足を引っ張る訳にはいかないと思って、事前にフィーさんにチョコの作り方を教えて貰ったのはサクラには内緒である。
 私は、うさぎの型抜きで色々な味のうさぎのチョコレートを作り、サクラは抹茶風味の生チョコに挑戦した。
 私の方は、フィーさんに教わった通りに型抜きに入れて冷やすだけの楽しいうさぎチョコ量産体制だったが、サクラの方はまるで錬金術授業のように真剣な眼差しで、チョコ作りに専念していた。

「ふぅー、出来たぁ。ちゃんと固まってるみたい。ウルドの方はどう?」
「うん、こっちも出来たよ。ウサギの型の耳んとこが細くてチョコが折れないか心配だったけど、厚みがあるから大丈夫そうだね。」

 私は、冷えて固まったうさぎの形のチョコをサクラに見せた。
 見た目的にもかわいい感じに作れたお陰で、サクラにも好評な印象だった。

「ねえ、ウルドは誰にあげるの?」
「ノウァ達だよ。あ、男性にってことなら、小熊さんとかユカラとか……」
「やっぱりウルドは本命チョコはないんだね。」

 サクラはレイヤ先生の本命チョコを作ってるせいか、私の本命も気になるようだった。

「だから恋愛経験ないって前も言ったじゃん。本命あるなら全部一緒で量ができるものになんてしないよ。」
「そうだね……よぉし、あたし頑張る!頑張ってレイヤ先生に渡す!えとね、ラッピングの勉強もしてみたんだよ。」
「おっ、やる気満々だね。確かにラッピングがしょっぼいと台無しだもんね。」
「うん、かわいい系はレイヤ先生には似合わないからシンプルで綺麗めのをと思って包装道具用意したんだ。」

 サクラはそう言いながら、淡いイエローの不織布と淡いグリーンの不織布を広げてみせた。
 それから箱にいれたチョコを袋状に包み、ビニタイでくちをとめて見せた。

「どう?」
「綺麗だし開けやすくていいね。」

 包装にこだわるサクラを見習って、私もチョコを入れる箱は少し拘ってみようと思った。
 私は配る相手に合わせてリボンの色や箱の色を変えてみる事にした。
 ユカラに渡す箱の色はユカラの髪に合わせてシンプルに白にしてみた。
 あまりにも簡素で物足りなかったので、ちょっと派手なピンクのリボンも付けてみた。 
 なんだか箱も大きいのを選んでしまったので、多めにうさぎのチョコも入れてみた。
 チョコ作りを終えてサクラと別れた後、私はみんなにチョコを配って回った。
 残るはユカラの分だ。
 私はユカラを呼び出して、チョコの入った箱を手渡した。

「深雪さ。くれるのは嬉しいけど、ちょっとこれ大きんじゃない。何ヶ月分?」
「いいんだよ!マグノリアちゃんも居るから、二人で分けて食べられるようにしたんだからっ!?」

 ユカラが両手で私にチョコを入れた箱を掲げてみせるので、確かにちょっと大きかったかもしれないと心の中では反省しつつ、私は咄嗟に思いついた事で誤魔化した。

「ああ、なるほどね。マグノリアに直接別にもういっこ渡せばいいのに。兎好きなんだからマグノリアと話したいんだろ?」
「チョコは多めに作ったから、細かいことは気にしなくていいんだよ!?私だって直接手渡していいんだったら、マグノリアちゃんに渡すもん!ユカラがいじわるするから、こうなるんだよユカラのアホー!」

 人事のように言うので、私は思わずユカラに怒鳴ってその場を走り去った。
 あれ……何でこんな事になってんの。
 普通にチョコをユカラに渡せなかった悔しさで、何だか知らないけど涙が出た。
  
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